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2010.07.27 (Tue)

モロッコのフランス語、日本の英語

 まいったね。
 公用語?には、まいったね。


 番長先日、モロッコへと旅行に行ってきた。
 アンタ、知ってるかい、モロッコって国のことを。そうよ、カルーセル麻紀が性転換手術を受けたあの国よ。あとはあれだな、聖子ちゃんが歌ってたろ、「マラケッシュ~迷路のま~ち つかまえたらい~なり~よ~」なんてな。稲荷じゃねえぜ、言いなりだ。あのマラケッシュてのはモロッコにある町の名前だ。
 そんなこともあって番長の中では、神秘の国という印象だったんだが。実は地中海を挟んでフランスやスペインに面する、ヨーロッパからごく近い国だった。
 アフリカ大陸にあるんだが、交通網やホテルなんかはちゃんと発達していて、旅行しやすい。それでいて物価はヨーロッパに比べれば安い。しかも、迷路のように入り組んだ旧市街や砂漠に代表される自然景観など、見どころが多いときて、ヨーロッパ人にはとても人気のある観光地だ。日本から見たときのタイみたいな位置だな。


 そんなモロッコの公用語は、アラビア語だ。アラビア語しかないことになっている。
 ところが、フランス語がおっそろしく通じる。まったくわからないって人は珍しいくらいだ。バイクタクシーの運転手のじいさんやスーパーのレジうちのねえちゃんでもちゃんと通じる。
 これは、かつてのフランスの植民地だった影響だろう。正確には保護領だったそうだが。
 モロッコは「国際フランス語圏協会」に正式加盟している。同じく植民地だった隣国のアルジェリアは入ってねえのにな。

 モロッコのテレビには国営放送が2チャンネルあるんだが、うち1局は通常、フランス語で放送されている。アラビア語の字幕はなし。ニュースもバラエティもフランス語。映画はごていねいにフランス語の吹き替え版。
 現地に住んでいる方のブログによれば、放送時間の半分以上がフランス語のみで放送されているんだそうだぜ。

 もちろん、新聞や雑誌もフランス語のものがたくさん売られていた。
 看板や標識、駅のアナウンスからスーパーの商品表示にいたるまで、すべてアラビア語に加えてフランス語が併記されている。英語はない。
 それほどフランス語が身近な国だった。


 さて、メクネスという中規模都市から列車に乗ったときのこと。
 1等車だった。物価が安かったんで、ここは一つ張り込んでおくかと思ったのよ。2等車より倍くらい値は張ったぜ。そりゃ、客もそれなりの地位にいる人なんだろうよ。
 番長は3人のモロッコ人と同じコンパートメントに乗り合わせたぜ。両端に年かさの男性が2人、おそらく50代から60代初頭くらいだ。で、2人の真ん中に女性が1人。アラフォーってとこだろうか、見るからに気ぐらいの高そうなオバハンだ。
 この3人は連れってわけじゃない。いずれもたまたま乗り合わせた、見ず知らずの他人だった。

 なんとも驚いたことに、この女性が他のモロッコ人乗客と話すとき、フランス語を使うんだな。必ず。
 モロッコ人ではないのかと思って、気付かれないように観察してみたんだが。
 どうもそうとは思えないのよ。

 3人とも荷物が非常に少ない。女性はハンドバッグひとつ、男性はビニール袋を提げているだけ。旅行者には見えねえ。
 少なくとも男性2人は地元の人だった。この2人だけで話すときは、アラビア語と思しき言葉で会話を交わしていたからな。1人は軍人のようで、帽子をかぶってるんだが、これにモロッコ国旗にもある星印が付いていた。もう1人は、これはもうモスクの前でしゃがんでるのをよく見るような、そういう格好をしてたな。
 女性も、これはあてにはならねえが、顔は見るからにモロッコ人。いわゆるエキゾチックな顔立ちをしていた。目といい鼻といい、太った体つきといい、典型的なアラブ・スタイル。服は黒っぽいのを着てたが。何と言うのかねえ、中国は大変な経済成長を遂げたが、しかし、未だに日本人と比べると服装に抜きがたい違いが感じられることがあるよな。あの感じが漂っていたぜ。ま、これは極めて主観的な話だが。実際、ヨーロッパで見る中国人と日本人の服装の差ってのはどんどんなくなってきたように思うからな。


 それよりも、気になったのは彼女の使うフランス語よ。独特のイントネーションもあったんだが、それよりも。
 あいづちをうつときに必ず「ウィ、ビヤンシュー」って言うのよ。これは「もちろん」という意味なんだが、何度も何度も、数十回は繰り返してたな。
 これは英語で例えれば、ずっと「イエス、シュアー」と言い続けているようなもんだ。ネイティブだったら「アブソリュートリー」とか「イグザクトリー」とかなんとか言い換えるよな。
 フランス語でも同じことで、エヴィダモンとかアブソリュモンとかトゥータフェとかヴザヴェレゾンとか、なんなりと言い方はある。

 総合的に言って、3人ともモロッコ人だったと思うぜ。
 なぜアラビア語を話さないのか。いくらフランス語が身近だからって、これはたとえば、日本人同士が英語で会話するようなもんだぜ。


 ところが、こういう「モロッコ人がモロッコ人に対してフランス語で話す」って場面に、このほかでも何回も出くわしたのよ。
 スーパーで子どもにフランス語で説教をしていた父親。
 空港で職員にクレームをつけていた女性。
 うーん。

 似た現象が起きている国に、インドがあるよな。知識階級は英語を話す。独特の、かなり強いイントネーションがあるが。
 でも、インドは国内に100以上の言語を持つと言われている多言語国家だ。公用語のヒンディー語ですら、人口11億人のうち4割くらいしか使えないらしい。だから、英語の出番が増えるのもまあわかるよ。

 しかしモロッコに存在するのは、アラビア語のほかにはベルベル語だけ。山岳地帯の言語だが、これをさらに細かく分類しても3言語にしかならない。
 ちなみにモロッコの全人口は3200万人で、ほとんどがアラビア語を理解する。インドとは事情が違うわけよ。

 例のアラフォー女性の姿は、自らの知的レベル、およびそういう教育を受けられた背景としての富、洗練されたわたし、を示すためにフランス語をしゃべってるように感じられたぜ。つまりはステイタス。ヴィトンのバッグと変わらねえ。
 もっとも番長には、モロッコ人との会話にフランス語を使うってこと自体が、すこぶる知的レベルの低い話に思えてならねえけどな。日本でヴィトンのバッグを持ってる人を見ても、センスがいいとは思わないのと同じようにな。


 モロッコは1912年にフランス統治下に入り、第二次世界大戦後の56年、独立した。その間わずかに50年。
 なあ、たとえば韓国人が日本からの独立後、日本語を進んで話すことがあっただろうか。ないよな。金輪際ないよな。
 なんなんだろうこの違いは。
 なんてことを考えているうちに、メクネスを出た列車はモロッコ最大の都市、カサブランカに着いた。ハンフリー・ボガードが主演した同名の映画でも有名だよな。アンタも名前くらいは聞いたことあんだろ。

 この町はビジネス都市で、観光客にとっての見所はあんまりねえ。そんな中、ほぼ唯一の呼び物となっているのが、ハッサン2世モスクってヤツだ。
 とにかく巨大で、ミナレット(尖塔)の高さ200メートルは文句なく世界一、全体の大きさも世界で3番目だとか(1番はメッカ)。のべ1万人にのぼるモロッコ人職人が7年の歳月をかけて完成させたというモスクは、確かに壮麗だった。モロッコじゅうから寄付やら税金やらを集め、かかった予算は5億ドル(だいたい500億円)を下らねえという説明だった。社会保障とかインフラ整備とかに使えよ、と思ったがな。
 このモロッコの誇り、前国王の名を冠した巨大モスク、なんと設計したのはフランス人。ミシェル・パンソーという人だそうだ。
 こりゃ明治神宮をアメリカ人に設計させるような話じゃねえかよ、なあ。


 番長があえて言う話じゃねえが、外国語を学ぶというのはとても重要なことだ。言葉を学ぶというのは、言語体系を通じてその価値観を学ぶということでもある。フランス語を勉強すれば、フランス的な発想ってもんが身についてくる。視野が広がるぜ。
 他方、言語を学ぶというのは、その言語に対して屈服することだ。無条件降伏をすることに他ならねえ。

 以下、話をわかりやすくするために、フランス語を例に取るが、どの言語でも同じことだぜ。
 フランス語に関して、フランス人は絶対的な存在だ。
 こっちの喋ったことを聞いたフランス人が、わからない、違うと言えばそれまで。なぜと疑問をぶつけたところで「フランス語ではそうなってるから」と言われればそれまで。
 言語というのは、どれだけ体系的に学問化されていたところで、そういう性格のものだ。山のことはなんでモンターニュって言うんですか、なんて聞いても詮無いことだろ。

 じゃ、言語を習得して楽しいのはどういうときか。
 フランス人の話していることが聞き取れるようになったとき。こちらの言ったことがフランス人にちゃんと通じたとき。
 言ってみれば、フランス人に近づいたとき、フランス人に認められたとき、なのよ。

 すなわち、フランス語という枠内においては、フランス語ネイティブとフランス語学習者の間では、常に上下関係がはっきりしているわけだ。

 それぞれの植民地では、もともとフランス語を使っていたわけじゃねえ。支配されて宗主国の言語を使うようになった。
 モロッコでは公用語でこそないが、上記の通りの有様。西アフリカでは多くの国でいまだに公用語だ。現地の人々はこの言葉を習得しようとし、その度ごとに無条件降伏を強いられる。フランス人が先生に、師匠になる。そういうことを繰り返しているわけだ。


 番長が思うに。
 語学や学問に限らずあらゆることについて言えるが、人に屈服できないヤツってのはダメだ。ひざまづいて教えを請う謙虚さがないヤツってのはさ。
 だが、言語を学ぶというのは、人のランク付けに直結するって一面もある。
 モロッコで目にしたいびつな情景は、まさにそういうことの一端だったんじゃねえかなと、思ったわけだな。

 日本だって例外じゃねえ。
 楽天だユニクロだって会社では、英語を社内公用語にするらしい。そこまでいかなくても、出世するにはTOEICで何点が必要、なんて会社は枚挙にいとまがねえよな。
 そういえば英語を日本の第二公用語にしようなんて議論が、大まじめにされたこともあった。モロッコで見たフランス語オバチャンは、日本にもたくさんいるようだな。


 いや、まいったね。
 残念だったねえ、第二次大戦後にアメリカの日本支配がごく短期間で終わっちまったのは。おかげさんで、今でも日本はTOEIC世界ランクで最下位を競おうかって有様だぜ。




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2010.07.22 (Thu)

フランス語と英語、実はクリソツ?

 まいったね。
 ドーバー海峡には、まいったね。


 これまでにも何度か触れたが、番長、実際にフランスへ行くまでフランス語を勉強したことがまったくなかった。囓ったことすらなかった。自分の人生にフランスなんて国が絡んでくるとは想像もしてなかったぜ。
 しょうがねえんで語学学校でヒーコラ言って勉強した。おかげさんで中途半端にフランス語は身についたぜ。子どもだまし程度のもんだがな。で、思ったことを今日は書いてみようと思ってんのよ。

 まずは、フランス語と英語の関係についてだ。
 英語ってのは、日本人なら誰しもがある程度は知ってる。義務教育から教えられるからな。ま、いちばん身近な外国語と言っていいだろう。
 そんな英語とフランス語。勉強をし始めたころは全然違うと感じたもんだが、実はそんなに変わらないんじゃねえかという気がしてならねえのよ。

 たとえば、「フランス語と英語は違う」という例文を両国語で書いてみようか。


 仏) Le francais et l'anglais sont differents.

 英) French and English are different.



 見てもらえばわかるとおり、そんなに違わねえだろ。「different」とかさ。
 これは、ボキャブラリーが共通しているからだ。どちらもラテン語から派生した言語だから、語幹が同じなんだな。
 発音でも、カタカナにするとそんなに変わらねえ。


 仏)「ル・フランセ・エ・ラングレ・ソン・ディフェラン」

 英)「フレンチ・アンド・イングリッシュ・アー・ディファレント」



 英語はカクカクしゃべるのに対して、フランス語っては鼻濁音が多くてふにゃふにゃしてるからかな、実態以上に違って聞こえるんだよな。
 語学学校でクラスが同じになったイギリス人、の中でも博学なおじさんに聞いたんだが、彼の実感としては語彙の50%くらいは共通しているとのことだった。フランス語の知識がなくても、文章だったらわりと読めちゃう、と。


 文法もそんなに違わねえ。

 フランス語には、ざっと挙げるだけでも、複合過去・半過去・単純過去・前過去・大過去・前未来・単純未来、などの時制がある。
 パッと見、勘弁してくれ、って感じだろ?
 ところがどっこい、こんなことを言うと怒られるかもしれねえが、ややコケオドシ的な面が否めないんだな。というのも、日常使われるのは複合過去と半過去だけ。それぞれ英語の過去形と現在・過去完了形に相当する、と考えてもらえばいいだろう。

 違っているとこと言えば、形容詞の語順がある。「EU」は英語の「ユーロピアン・ユニオン」に対してフランス語では「ユニオン・ユーロピアンヌ」とひっくり返る。エイズの「AIDS」は「SIDA」(シーダ)になる。
 けどまあ、こりゃ「東京都立大学」が「首都大学東京」になるようなもんでね。実際に使ってみると、そう大した差じゃないのよ。


 フランス語は動詞の活用形が多い。現在形だけでも主語によって6種類に変化するんだが、上に挙げた時制によって活用が全部変わる。さらに、英語でいうところの仮定法に当たる条件法や接続法といった用法があって、こいつにもそれぞれに過去形があり、と全部違うんでエライことになるんだな。
 総じてフランス語は、英語より覚えなきゃいけないことの量は多いかもしれねえ。

 あと、困るのは名詞にすべて性別があることだ。これも理屈じゃねえので覚えるしかない。同じラテン語系列でも、フランス語とドイツ語では同じ名詞の性別が違ったりするからまいっちまうぜ。たとえば「月」は仏語だと女性だが、独語では男性らしい。

 そういうところには確かに違いがある。だが、根本的な違いじゃねえんだよ。語尾が「だがや」だろうが「だべさ」だろうが「ぞなもし」だろうが、主たる言葉が一緒なら意味は通じるだろ。
 男性名詞か女性名詞かなんて、どうせ冠詞が「ル」か「ラ」かくらいでしか区別しねえから、わからなかったらムニャムニャ言っときゃいいのよ。


 まあ考えてもみてくれ。
 イギリスとフランスを隔てるドーバー海峡(フランスではカレー海峡と言う)は、最も近い部分で34キロ。
 日本の津軽海峡が19キロ、尾道-今治のしまなみ街道が59キロ。陸上では東京-横浜間が29キロ。
 いくら海を隔ててるとはいえ、お隣さんだよ。行き来も昔から頻繁で、そんな極端に言葉が違うわけがないって道理だ。

 言語の違いを数値にして表す試みなんてのはないのかねえ。ないだろうから番長の実感で言わせてもらうが、フランス語と英語の違いなんて、日本の標準語と沖縄方言の違いくらいしかないんじゃねえか。乱暴な言い方だけどよ。
 ネイティブの沖縄方言って、まったく聞き取れねえよな。でも語源は同じだから、英語なんかに比べりゃずっと理解がしやすい。勉強すれば成果が出やすいってイメージでな。
 あるいは、北京語と上海語、広東語の違いというのかねえ。もっとも番長、中国語はできないから適当な喩えだけどな。


 でもってさらに。
 フランス語は英語以上に、スペイン語やイタリア語、ルーマニア語に似ているらしいんだな。それぞれの国の人間に言わせると。英語以上に単語が共通しているから、当てずっぽうで言っても通じちゃうことがあるんだってさ。
 言語学的にも、これらの言語はラテン語を語源とする言語の中で、ロマンス諸語という同じ語族に属しているんだってさ。
 ちなみに、英語はドイツ語やオランダ語などとともにゲルマン諸語、だそうだ。

 上の喩えで言えば、フランス語とスペイン語の違いは、博多弁と鹿児島弁くらいの違いと言えるかな。
 ま、ネイティブの鹿児島弁ってのは、これまた本当に聞き取れねえけどなあ。


 5カ国語を喋れるなんて聞くと、凄いなあと思うじゃねえか。これがヨーロッパには、ゴロゴロいるとは言わねえが、すごく珍しいってわけでもないんだよな。
 やる気さえあれば、日常会話などに限定した範囲なら、たとえば英・仏・西・伊・独・蘭語を操るとか、そう不可能なことでもなさそうだぜ。
 もし、英語と中国語とロシア語とアラビア語とタガログ語の5カ国語を話せる人がいたら、その人は本当に天才か、とんでもない努力家だろうけどな。


 ところで、フランスの語学学校には英語を母国語とする人もたくさんいてね。イギリス人やアイルランド人、アメリカ人や英語圏のカナダ人なんだが、彼らは中学、高校くらいで外国語(カナダ人の場合は第二の母国語)としてフランス語を勉強していて、だいたい4~5年は毎週何時間か授業を受けていた。
 しかも、上記のように、おそらく日本人が英語を学ぶよりは習得はかんたん。
 にもかかわらず、やっぱり喋れない。読む方、書く方は得手だったりするんだが。いったんコツをつかむと、伸びるのは早い印象ではあるがな。

 よく言うだろ、日本の英語教育はおかしい、中学高校と6年やっても全然喋れないとか。日本だけがおかしいってんじゃなく、どうも全世界共通の現象らしいぜ。


 いや、まいったね。
 英語が母国語だったら人生ラクだっただろうなと思うことがあるが、せめてラテン語圏だったら、もうちっとマシだったかもな!
 もっとも、これからは中国語ってのも英語ばりに国際語になっていくかもしれねえ。そうだとすれば、その点は日本語も悪くないかもな。大人になってから漢字を覚えることを考えるとゾッとするぜ。




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2010.06.28 (Mon)

覚えてはいけないフランス語!

 まいったね。
 口の悪い連中には、まいったね。

 よう、盛り上がってるねえ、サッカーのワールドカップ。日本では。
 フランス代表は別の意味で盛り上がってる、ってのは御存知の通り。日本も含めて世界中で広く報道されてるな。何ともお恥ずかしい話よ。
 そもそも今回のW杯、出場権をつかんだのは欧州予選対アイルランド戦でアンリが手を使ってボールをゴールに押し込んだから。ハンドだ反則だと物議を醸し、当のアンリがボクやっちゃったよと認めちまった。その後もフランス代表の顔役と言えるリベリらに未成年の買春問題が持ち上がったりと、ゴタゴタ続きだったんだな。
 でもって現地ではフランスサッカー協会、監督、選手らの間で内紛が表面化。前代未聞の練習ボイコットの末に1勝もできず予選敗退と、まあ惨めな結果に終わったのはご承知のとおりよ。

 とまあ、そのへんのことはスポーツに詳しいサイトで山ほど書いてるだろうから、番長は別の視点から。
 内紛の引き金を引いたのは、フォワードのアネルカ選手がドメネク監督に暴言を吐いたとして、代表から追放されたことだった。
 フランスサッカー協会は「アネルカの発言は一切容認できず、今回の決定は妥当」と説明した。
 しかし、追放って超重い処分だよな。単に試合に出れないってだけじゃない、オマエはもう代表選手じゃないんだと烙印を押すってことだからな。アネルカのプライドもそりゃあ傷付いただろうよ。プロスポーツ選手ってのはメンツを大事にするもんなあ。
 いったいぜんたい、野郎は監督に何と言ったのか。バカ、アホと言っただけじゃねえだろってのは想像付くが、どんなことを言うと追放なんぞという重い処分を食らっちまうのか。スポーツ紙「レキップ」が報道しているところによると、



Va te faire enculer, sale fils de pute!




 と言ったらしい。
 これを聞いた番長、アッチャー、と思ったね。こりゃイカンわと。

 これ、直訳すると「ケツの穴を掘られろ、売春婦から生まれた汚らわしい野郎が」ってな意味になる。なるんだが、なんて言うのかねえ、そうやって日本語の字面で見る以上のインパクトがある言葉なんだよな。
 言葉のやりとりの中でこの言葉が出ちまったら、もう後は手が出るしかないのよ。殴り合いのケンカが始まるときに号砲の代わりになる言葉というかな。あまたあるフランス語表現の中でも最も粗野な部類、ツバを顔に吐きかけたり中指をおっ立てたりって行為に限りなく近い言葉なんだな。これを口に出しちまったら、言った方も拳が飛んでくることは覚悟しなきゃならねえという。
 これが事実なら、まあ監督が怒るのも無理はねえかな、少なくとも同じチームのベンチに並んで座ってはいられないわなあ、と同情できる程度の言葉ではある。


 このアネルカの発言を巡り、与党の保守政党UMPの議員有志は、またぞろ「移民社会出身の選手が悪い」として、再教育を求める要望書を政府に出した。ラッパーたちをつるし上げたときと同じやり口だな。どうもこの人達は、なんでもバンリューのせいにすればいいと決め込んでるらしい。国歌斉唱や祖国への忠誠など代表選手の義務を定めた憲章をつくり、選手全員に守らせるよう求めた。
 日刊紙リベラシオンによると、このUMP議員の中には、アネルカたち移民社会出身者を「社会のクズ」とさげすむ野郎もいたんだとか。どっちがクズなんだか。


 ちなみに、フランス語の有名な罵り言葉といえば、そのUMPの党首たるサルコジ閣下のご発言。2008年2月23日、パリであった国際農業見本市へとお出ましになった大統領が、すれ違った男性に握手を求めようとして断られたときに言った、



Casse-toi, pauvre con!




 ってのがある。
 これは直訳すると、っていうか直訳はできねえが、まあ「ここから消え失せろ、このクソ野郎」となるかな。使われてる単語の一つ一つに品の無さがにじみ出ている、簡潔にしてこれ以上ない罵り言葉だね。
 この国家元首にして、このサッカー代表選手あり、ってことなんだろう。



 いや、まいったね。
 子猫ちゃんたちはこんな言葉、絶対に使っちゃダメだぞ!




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