2009.12.31 (Thu)
フランスの大晦日名物と言えば、紅白歌合戦ならぬ……
まいったね。
フランスの大晦日には、まいったね。
フランス特有の大晦日名物って、なんだか知ってるかい。
花火でも打ち上がるのかって? 違うね。
教会のミサ? それもあるが、まぁクリスマスイブほどの盛り上がりはないわな。
アンタ、フランスをみくびってもらっちゃ困るのよ。
んなキレイゴトじゃあねえんだぜ。
フランス在住のみなさんに加えて、冬休みで旅行中よーオホホホなんて人も、よくよく大晦日には注意しなくちゃいけねえ。
在住組のみなさんにとっちゃ釈迦に説法だろうが、殊にフランスにロマンチックな幻想を抱いてる子猫ちゃんたちには、用心に用心を重ねてもらいてえ。
フランスの大晦日といえば、これ。

(フランス24より)
放火よ。
見ろよこの写真、イラクかアフガニスタンあたりで、自爆テロでも起きたのかって感じだろ?
フランスなのよ。
狙われるのは駐車されている自動車やバイク。
たいていガソリンを積んでるから、引火して大炎上なんてことも多いんだぜ。
日本では、というかフランス国外ではほとんど知られてねえようだが、いつのころからか、大晦日の夜には車が燃やされる、と相場が決まってる。
昨年、2008年の大晦日から09年元旦にかけては、1147台が放火された。結構な数だ。
愛車を燃やされちまった人にとってみりゃ、なんとも散々な年明けだよな。
放火の件数は、年を追うごとに増えているらしい。

(Rue89より)
3年前に比べると3倍に増えたそうだ。
なんだってフランス人はこんな馬鹿なマネをしでかすのか?
フランス人であるところのオレのダチ公、モナミに聞いてみたのよ。そしたら、
「メ・ノン、バンチョー! やってるのはフランス人じゃない、移民たちさ!」
どういうことかと言うと、大晦日の放火が起きているのはパリ郊外など治安の悪い地域に限られ、やっているのはそこに住む低所得者層の移民、しかも若い連中だ、って言うんだな。
職もなく、教育もろくに受けず、カネはない。未来の展望もない。そんな愚連隊たちが新年という機会に乗じて日ごろのうっぷんを晴らしてるんだ、と。
実はこの移民問題、フランスではしょっちゅう俎上に上げられながらデリケートな問題なんだが、確かにアラブ系やアフリカ系の移民が多く住む地域ってのは大都市の郊外にあって、貧しいが故に治安は悪い。
それに、報道によると、確かにパリ郊外は大晦日放火の件数が多いらしい。ちなみに、続くのはドイツ国境に近いフランス東部、ストラスブールを中心とするアルザス地方なんだそうだ。
だが、件数の偏りはあるにせよ、大晦日の放火自体はフランス全土でまんべんなく起きているようだぜ。

(Rue89より)
上の地図は大晦日の夜に放火があった場所を炎のマークで示したもの。
ご覧の通り、人口の多い都市では地域に関係なく発生していることがわかる。
これだけのデータじゃ、果たして本当に犯人が移民の若者だけなのかは、何とも言えないと思うぜ。
しかし、フランスじゃそういうことだとして、半ば常識化してんのよ。
いずれにしても、だ。
日本で不良行為、ヤンキーが問題になることがあるわな。
暴走族、ドリフト族、初日の出走行、成人式での乱痴気騒ぎ……。
番長は学ランこそ背負っているが、ヤンキーではない。連中の肩を持つ気は一切ねえよ。うるせえのはハタ迷惑だし、弱いものイジメは最低だ。
だがよ、思わねえか。フランスに比べるとずいぶん、節度を守った不良行為だな、ってよ。
枠の中で安全に暴れてるっつーか、所詮はガキのママゴトなんだよな。
おっと、念のために言っておくが、大晦日放火を褒めてるんじゃ決してないぜ、もちろん。
いずれにしても、大晦日といえば放火だ。覚えておいてくれ。
フランスで大晦日の夜と言えば、仲のいい友達の家なんかに集まってするというのが定番。街角でどうこう、って光景はそんなに目にしないぜ。
どっかでカウントダウンやってるかしら、なんて気安く出歩くのは考えもんかもしれん。気を付けてくれよな。
そうそう、知識は荷物にならねえって言うからな、もう一点だけ。
大晦日の夜以外にもう一日、自動車放火がバンバン起こる日があんのよ。いつだかわかるかい?
7月14日。そう、フランス革命記念日なんだよな。どうやら、お祭りムードに乗じてやってるらしい。
どうにもしょうがねえな。
いや、まいったね。
今年最後の更新だってのに、テーマが放火になっちまったのにはまいったね。
だがな、これがフランス本来の姿なのよ。
どなたさまも隅から隅まで、良いお年を。
アンタの2010年が、目ん玉ひんむくくらいにおめでたーい年になることを祈ってるぜ。

フランスの大晦日には、まいったね。
フランス特有の大晦日名物って、なんだか知ってるかい。
花火でも打ち上がるのかって? 違うね。
教会のミサ? それもあるが、まぁクリスマスイブほどの盛り上がりはないわな。
アンタ、フランスをみくびってもらっちゃ困るのよ。
んなキレイゴトじゃあねえんだぜ。
フランス在住のみなさんに加えて、冬休みで旅行中よーオホホホなんて人も、よくよく大晦日には注意しなくちゃいけねえ。
在住組のみなさんにとっちゃ釈迦に説法だろうが、殊にフランスにロマンチックな幻想を抱いてる子猫ちゃんたちには、用心に用心を重ねてもらいてえ。
フランスの大晦日といえば、これ。

(フランス24より)
放火よ。
見ろよこの写真、イラクかアフガニスタンあたりで、自爆テロでも起きたのかって感じだろ?
フランスなのよ。
狙われるのは駐車されている自動車やバイク。
たいていガソリンを積んでるから、引火して大炎上なんてことも多いんだぜ。
日本では、というかフランス国外ではほとんど知られてねえようだが、いつのころからか、大晦日の夜には車が燃やされる、と相場が決まってる。
昨年、2008年の大晦日から09年元旦にかけては、1147台が放火された。結構な数だ。
愛車を燃やされちまった人にとってみりゃ、なんとも散々な年明けだよな。
放火の件数は、年を追うごとに増えているらしい。

(Rue89より)
3年前に比べると3倍に増えたそうだ。
なんだってフランス人はこんな馬鹿なマネをしでかすのか?
フランス人であるところのオレのダチ公、モナミに聞いてみたのよ。そしたら、
「メ・ノン、バンチョー! やってるのはフランス人じゃない、移民たちさ!」
どういうことかと言うと、大晦日の放火が起きているのはパリ郊外など治安の悪い地域に限られ、やっているのはそこに住む低所得者層の移民、しかも若い連中だ、って言うんだな。
職もなく、教育もろくに受けず、カネはない。未来の展望もない。そんな愚連隊たちが新年という機会に乗じて日ごろのうっぷんを晴らしてるんだ、と。
実はこの移民問題、フランスではしょっちゅう俎上に上げられながらデリケートな問題なんだが、確かにアラブ系やアフリカ系の移民が多く住む地域ってのは大都市の郊外にあって、貧しいが故に治安は悪い。
それに、報道によると、確かにパリ郊外は大晦日放火の件数が多いらしい。ちなみに、続くのはドイツ国境に近いフランス東部、ストラスブールを中心とするアルザス地方なんだそうだ。
だが、件数の偏りはあるにせよ、大晦日の放火自体はフランス全土でまんべんなく起きているようだぜ。

(Rue89より)
上の地図は大晦日の夜に放火があった場所を炎のマークで示したもの。
ご覧の通り、人口の多い都市では地域に関係なく発生していることがわかる。
これだけのデータじゃ、果たして本当に犯人が移民の若者だけなのかは、何とも言えないと思うぜ。
しかし、フランスじゃそういうことだとして、半ば常識化してんのよ。
いずれにしても、だ。
日本で不良行為、ヤンキーが問題になることがあるわな。
暴走族、ドリフト族、初日の出走行、成人式での乱痴気騒ぎ……。
番長は学ランこそ背負っているが、ヤンキーではない。連中の肩を持つ気は一切ねえよ。うるせえのはハタ迷惑だし、弱いものイジメは最低だ。
だがよ、思わねえか。フランスに比べるとずいぶん、節度を守った不良行為だな、ってよ。
枠の中で安全に暴れてるっつーか、所詮はガキのママゴトなんだよな。
おっと、念のために言っておくが、大晦日放火を褒めてるんじゃ決してないぜ、もちろん。
いずれにしても、大晦日といえば放火だ。覚えておいてくれ。
フランスで大晦日の夜と言えば、仲のいい友達の家なんかに集まってするというのが定番。街角でどうこう、って光景はそんなに目にしないぜ。
どっかでカウントダウンやってるかしら、なんて気安く出歩くのは考えもんかもしれん。気を付けてくれよな。
そうそう、知識は荷物にならねえって言うからな、もう一点だけ。
大晦日の夜以外にもう一日、自動車放火がバンバン起こる日があんのよ。いつだかわかるかい?
7月14日。そう、フランス革命記念日なんだよな。どうやら、お祭りムードに乗じてやってるらしい。
どうにもしょうがねえな。
いや、まいったね。
今年最後の更新だってのに、テーマが放火になっちまったのにはまいったね。
だがな、これがフランス本来の姿なのよ。
どなたさまも隅から隅まで、良いお年を。
アンタの2010年が、目ん玉ひんむくくらいにおめでたーい年になることを祈ってるぜ。

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2009.12.29 (Tue)
恐怖!リヨンの観覧車
まいったね。
リヨンの観覧車には、まったくもってまいったね。
リヨンといえば、フランス中部の大都市。
市単独の人口ではパリ、マルセイユに次ぐ3位だが、近隣の市を合わせた都市圏人口は165万人に及び、フランス第2の規模を誇っている。
古くから金融の中心地として知られ、大手銀行の多くが本店をパリではなくリヨンに置いているんだぜ。
絹織物の産地としても有名で、かつて養蚕業が盛んだった日本とも縁が深いのよ。
上州の富岡製糸場、あの指導にあたったのはリヨン出のフランス人だし、生糸を輸出する拠点港があった横浜とは姉妹都市の提携をしてるっていうぜ。
そのリヨン市のどまんなかにあるのが、ベラクール広場。

(フランス語版ウィキペディア、「ベラクール広場」より)
ここに冬場だけ、12月から2月ごろまでの間に限って現れるのが、この観覧車だ。

なんでも移動式の観覧車らしい。
こんなでっかいものが冬場以外、いったいどこにいやがるのかは知らねえが。
てっぺんから見る景色は絶景で、

世界遺産にも登録されている、リヨンの歴史地区が一望に見渡せるのよ。

それもそのはず、高さは約60メートル。
ビルでたとえるとおよそ15階相当にもなる。

背後の建物と比べりゃ、高さはわかるだろ?
なのに、日本じゃ考えられねえ放任っぷりなのよ。

よーく見てほしい、ゴンドラを。

屋根がついてるだけで、窓ガラスなどはなーんもない吹きっさらし。
ところが、

ベルトやバーといった安全装置、座席への固定器具が一切ないんだ。
その気になりゃ、あるいは不注意からでも、簡単に落っこちることができるのよ。
この坊やに注目してくれるか。

な。
こちらのご婦人も、

このとおり、素の状態で座席に座ってるのよ。
高くなるに従って風が強くなって、ずいぶんと揺れやがるんだな、これが。
常に落下の恐怖に立ち向かわなきゃなんねえ。
しかも、

日本の観覧車に比べると相当スピードが速い。
番長、ざっと計算してみたんだが、およそ通常の観覧車の6倍くらいと出た。
体感で言えば、スキー場の高速リフトってとこかな。
あんまりスピードが速いんで、ヒョイと飛び乗るなんてことはできねえ。
当然の結果として、新しく客が乗り込むときには、

観覧車自体の動きを止めることになる。

ゴンドラに乗ってるほうは、高いところで宙吊りよ。
風は強いし、動きが止まるときには慣性の法則にしたがってガックリと衝撃がくる。
生きた心地がしねえぜ。
しがみつこうったってゴンドラの中央にある軸の部分くらいしかないわけだが、

まかり間違ってこの軸をまわそうもんなら、なんとコーヒーカップのようにゴンドラ自体が回転しちまうんだぜ!
しかもこの観覧車、全部で3周するのよ。
日本じゃ普通、この大きさなら1周で終わりだよなあ。
普段そっけないくせに、妙なところでサービス精神旺盛じゃねえかよ、フランス!

夜はきれいにライトアップされるこの観覧車、リヨンじゃ冬の風物詩なのよ。
機会があったら、ぜひ乗ってみてくれよな。
そこいらのジェットコースターなんかより、はるかにおっそろしいぜ。
いや、まいったね。
番長、決して高所恐怖症ってわけじゃないんだが、さすがにタマキン縮み上がっちまったぜ。
にしても、日本じゃ考えらんねえよな。
それだけ自己責任という考え方が徹底してるのか、日本人が甘え過ぎなのか。
ま、フランスのことだから、落っこちたときのことを深く考えてねえだけのことだと思うけどな。

リヨンの観覧車には、まったくもってまいったね。
リヨンといえば、フランス中部の大都市。
市単独の人口ではパリ、マルセイユに次ぐ3位だが、近隣の市を合わせた都市圏人口は165万人に及び、フランス第2の規模を誇っている。
古くから金融の中心地として知られ、大手銀行の多くが本店をパリではなくリヨンに置いているんだぜ。
絹織物の産地としても有名で、かつて養蚕業が盛んだった日本とも縁が深いのよ。
上州の富岡製糸場、あの指導にあたったのはリヨン出のフランス人だし、生糸を輸出する拠点港があった横浜とは姉妹都市の提携をしてるっていうぜ。
そのリヨン市のどまんなかにあるのが、ベラクール広場。

(フランス語版ウィキペディア、「ベラクール広場」より)
ここに冬場だけ、12月から2月ごろまでの間に限って現れるのが、この観覧車だ。

なんでも移動式の観覧車らしい。
こんなでっかいものが冬場以外、いったいどこにいやがるのかは知らねえが。
てっぺんから見る景色は絶景で、

世界遺産にも登録されている、リヨンの歴史地区が一望に見渡せるのよ。

それもそのはず、高さは約60メートル。
ビルでたとえるとおよそ15階相当にもなる。

背後の建物と比べりゃ、高さはわかるだろ?
なのに、日本じゃ考えられねえ放任っぷりなのよ。

よーく見てほしい、ゴンドラを。

屋根がついてるだけで、窓ガラスなどはなーんもない吹きっさらし。
ところが、

ベルトやバーといった安全装置、座席への固定器具が一切ないんだ。
その気になりゃ、あるいは不注意からでも、簡単に落っこちることができるのよ。
この坊やに注目してくれるか。

な。
こちらのご婦人も、

このとおり、素の状態で座席に座ってるのよ。
高くなるに従って風が強くなって、ずいぶんと揺れやがるんだな、これが。
常に落下の恐怖に立ち向かわなきゃなんねえ。
しかも、

日本の観覧車に比べると相当スピードが速い。
番長、ざっと計算してみたんだが、およそ通常の観覧車の6倍くらいと出た。
体感で言えば、スキー場の高速リフトってとこかな。
あんまりスピードが速いんで、ヒョイと飛び乗るなんてことはできねえ。
当然の結果として、新しく客が乗り込むときには、

観覧車自体の動きを止めることになる。

ゴンドラに乗ってるほうは、高いところで宙吊りよ。
風は強いし、動きが止まるときには慣性の法則にしたがってガックリと衝撃がくる。
生きた心地がしねえぜ。
しがみつこうったってゴンドラの中央にある軸の部分くらいしかないわけだが、

まかり間違ってこの軸をまわそうもんなら、なんとコーヒーカップのようにゴンドラ自体が回転しちまうんだぜ!
しかもこの観覧車、全部で3周するのよ。
日本じゃ普通、この大きさなら1周で終わりだよなあ。
普段そっけないくせに、妙なところでサービス精神旺盛じゃねえかよ、フランス!

夜はきれいにライトアップされるこの観覧車、リヨンじゃ冬の風物詩なのよ。
機会があったら、ぜひ乗ってみてくれよな。
そこいらのジェットコースターなんかより、はるかにおっそろしいぜ。
いや、まいったね。
番長、決して高所恐怖症ってわけじゃないんだが、さすがにタマキン縮み上がっちまったぜ。
にしても、日本じゃ考えらんねえよな。
それだけ自己責任という考え方が徹底してるのか、日本人が甘え過ぎなのか。
ま、フランスのことだから、落っこちたときのことを深く考えてねえだけのことだと思うけどな。

2009.12.28 (Mon)
フランスで事実婚が多い理由、番長がお教えするぜ
まいったね。
「フランス婚」への誤解には、まいったね。
以前に書いた、夏木マリ姐さん言うところの「フランス婚」を思い出してもらおうか。
姐さんが言うフランス婚とは、籍を入れない同棲状態のことだ。
なんとなれば、フランス人は籍を入れないからだ、と。
待てーい!!
なんか忘れてやしないかい。
フランスって国は、国民の7割をカトリック教徒が占める、大カトリック教国なんだぜ。
アンタ、ノートルダム大聖堂って名前くらいは、聞いたことあんだろ。
パリのが有名だが、実は各地にある。

(パリのノートルダム大聖堂)

(リヨンのノートルダム大聖堂)
ノートルダムってのは直訳すると、「我らの夫人」とか「みんなのおふくろさん」くらいの意味なんだな。
英語にすれば、まあ our lady ってとこよ。
これ、誰のことを指してるか、わかるかい?
聖母マリアさんよ。イエス・キリストを生んだことでおなじみの、あの御仁な。
フランス人にとってどれだけ身近な存在なのか、よく表してるだろ。
南仏のアヴィニヨンにはかつて、カトリック世界の中心、教皇庁だって置かれてたんだぜ。

(アヴィニョン教皇庁)
でもって、カトリック教会において、結婚と言うのは神聖にして超重要な儀式の一つ。生まれた時の洗礼、死んだ時の葬儀に並ぶ、人生の節目となる一大イベントなのよ。

(ラファエル「マリアとヨセフの結婚式」)
いやいや、そちらさんのおっしゃるとおり、最近の若者は礼拝なんかにも行きゃあしねえよ。
ただ、日本で仏教が葬式、神道が初詣や七五三なんかの儀式の中に根付いているように、フランスでもキリスト教の影響はちょっとやそっとのことで抜けやしねえ。
フランスには1年に12日の祝日があるんだが、そのうち7日がカトリック絡みのイベントだってのを見てもわかるだろ。
結婚はいまだに特別な儀式なのよ。
そもそも日本でいま一般に行われてる結婚式、ありゃ大半がキリスト教のマネゴトじゃねえか。
結婚情報誌「ゼクシィ」の調査によると、日本の結婚式の64%はキリスト教式と圧倒的。神前式18%、人前式が16%なんだとよ。
フランスでやってるような結婚式がカッコイイ、ステキってんで取り入れてきたものを、いまさらフランス婚と言えば同棲のことです、ってそうは問屋がおろさねえよ。
ただな。
一方で、姐さんのおっしゃるとおり、フランスに籍を入れないカップルが相当多くいるのも事実だから、一筋縄じゃいかねえよな。
データとしちゃ、こんなのがある。フランスで2008年に生まれた子どものうち、なんと52%、半分以上が婚外子なんだとよ。
一応説明しておくと、婚外子ってのは、結婚してないカップルから生まれた子どものことだ。
(ちなみに日本では2%しかいねえ。むしろ2%もいたのかって感じすらあるわな。)
ハイ出たよ矛盾。フランスに付き物の矛盾。
元祖・結婚式の国、のはずのフランスで、なんだってこんなに事実婚が多いのか?
番長がズバリお答えしよう。
結婚と離婚が面倒くさいからよ。
そりゃもう壮絶に、悶絶するほどに。
日本の結婚はごく簡単だ。
結婚届に名前を書いて、証人2人のハンコもらえばしまいよ。
本籍地以外で届け出るなら戸籍謄本が必要だが、日本の役所は優秀だ。取り寄せれば1週間と待たずに郵送されてくる。
さてフランスの結婚。申請に必要な書類は、
出生証明書、
慣習証明書、
独身証明書、
婚前診断書(=健康診断書)、
居住証明書。
ここらへんがとりあえずの基本セットだ。
とりあえずと留保したのにはワケがある。必要書類が自治体によって違うのよ。これ以外にも必要とされる書類がある、場合もある。
結婚を決めたらまずは役所に行って、「結婚申請に必要な書類のリスト」という書類をもらうところから始めるそうだぜ。
しかも、フランスの役所ってのは本当にクソッタレだから、こういう書類を入手するのに、いちいち時間が掛かる。2、3ヵ月待たされるなんてのはザラよ。
次に、結婚の公示ってのがある。役所の前に、こいつら結婚するけど異議はねえかと一定期間、書類を張り出すのよ。
でもって、その次に役所の担当者によるインタビュー。これはあったりなかったりするようだが、どこで出会ったとか、いろいろ聞かれるわけだ。偽装結婚を防ぐためらしい。
さらに加えて、役所で結婚式を必ずやらなきゃなんねえ。それぞれの役所の中に専用の部屋がちゃんとあるのよ。
まずは市長のアポを取る。
指定の時間に本人たちと証人が出向く。証人の数ってのがまたそれぞれ違って、2人だったり4人だったりするようだ。
で、市長から直接意思を確認される。その上でようやく結婚が認められる。
これは例外なしで、病人だったら市長が病院まで来るんだとか。
フランス語を理解出来ないようだったら、法定通訳を立てなきゃなんねえ。
その上で、教会での挙式がしたけりゃ勝手にどうぞ、ってことになる。このへんは日本でも同じだな。
ヨーロッパでも、スウェーデンなど国によっては、教会で結婚式を挙げれば自動的に役所の手続きも終わるらしいが、フランスではそうはいかねえ。
この教会の手続きがまた大変で、なんで結婚するのかといった聞き取り調査はやっぱりある。当日のミサも3~4時間に及ぶこともあるとか。
で、たいていのフランス人は披露宴というか結婚パーティもやるから、つまりは3回のセレモニーをこなすことで、ようやく一連の儀式が終わるってことらしい。
とまあ、結婚にはなんとも七面倒くさい手続きが必要になる。
しかし、離婚はもっと、輪をかけて面倒くさい。
そもそもフランスでは、なんと1975年に法律が改正されるまで、協議離婚が禁止されていた。
結婚式で「病めるときも健やかなるときも……死が二人を分かつまで、愛し慈しみ貞節を守ることを誓います」って言うだろ?
あれは伊達じゃないのよ。カトリックてのは家族制度に関しちゃ厳格で、離婚を認めてねえ。
神の前で誓った約束を破るなんてのはもってのほかよ。
その協議離婚ってのは何かっていうと、夫婦で話し合って同意すれば、それで結婚を解消できるというタイプの離婚。
要するに、互いに相手のことが好きじゃなくなったから、性格が合わないから別れたいです、ってなヤツよ。
ちなみにそれ以外の離婚ってのは、たとえばドメスティック・バイオレンスがひどいとか、不倫だとか、やむにやまれぬ理由がある場合の離婚とかだな。
1975年って言えば、たかだか30年かそこいら前。まだ最近だよな。
そんな最近まで認められないくらい、離婚ってのは重いタブーだったのよ。
協議離婚が認められるや、年間4万件だった離婚の数が10万件に跳ね上がったそうだぜ。
だが、話はそれだけじゃあ終わらねえ。
知っての通り、日本の協議離婚は離婚届を出すだけだ。
ところがフランスでは、1975年に協議離婚が認められてからも、離婚をするためには必ず裁判をしなけりゃならなかったのよ。
裁判にはもちろん、たくさんの書類が必要だし、証人による証言も必要だ。カネもかかる。
たとえば、別居が続いていることの証明をしなきゃならねえ。いざ離婚をしようと思い立っても、まずは書類で証明できるような「正しい別居状態」を作って数年は維持する必要があるわけよ。そのあと裁判になって、まあ1年くらいはかかるわな。計2年くらいは少なくとも見とかにゃならんらしい。
しかも、野郎のセックスが弱いからだ、いいやアイツが家事をしねえからだ、なんていう中傷合戦に陥ることもしょっちゅうだと聞くぜ。こりゃ大変だわ。
2007年からはようやく、両者の合意ができてる場合は公正証書を作れば離婚できるようになったらしい。
裁判所に出頭して手続きをしなきゃイカンという点では変わりねえがな。
てなわけで、フランスでの結婚と離婚がどんだけ面倒くせえものかは、わかってもらえたかな?
それでいて、事実婚でも、税制上の優遇措置なんかは正式な結婚とほぼ変わらない。
そりゃ籍を入れないカップルも増えるわけだわな。
なんでこんなに面倒くさいのか。
こいつは番長の推測だが、やっぱりキリスト教の影響力が強いからじゃねえかな。
きっと神様的には、結婚も離婚も、そう簡単にしてもらっちゃ困るわけよ。それが家庭に対し、ひいては社会に対し、責任を持つということだからな。
ことに男尊女卑がまかり通っていた時分には、不埒な男どもをそうやって縛ることが必要だったんだろう。
ところが、フランスの、あるいはヨーロッパの近現代史ってのは、そういう教会の支配から脱する戦いの歴史でもある。
1789年のフランス革命が、まさにそのシンボルだわな。
逆説的な言い方になるが、同棲なり事実婚というスタイルは、キリスト教の影響力が強い国だからこそ広がったわけよ。
さて、わが祖国のニッポンだが。
こっちは結婚も離婚も基本ペーパー一枚、非常に簡単と来てる。
わざわざ事実婚を選ぶ必要がないんだよな。
婚外子だって増えねえわけよ。
むしろ、できちゃった婚やらおめでた婚なんてのがあるだろ。
長年付き合ってると入籍に踏み切るタイミングがねえ、いっそ子どもができていいきっかけになった、なんてな。
それくらい籍を入れることが簡単だからなのよ。フランスではまあない発想だぜ。
いや、まいったね。
そういった背景を無視して制度の上っ面だけをなぞり、フランス婚なんてうそぶいてみる。
いつもカッコイイはずの姐さん、どうもらしくねえんじゃねえか。
ショコラだマカロンだっつってきーきー騒いでるおぼこ娘と次元は変わらねえ、なんて言われちまうぜ。

「フランス婚」への誤解には、まいったね。
以前に書いた、夏木マリ姐さん言うところの「フランス婚」を思い出してもらおうか。
敢えて入籍はしないが、今後2人で同居する予定で、夏木は「プロポーズや結婚指輪はまだないです。フランス人は籍を入れないみたいだし、“フランス婚”ということにしていただけないかしら。
(産経ニュースより)
姐さんが言うフランス婚とは、籍を入れない同棲状態のことだ。
なんとなれば、フランス人は籍を入れないからだ、と。
待てーい!!
なんか忘れてやしないかい。
フランスって国は、国民の7割をカトリック教徒が占める、大カトリック教国なんだぜ。
アンタ、ノートルダム大聖堂って名前くらいは、聞いたことあんだろ。
パリのが有名だが、実は各地にある。

(パリのノートルダム大聖堂)

(リヨンのノートルダム大聖堂)
ノートルダムってのは直訳すると、「我らの夫人」とか「みんなのおふくろさん」くらいの意味なんだな。
英語にすれば、まあ our lady ってとこよ。
これ、誰のことを指してるか、わかるかい?
聖母マリアさんよ。イエス・キリストを生んだことでおなじみの、あの御仁な。
フランス人にとってどれだけ身近な存在なのか、よく表してるだろ。
南仏のアヴィニヨンにはかつて、カトリック世界の中心、教皇庁だって置かれてたんだぜ。

(アヴィニョン教皇庁)
でもって、カトリック教会において、結婚と言うのは神聖にして超重要な儀式の一つ。生まれた時の洗礼、死んだ時の葬儀に並ぶ、人生の節目となる一大イベントなのよ。

(ラファエル「マリアとヨセフの結婚式」)
いやいや、そちらさんのおっしゃるとおり、最近の若者は礼拝なんかにも行きゃあしねえよ。
ただ、日本で仏教が葬式、神道が初詣や七五三なんかの儀式の中に根付いているように、フランスでもキリスト教の影響はちょっとやそっとのことで抜けやしねえ。
フランスには1年に12日の祝日があるんだが、そのうち7日がカトリック絡みのイベントだってのを見てもわかるだろ。
結婚はいまだに特別な儀式なのよ。
そもそも日本でいま一般に行われてる結婚式、ありゃ大半がキリスト教のマネゴトじゃねえか。
結婚情報誌「ゼクシィ」の調査によると、日本の結婚式の64%はキリスト教式と圧倒的。神前式18%、人前式が16%なんだとよ。
フランスでやってるような結婚式がカッコイイ、ステキってんで取り入れてきたものを、いまさらフランス婚と言えば同棲のことです、ってそうは問屋がおろさねえよ。
ただな。
一方で、姐さんのおっしゃるとおり、フランスに籍を入れないカップルが相当多くいるのも事実だから、一筋縄じゃいかねえよな。
データとしちゃ、こんなのがある。フランスで2008年に生まれた子どものうち、なんと52%、半分以上が婚外子なんだとよ。
一応説明しておくと、婚外子ってのは、結婚してないカップルから生まれた子どものことだ。
(ちなみに日本では2%しかいねえ。むしろ2%もいたのかって感じすらあるわな。)
ハイ出たよ矛盾。フランスに付き物の矛盾。
元祖・結婚式の国、のはずのフランスで、なんだってこんなに事実婚が多いのか?
番長がズバリお答えしよう。
結婚と離婚が面倒くさいからよ。
そりゃもう壮絶に、悶絶するほどに。
日本の結婚はごく簡単だ。
結婚届に名前を書いて、証人2人のハンコもらえばしまいよ。
本籍地以外で届け出るなら戸籍謄本が必要だが、日本の役所は優秀だ。取り寄せれば1週間と待たずに郵送されてくる。
さてフランスの結婚。申請に必要な書類は、
出生証明書、
慣習証明書、
独身証明書、
婚前診断書(=健康診断書)、
居住証明書。
ここらへんがとりあえずの基本セットだ。
とりあえずと留保したのにはワケがある。必要書類が自治体によって違うのよ。これ以外にも必要とされる書類がある、場合もある。
結婚を決めたらまずは役所に行って、「結婚申請に必要な書類のリスト」という書類をもらうところから始めるそうだぜ。
しかも、フランスの役所ってのは本当にクソッタレだから、こういう書類を入手するのに、いちいち時間が掛かる。2、3ヵ月待たされるなんてのはザラよ。
次に、結婚の公示ってのがある。役所の前に、こいつら結婚するけど異議はねえかと一定期間、書類を張り出すのよ。
でもって、その次に役所の担当者によるインタビュー。これはあったりなかったりするようだが、どこで出会ったとか、いろいろ聞かれるわけだ。偽装結婚を防ぐためらしい。
さらに加えて、役所で結婚式を必ずやらなきゃなんねえ。それぞれの役所の中に専用の部屋がちゃんとあるのよ。
まずは市長のアポを取る。
指定の時間に本人たちと証人が出向く。証人の数ってのがまたそれぞれ違って、2人だったり4人だったりするようだ。
で、市長から直接意思を確認される。その上でようやく結婚が認められる。
これは例外なしで、病人だったら市長が病院まで来るんだとか。
フランス語を理解出来ないようだったら、法定通訳を立てなきゃなんねえ。
その上で、教会での挙式がしたけりゃ勝手にどうぞ、ってことになる。このへんは日本でも同じだな。
ヨーロッパでも、スウェーデンなど国によっては、教会で結婚式を挙げれば自動的に役所の手続きも終わるらしいが、フランスではそうはいかねえ。
この教会の手続きがまた大変で、なんで結婚するのかといった聞き取り調査はやっぱりある。当日のミサも3~4時間に及ぶこともあるとか。
で、たいていのフランス人は披露宴というか結婚パーティもやるから、つまりは3回のセレモニーをこなすことで、ようやく一連の儀式が終わるってことらしい。
とまあ、結婚にはなんとも七面倒くさい手続きが必要になる。
しかし、離婚はもっと、輪をかけて面倒くさい。
そもそもフランスでは、なんと1975年に法律が改正されるまで、協議離婚が禁止されていた。
結婚式で「病めるときも健やかなるときも……死が二人を分かつまで、愛し慈しみ貞節を守ることを誓います」って言うだろ?
あれは伊達じゃないのよ。カトリックてのは家族制度に関しちゃ厳格で、離婚を認めてねえ。
神の前で誓った約束を破るなんてのはもってのほかよ。
その協議離婚ってのは何かっていうと、夫婦で話し合って同意すれば、それで結婚を解消できるというタイプの離婚。
要するに、互いに相手のことが好きじゃなくなったから、性格が合わないから別れたいです、ってなヤツよ。
ちなみにそれ以外の離婚ってのは、たとえばドメスティック・バイオレンスがひどいとか、不倫だとか、やむにやまれぬ理由がある場合の離婚とかだな。
1975年って言えば、たかだか30年かそこいら前。まだ最近だよな。
そんな最近まで認められないくらい、離婚ってのは重いタブーだったのよ。
協議離婚が認められるや、年間4万件だった離婚の数が10万件に跳ね上がったそうだぜ。
だが、話はそれだけじゃあ終わらねえ。
知っての通り、日本の協議離婚は離婚届を出すだけだ。
ところがフランスでは、1975年に協議離婚が認められてからも、離婚をするためには必ず裁判をしなけりゃならなかったのよ。
裁判にはもちろん、たくさんの書類が必要だし、証人による証言も必要だ。カネもかかる。
たとえば、別居が続いていることの証明をしなきゃならねえ。いざ離婚をしようと思い立っても、まずは書類で証明できるような「正しい別居状態」を作って数年は維持する必要があるわけよ。そのあと裁判になって、まあ1年くらいはかかるわな。計2年くらいは少なくとも見とかにゃならんらしい。
しかも、野郎のセックスが弱いからだ、いいやアイツが家事をしねえからだ、なんていう中傷合戦に陥ることもしょっちゅうだと聞くぜ。こりゃ大変だわ。
2007年からはようやく、両者の合意ができてる場合は公正証書を作れば離婚できるようになったらしい。
裁判所に出頭して手続きをしなきゃイカンという点では変わりねえがな。
てなわけで、フランスでの結婚と離婚がどんだけ面倒くせえものかは、わかってもらえたかな?
それでいて、事実婚でも、税制上の優遇措置なんかは正式な結婚とほぼ変わらない。
そりゃ籍を入れないカップルも増えるわけだわな。
なんでこんなに面倒くさいのか。
こいつは番長の推測だが、やっぱりキリスト教の影響力が強いからじゃねえかな。
きっと神様的には、結婚も離婚も、そう簡単にしてもらっちゃ困るわけよ。それが家庭に対し、ひいては社会に対し、責任を持つということだからな。
ことに男尊女卑がまかり通っていた時分には、不埒な男どもをそうやって縛ることが必要だったんだろう。
ところが、フランスの、あるいはヨーロッパの近現代史ってのは、そういう教会の支配から脱する戦いの歴史でもある。
1789年のフランス革命が、まさにそのシンボルだわな。
逆説的な言い方になるが、同棲なり事実婚というスタイルは、キリスト教の影響力が強い国だからこそ広がったわけよ。
さて、わが祖国のニッポンだが。
こっちは結婚も離婚も基本ペーパー一枚、非常に簡単と来てる。
わざわざ事実婚を選ぶ必要がないんだよな。
婚外子だって増えねえわけよ。
むしろ、できちゃった婚やらおめでた婚なんてのがあるだろ。
長年付き合ってると入籍に踏み切るタイミングがねえ、いっそ子どもができていいきっかけになった、なんてな。
それくらい籍を入れることが簡単だからなのよ。フランスではまあない発想だぜ。
いや、まいったね。
そういった背景を無視して制度の上っ面だけをなぞり、フランス婚なんてうそぶいてみる。
いつもカッコイイはずの姐さん、どうもらしくねえんじゃねえか。
ショコラだマカロンだっつってきーきー騒いでるおぼこ娘と次元は変わらねえ、なんて言われちまうぜ。
