2010.02.27 (Sat)
検証!なぜフランスでは出生率が上がったか?
まいったね。
フランスで出生率が上がった理由がナゾなのには、まいったね。
フランスでは、赤ん坊がどんどこ生まれてんのよ。
1人の女性が一生のうちに産む子どもの数を示す、合計特殊出生率という数字がある。
2008年の数字で、フランスは2.00だった。
日本は1.37だ。
(以下、出生率の数字は断り書きがない限り2008年)
フランスの出生率は、ヨーロッパの中でも群を抜いて高いんだぜ。
ドイツ1.38、スイス1.48、スペイン1.46、イタリア1.37(2007年)、イギリス1.84(2006年)、オランダ1.77。
な。
手厚い子育て支援で有名な北欧ですら、デンマーク1.89、スウェーデン1.91、フィンランド1.85、ノルウェー1.96。フランスにはかなわねえのよ。
EUでフランスより出生率が高い国と言えば、中絶が法的に禁止されている敬虔なカトリック教国のアイルランド(2.15)しかないんだぜ。
しかもフランスの場合、1994年には1.65まで落ち込んでいる。そこからV字回復してんだな。
これは先進国の中では例外的なことで、どうやったらそんなに子どもが増えるんだと、各国からアツーイ視線を浴びてんのよ。
むろん、少子化だ少子化だと大騒ぎしている日本もその一つだ。厚生労働省や内閣府は大真面目にフランスを分析しているぜ。
学術論文やマスコミの記事も多数あって、この話をテーマに1冊書き上げたっていう単行本も数冊出てるくらいだ。
でまあ番長、さすがに全部目を通すってわけにはいかないが、いくつかを拝見させてもらった。
知りたいのは、なぜフランスで出生率が増えたか、ズバリその理由だ。
フランスに何があって、日本には何が欠けてんのか。
番長から見ると、そうだなと納得できるご意見もあれば、そいつは違うんじゃねえかと思わず眉をひそめちまうようなものもあったぜ。
てなわけで今回は、フランスが少子化を克服した理由について、喧伝される言説を検証させてもらおうというココロミよ。
アタマに付いてる記号、「○」は「その通り!」、「×」は「違うんじゃねえか?」、「△」は「半分はあってそうだな」、「?」は「よくわからんぜ」の意だ。
日本と比べればその通りだろうな。
しかし、EU諸国同士で比べると、さしたる差はないように見えるぜ。たとえばドイツの出生率は日本と同じくらい低いが、児童手当、日本で言うところの「子ども手当」の額だけで見れば、ドイツの方がフランスよりも高いのよ。
3歳(一部2歳)から入れる幼稚園(保育学校=エコール・マテルネル)は確かに充実している。無料だし数も多い。
けれども、3歳になるまで面倒をみるはずの保育園には、9%しか入れてねえ。
それはそれとして、ちょいと待ってくれよ。ヨーロッパには、この分野でフランス人も指をくわえてうらやましがる国が他にあるじゃあねえか。
そうよ、スウェーデンよ。福祉国家の代名詞的存在、いわばこの分野のボスとして、日本でもつとに知られてるよな。赤ん坊は1歳から保育園に入ることができ、5歳時までの平均で82%が預けられている。0歳児の間は親に育児休暇が保証されている。
どう考えてもこっちの方が充実してるだろ。なのに出生率は、フランスの方が0.1ポイントほど高いんだ。どういうこっちゃい!
これは番長がみっちり書いたとおりで、間違いなく親の負担を減らしてるな。日本やドイツではほとんど普及していない。
ま、日本で普及させられるかって話になると、また別だがな。いい機会だから移民を大量に受け入れるか?
フランスの育児休暇制度は日本よりも充実しているが、実際に育休を利用するフランス人妻は3割しかいない。
理由はよくわからんが、フツーに考えると、やっぱキャリアの中断を最小限にとどめるためってことなんだろう。単にカネの問題であれば、働かない人ほどフランスでは育児関連手当の額が増えるからな。所得制限のある手当もあるし。
ちなみに、番長が聞いたフランス人の個人的な意見だが、フランスの職場にも「なんだよオマエ育休なんか取るのかよ」という空気は、やっぱりあるそうだ。それもエリートたちに顕著らしい。以前に比べれば格段に少なくなったそうだがな。
確かにフランスの労働時間はヨーロッパの中でも短い。で、家での時間が多く取れるようになれば、子育ての時間はたっぷり取れるようになる道理だ。特に父親に関しては、日本よりも間違いなく家事や育児に参加できる時間が多いと言えるだろう。
だが、ここまでにも縷々書いてきたことだが、フランス人ってのは子どもを生んだ後も仕事をしたいという気持ちが強いんだな、むしろ。子育ての時間を最大限に取りたければ、仕事を辞める以外に選択肢はないわけでさ。少なくともフランスでは、労働時間が短いから出生率が高くなったとは言えないと思うぜ。
日本人はさすがに良識があるのか、こういう理由を提示してるのは見なかったな。
じゃあこれは何かって? フランス人に聞いたら返ってきた答えよ。「移民が産んでるからよ。さもなきゃ伝統的なカトリック信者の家庭でしょ」ってな。
番長はステレオタイプに過ぎないと思うが、反証も見つからないので何とも言えねえぜ。
高齢出産の危険性は、確かにこの10年くらいでずいぶん小さくなったらしい。
ただ医療技術の進歩ってだけなら、他の先進国にも共通してるはずだよな。フランスが優れているのは、制限付きながら、不妊治療も国の補助でタダになるってことだ。
日本男児としちゃ残念だが、コイツはそのとおりだと言わざるを得ねえ。
意識調査の「妻には家事と育児の責任がある」という設問に対して、東京の男は9割が賛成したのに対し、パリの男は8割が反対した。食後の後片付けをする頻度では「ほぼ毎日」と答えたパリの男が約5割だったのに対し、東京の男ではわずかに1割弱。
オイ、ニッポンの男どもよ! ド根性入れろ!!
これも前にみっちり書いたんでそっちを読んでほしいんだが、正式な結婚をしないフランス人が多いのは、結婚や離婚の手続きがものっすごく面倒くさいからだ。それ以外に理由はねえ!
そもそもフランスでは、法的に結婚をしていないカップルに子どもがいることが、PACS導入前から珍しくなかった。もし日本みたいに書類一枚で結婚や離婚ができたら、婚外子の数は日本と同じくらい少なかっただろう。
これは明らかにミスリーディングだと思うぜ。
確かにフランス女性の就業率は高い。
しかし、1980年代、どの先進国でも例外なく出生率が下がっていたころには、女性は社会に出て子どもを産まなくなった、つまり「女性の就業率が上がったから出生率が下がった」と言われていたじゃねえか。
そりゃ、是非はともかく女性が家庭にとどまっている方が子育てに割ける時間、余裕は大きくなるから、出生率が上がるのは道理だよな。
それがなぜ、2000年代には出生率が上がる原因に取って替わっちまったのか?
腑に落ちる説明は見つけられなかったぜ。
番長、出生率急増のナゾを解くカギはこれだと思ってる。
出産後も仕事を続けられる社会になると、なぜ子どもの数が増えるんだろうか。
目にした範囲で言うと、「女性が自然で自由な生き方をできるようになったからだ」とか、わかったようなわからないような理由が挙げられていることが多いようだな。
番長の読み解き方はちょっと違うぜ。
理論的なお話は研究を生業とする学者さんたちのすることで、荒くれることを生業とする番長の出番じゃねえが、人様の絞った知恵に後乗りして文句を言うばっかりってんじゃどうも行儀が悪い。
以下に考えを披露させてもらうとしようか。
人間はその進化の中で、生活にかかるさまざまコストを削減してきた。
ハッハッハ、いきなり大上段に構えちまったな。なに、小難しい話をしようってんじゃないのよ。
水道を整備することで、水汲みの作業にかかるコストをカットした。
自動車をつくることで、歩いたときにかかる時間やエネルギーをカットした。
電話をつくることで、わざわざ会いに行くコストをカットした。てな具合にな。
フランス人は、子育てのわずらわしさもコストとみなして、カットしちまったのさ。
日本でも、仕事にかまけて子育てに携わらなかった夫どもに限って、苦労を知らずに赤ん坊のカワイイとこだけしか見てないもんだから、2人目3人目をつくろうなんて無神経に言うだろ。
フランス人は、女性も含めてみんなが「無責任オトーサン化」したんだ。
日本で親の愛情の典型とされているようなことは、きれいサッパリと捨てた。
這うこともできない赤ん坊を見ず知らずの他人、しかもフランス語もろくにしゃべれないような移民に預ける。あんまり信用できないけど、そのへんは目をつぶるかと。
食事もテキトーだ。晩飯が冷凍食品なら上等、タマゴ一個やハム一枚という有様よ。
で、寝室は親子で別にして、夜泣きをしても見に行かない。両親はパーティーに出掛けてハッスルとしゃれ込むのさ。
いやいや、心配は無用だぜ。
フランスでも子どもはちゃんと育ってる。日本人よりむしろ親思いなんじゃないかってくらいにな。
これはイヤミで言ってるんじゃねえよ。子育てにかかる手間をそのくらいカットしても、変わらず子どもってのは大きくなるんだ。
日本の古いことわざにも言うじゃねえか。親はなくとも子は育つ、ってな。
フランス人は、そのへんの見切りの付け方が、バツグンにうまかったのよ。ある意味じゃ肝の据わった連中だな。
ヨウシ、日本でもこの考え方を採り入れようか!
ってのはまあ無理だろうな。アンタにも想像付くだろ。小沢一郎にサンバを踊らせるようなもんだぜ。向いてねえよ。
こればっかりは、法律で整備できる類の話じゃねえしなあ。
考えてもみてくれ。フランス人は、国に命令されて子育てを人任せにしてるわけじゃねえ。自然とそうなっちまったんだ。
お忘れじゃないかい、連中は恋愛大国に住むカップル第一主義者で、かつラテン系という、世界最強の取り合わせだってことをよ。
いや、まいったね。
日本人としては、やっぱ地道に保育所の整備あたりから始めるのがいいと思うぜ。
たださ、番長の本音を言ってもいいかい?
減ったら減ったでいいじゃねえか、日本の人口。狭い国土に人が多すぎるんだよ!

フランスで出生率が上がった理由がナゾなのには、まいったね。
フランスでは、赤ん坊がどんどこ生まれてんのよ。
1人の女性が一生のうちに産む子どもの数を示す、合計特殊出生率という数字がある。
2008年の数字で、フランスは2.00だった。
日本は1.37だ。
(以下、出生率の数字は断り書きがない限り2008年)
フランスの出生率は、ヨーロッパの中でも群を抜いて高いんだぜ。
ドイツ1.38、スイス1.48、スペイン1.46、イタリア1.37(2007年)、イギリス1.84(2006年)、オランダ1.77。
な。
手厚い子育て支援で有名な北欧ですら、デンマーク1.89、スウェーデン1.91、フィンランド1.85、ノルウェー1.96。フランスにはかなわねえのよ。
EUでフランスより出生率が高い国と言えば、中絶が法的に禁止されている敬虔なカトリック教国のアイルランド(2.15)しかないんだぜ。
しかもフランスの場合、1994年には1.65まで落ち込んでいる。そこからV字回復してんだな。
これは先進国の中では例外的なことで、どうやったらそんなに子どもが増えるんだと、各国からアツーイ視線を浴びてんのよ。
むろん、少子化だ少子化だと大騒ぎしている日本もその一つだ。厚生労働省や内閣府は大真面目にフランスを分析しているぜ。
学術論文やマスコミの記事も多数あって、この話をテーマに1冊書き上げたっていう単行本も数冊出てるくらいだ。
でまあ番長、さすがに全部目を通すってわけにはいかないが、いくつかを拝見させてもらった。
知りたいのは、なぜフランスで出生率が増えたか、ズバリその理由だ。
フランスに何があって、日本には何が欠けてんのか。
番長から見ると、そうだなと納得できるご意見もあれば、そいつは違うんじゃねえかと思わず眉をひそめちまうようなものもあったぜ。
てなわけで今回は、フランスが少子化を克服した理由について、喧伝される言説を検証させてもらおうというココロミよ。
アタマに付いてる記号、「○」は「その通り!」、「×」は「違うんじゃねえか?」、「△」は「半分はあってそうだな」、「?」は「よくわからんぜ」の意だ。
? 子育て家庭への経済的支援が手厚い
日本と比べればその通りだろうな。
しかし、EU諸国同士で比べると、さしたる差はないように見えるぜ。たとえばドイツの出生率は日本と同じくらい低いが、児童手当、日本で言うところの「子ども手当」の額だけで見れば、ドイツの方がフランスよりも高いのよ。
△ 保育施設が充実している
3歳(一部2歳)から入れる幼稚園(保育学校=エコール・マテルネル)は確かに充実している。無料だし数も多い。
けれども、3歳になるまで面倒をみるはずの保育園には、9%しか入れてねえ。
それはそれとして、ちょいと待ってくれよ。ヨーロッパには、この分野でフランス人も指をくわえてうらやましがる国が他にあるじゃあねえか。
そうよ、スウェーデンよ。福祉国家の代名詞的存在、いわばこの分野のボスとして、日本でもつとに知られてるよな。赤ん坊は1歳から保育園に入ることができ、5歳時までの平均で82%が預けられている。0歳児の間は親に育児休暇が保証されている。
どう考えてもこっちの方が充実してるだろ。なのに出生率は、フランスの方が0.1ポイントほど高いんだ。どういうこっちゃい!
○ ベビーシッターなど、保育施設以外の保育制度が充実している
これは番長がみっちり書いたとおりで、間違いなく親の負担を減らしてるな。日本やドイツではほとんど普及していない。
ま、日本で普及させられるかって話になると、また別だがな。いい機会だから移民を大量に受け入れるか?
× 育児休暇が取りやすい
フランスの育児休暇制度は日本よりも充実しているが、実際に育休を利用するフランス人妻は3割しかいない。
理由はよくわからんが、フツーに考えると、やっぱキャリアの中断を最小限にとどめるためってことなんだろう。単にカネの問題であれば、働かない人ほどフランスでは育児関連手当の額が増えるからな。所得制限のある手当もあるし。
ちなみに、番長が聞いたフランス人の個人的な意見だが、フランスの職場にも「なんだよオマエ育休なんか取るのかよ」という空気は、やっぱりあるそうだ。それもエリートたちに顕著らしい。以前に比べれば格段に少なくなったそうだがな。
△ 週35時間労働制で、父母とも労働時間が短い
確かにフランスの労働時間はヨーロッパの中でも短い。で、家での時間が多く取れるようになれば、子育ての時間はたっぷり取れるようになる道理だ。特に父親に関しては、日本よりも間違いなく家事や育児に参加できる時間が多いと言えるだろう。
だが、ここまでにも縷々書いてきたことだが、フランス人ってのは子どもを生んだ後も仕事をしたいという気持ちが強いんだな、むしろ。子育ての時間を最大限に取りたければ、仕事を辞める以外に選択肢はないわけでさ。少なくともフランスでは、労働時間が短いから出生率が高くなったとは言えないと思うぜ。
? ぽんぽん子どもを産んでるのは移民だ
日本人はさすがに良識があるのか、こういう理由を提示してるのは見なかったな。
じゃあこれは何かって? フランス人に聞いたら返ってきた答えよ。「移民が産んでるからよ。さもなきゃ伝統的なカトリック信者の家庭でしょ」ってな。
番長はステレオタイプに過ぎないと思うが、反証も見つからないので何とも言えねえぜ。
△ 高齢出産が増えた
高齢出産の危険性は、確かにこの10年くらいでずいぶん小さくなったらしい。
ただ医療技術の進歩ってだけなら、他の先進国にも共通してるはずだよな。フランスが優れているのは、制限付きながら、不妊治療も国の補助でタダになるってことだ。
○ 男性が家事や育児に協力的
日本男児としちゃ残念だが、コイツはそのとおりだと言わざるを得ねえ。
意識調査の「妻には家事と育児の責任がある」という設問に対して、東京の男は9割が賛成したのに対し、パリの男は8割が反対した。食後の後片付けをする頻度では「ほぼ毎日」と答えたパリの男が約5割だったのに対し、東京の男ではわずかに1割弱。
オイ、ニッポンの男どもよ! ド根性入れろ!!
× 同棲や事実婚による婚外子が一般的だ、PACSの導入で婚外子が増えた
これも前にみっちり書いたんでそっちを読んでほしいんだが、正式な結婚をしないフランス人が多いのは、結婚や離婚の手続きがものっすごく面倒くさいからだ。それ以外に理由はねえ!
そもそもフランスでは、法的に結婚をしていないカップルに子どもがいることが、PACS導入前から珍しくなかった。もし日本みたいに書類一枚で結婚や離婚ができたら、婚外子の数は日本と同じくらい少なかっただろう。
これは明らかにミスリーディングだと思うぜ。
? 女性の就業率が高い
確かにフランス女性の就業率は高い。
しかし、1980年代、どの先進国でも例外なく出生率が下がっていたころには、女性は社会に出て子どもを産まなくなった、つまり「女性の就業率が上がったから出生率が下がった」と言われていたじゃねえか。
そりゃ、是非はともかく女性が家庭にとどまっている方が子育てに割ける時間、余裕は大きくなるから、出生率が上がるのは道理だよな。
それがなぜ、2000年代には出生率が上がる原因に取って替わっちまったのか?
腑に落ちる説明は見つけられなかったぜ。
? 子どもを生んでからも仕事を続けられる
番長、出生率急増のナゾを解くカギはこれだと思ってる。
出産後も仕事を続けられる社会になると、なぜ子どもの数が増えるんだろうか。
目にした範囲で言うと、「女性が自然で自由な生き方をできるようになったからだ」とか、わかったようなわからないような理由が挙げられていることが多いようだな。
番長の読み解き方はちょっと違うぜ。
理論的なお話は研究を生業とする学者さんたちのすることで、荒くれることを生業とする番長の出番じゃねえが、人様の絞った知恵に後乗りして文句を言うばっかりってんじゃどうも行儀が悪い。
以下に考えを披露させてもらうとしようか。
人間はその進化の中で、生活にかかるさまざまコストを削減してきた。
ハッハッハ、いきなり大上段に構えちまったな。なに、小難しい話をしようってんじゃないのよ。
水道を整備することで、水汲みの作業にかかるコストをカットした。
自動車をつくることで、歩いたときにかかる時間やエネルギーをカットした。
電話をつくることで、わざわざ会いに行くコストをカットした。てな具合にな。
フランス人は、子育てのわずらわしさもコストとみなして、カットしちまったのさ。
日本でも、仕事にかまけて子育てに携わらなかった夫どもに限って、苦労を知らずに赤ん坊のカワイイとこだけしか見てないもんだから、2人目3人目をつくろうなんて無神経に言うだろ。
フランス人は、女性も含めてみんなが「無責任オトーサン化」したんだ。
日本で親の愛情の典型とされているようなことは、きれいサッパリと捨てた。
這うこともできない赤ん坊を見ず知らずの他人、しかもフランス語もろくにしゃべれないような移民に預ける。あんまり信用できないけど、そのへんは目をつぶるかと。
食事もテキトーだ。晩飯が冷凍食品なら上等、タマゴ一個やハム一枚という有様よ。
で、寝室は親子で別にして、夜泣きをしても見に行かない。両親はパーティーに出掛けてハッスルとしゃれ込むのさ。
いやいや、心配は無用だぜ。
フランスでも子どもはちゃんと育ってる。日本人よりむしろ親思いなんじゃないかってくらいにな。
これはイヤミで言ってるんじゃねえよ。子育てにかかる手間をそのくらいカットしても、変わらず子どもってのは大きくなるんだ。
日本の古いことわざにも言うじゃねえか。親はなくとも子は育つ、ってな。
フランス人は、そのへんの見切りの付け方が、バツグンにうまかったのよ。ある意味じゃ肝の据わった連中だな。
ヨウシ、日本でもこの考え方を採り入れようか!
ってのはまあ無理だろうな。アンタにも想像付くだろ。小沢一郎にサンバを踊らせるようなもんだぜ。向いてねえよ。
こればっかりは、法律で整備できる類の話じゃねえしなあ。
考えてもみてくれ。フランス人は、国に命令されて子育てを人任せにしてるわけじゃねえ。自然とそうなっちまったんだ。
お忘れじゃないかい、連中は恋愛大国に住むカップル第一主義者で、かつラテン系という、世界最強の取り合わせだってことをよ。
いや、まいったね。
日本人としては、やっぱ地道に保育所の整備あたりから始めるのがいいと思うぜ。
たださ、番長の本音を言ってもいいかい?
減ったら減ったでいいじゃねえか、日本の人口。狭い国土に人が多すぎるんだよ!

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2010.02.25 (Thu)
子育ては人任せ! ヌヌヌのヌヌーさん事情
まいったね。
ヌヌーさんを巡る事情には、まいったね。
おいおい、誰だそのヌヌーさんってのは、というアンタの頭に浮かんだでっかいクエスチョンマークは、ひとまず預からせてもらおうじゃねえか。
おっと、フランス在住のアンタ。ネタバレ勘弁、おくちチャックで途中まではお付き合い願うぜ。
これまでにも書いてきたように、フランス人女性は出産後も仕事を続ける。育児休暇ものんびりとは取らず、だいたい産後3~6ヶ月くらいまでには仕事に戻る。
パリ市内に限って言うと、なんと4分の3が2ヶ月以内に復職。1年以上の育休をとる人は15%に過ぎないそうだ。
だが、幼稚園(=保育学校、エコール・マテルネル)に入れるのは3歳(一部は2歳)からだ。
もっとも手のかかる、目の離せない3年ほどの間、誰が赤ん坊の面倒をみるのか。
父ちゃんは普通働いてるわな。
爺ちゃんや婆ちゃんをあてにするのも難しい。フランスでは二世帯の同居は極めてまれだ。みんな大学生になるころには独立する。
それじゃ近所に住んでいればいいかと言えば、そうでもねえ。子育て経験から言っても頼みの綱は爺ちゃんより婆ちゃんだろうが、おっと、バーチャンなんて言ったら怒られるぜ。フランス女性は何歳になってもフランス女性だからな。なんでアタシが育児なんかしなきゃいけないのよ、ようやく自由を手に入れたっていうのに、くらいのことは言われるだろうよ。
じゃあ保育園に入れるかってことになるが。
どっこい、そうは問屋が卸さないのよ。考えることはみな同じらしくてな。
フランスの保育園は3歳までと決まっているんだが、希望者のおよそ1割しか入園できていないと言われているぜ。
ほかに一時託児所というのがあって、たとえば週に3日間午前中だけとか、限られた時間は面倒をみてくれる。
ただ、これじゃあフルタイムの勤務は到底無理だよな。
なんだよ、日本とそう状況は変わらないじゃねえかって?
待たせたな。
そこでお鉢が回ってくるのが、ヌヌーさんだぜ。
ヌリスという言い方もする。乳母という意味だ。行政用語的にはアシスタント・マテルネルと呼ぶ。ま、ひらたく言えばベビーシッターよ。
ちなみに、フランスではベビーシッターと言えば「夜間や土日に子どもを預かる人」を指し、学生がアルバイト的にこなすことが多い。
ヌヌーは「平日昼間に子どもを預かる人」だ。

(女性誌「Femme Actuelle」 のサイトより)
ヌヌーさんの多くは育児に一区切りの付いた女性で、その人の自宅で赤ん坊を預かってもらう。まだ子どものいない若い女性や、まれには男性の場合もあるがな。ヌヌーさんの家ではなく、自分の家を使ってもらうこともある。
保育園のように集団生活をするわけではないが、目はより届きやすい。親の都合に柔軟に対応してくれるし、長く付き合えば家族と同じように親身になってくれるのもいいよな。
保育園を整備するのは大変だ。建物をはじめとする施設も必要だし、ちゃんと資格のある保育士を揃えなきゃならねえ。
そこでフランス政府はヌヌーさんを増やした。
ちと古い資料で恐縮だが、日本の内閣府少子化対策推進室が2005年にまとめたところでは、パリに住む3歳未満の子どものうち、保育園に入っているのは20万人。ヌヌーさんに預けられているのは50万人で、その数なんと2.5倍だ。
日本にもこれに相当する保育ママという制度があるんだが、まだまだ普及していない。2009年6月の時点で、東京都内で保育ママに預けられている子どもはたったの1461人。ケタが2つ違う。
フランス女性が出産直後から仕事に復帰できるのは、間違いなくヌヌーさんたちのおかげだぜ。
素晴らしい制度じゃないか、日本にもすぐ導入しようって?
まあそういきり立ちなさんな。
ここまでは本を読むだけでも、お役所の報告書を読むだけでもわかる話。
ここからは、現地のことを知らないとわからない話だ。
アンタももし機会があったら、パリみたいな大都市の住宅地で、昼間に公園を覗いてみな。
赤ん坊を遊ばせてるヌヌーさんがたくさんベンチに座ってるぜ。
のどかな光景だよなあ。
もっとも、別のことにも気づくかもしれん。
遊んでる赤ん坊は白人だが、ヌヌーさんたちの多くはアフリカ系、アラブ系だってことだ。
モロッコ人やアルジェリア人、セネガル人にマリ人、はたまたフィリピン人……つまりは移民なんだな。
よく考えてみりゃ、当たり前だ。フランス人女性と聞いて我々の頭にパッと思い浮かぶような白人女性は、オフィスで働いてるわけだから。
そうなのよ。
移民の女性が、白人女性の育児を下請けしてんのよ。
さっき書いたとおり、アシスタント・マテルネルは政府公認だ。
国の認定を受けるってのはさぞかし大変なんだろうな、って思うだろ?
全然そんなことはないんだとさ。
日本の保育ママの場合、保育士、幼稚園教諭、看護師、助産師、保健師の資格のうち少なくとも一つを持っていることが要件とされている。
だが、アシスタント・マテルネルになるためには資格は必要ない。なぜこの仕事をしようと思ったのかを確認する簡単な面接があり、他人の赤ん坊をちゃんと受け入れられるようなところに住んでいるかのチェックがある。それで終わり。まず落ちることはないようだ。
合格通知を受け取ると、60時間の実習を経て、正式に認定される。
ゆえに移民系の人が多いわけだ。
少々のフランス語さえできれば、特別な技能や知識は必要ない、言ってみれば誰にでもできる仕事だからな。
それでいて、皿洗いよりはよっぽど文化的だ。
それだけじゃねえ。
傍目にはわからないが、実はヌヌーさんの大半は、政府非公認なのよ。
非公認のヌヌーさんにとって、公認といちばん違う点は何か。
待遇だ。
保育ママは正規の雇用だから、最低賃金の時給8.86ユーロ(1ユーロ125円換算で約1100円)が適用になるし、社会保険もバッチリだ。医療費なんかはほぼ100%カバーされる。つまりタダ。
一方で非公認ヌヌーさんの場合、賃金は安く買い叩かれる場合が多い。だいたい時給6ユーロ前後ってのが相場のようだ。雇い主によっぽど恵まれない限りは社会保険もない。病気にかかりでもしたら、民間の保険にでも入ってなきゃ莫大なカネを請求されるぜ。
ずいぶんと差があるだろ。
だとすれば、非公認なんて地位に甘んじず、保育ママになった方がいいじゃねえか、なあ。
なかには幸運な例外もいる。政府公認でなくても、裕福な家庭で合法的に雇われている優秀なヌヌーさんは存在する。
だが、たいていの非公認ヌヌーさんは、どうにもならない事情を抱えてるのよ。
正規のフランス滞在許可を持ってなかったり、ビザはあっても労働の許可が下りてなかったりするんだな。
つまり非合法だ。
政府の公認なんざ受けられるわけがないってわけだ。
もっとも、日本で言う不法滞在のイメージとは違い、彼女たちは比較的寛容に見られている雰囲気を感じるぜ。
なんと言っても、社会で必要とされてるからだ。
さっき、日本の内閣府少子化対策推進室の資料を引用したよな。2005年のヤツ。パリの3歳未満の子どもの20万人が保育園、50万人がヌヌーさん預かりだと。
このときのパリに3歳未満の子どもってのは、全部で230万人いるんだ。
つまり、差し引き160万人の赤ん坊がまだ残ってんのよ。
一方で、子どもが最も多く生まれる30代の女性の就業率は、既婚と未婚をあわせて80%。どう考えても需要に追いついてないわな。
実際、保育園に入るのも大変なら公認ヌヌーさんを見つけるのも大変、という状況なのよ。
そこを下支えしているのが、非公認のヌヌーさんたちなわけだ。
彼女たちがいなけりゃ、誰が赤ん坊の世話を見るんだ、って話だからな。
とは言え、違法は違法。滞在や労働の許可がなければ、きちんとした会社には雇ってもらえない。
そんな人達ができる仕事ってのは限られてくる。それこそ皿洗いとか、単純な肉体労働なんかのキッツイ仕事よ。
ヌヌーはそんな数少ないうちの一つなんだな。
そうなのよ。
ヌヌーさんの仕事ってのは、決して楽じゃねえ。公認であろうとなかろうとな。
3歳までの赤ん坊と言えば、すぐ泣く、すぐ吐く、すぐ熱を出す。大小便は垂れ放題、火がついたように泣きやまないし、ふと目を離せばいなくなる。たまに静かにしてると思えばイタズラの真っ最中と、とにかく手間の掛かる時期だ。
日本でも育児疲れや育児ストレス、育児ノイローゼなんて言葉があるくらい、育児ってのは重労働だ。
誤解を恐れず、あえて言おう。
移民がする仕事ってのは、移民じゃなきゃしないような仕事なんだ。
そりゃ、オフィスでパンツスーツかなんか着てシャラッと働いてれば、カッコいいわな。
子育てときたらウンチとゲロまみれよ。
だが、子育て経験者はこんな風に言うぜ。だからこそ赤ちゃんが育つことには喜びがある、いちばん大切な時期を共有するから愛情も深まる、ってな。
あのな、はっきりさせておくが、番長は専業主婦を礼賛するつもりはねえよ。
とりわけ、子育て原理主義者って言うのかな、なんでもかんでも親が手ずからやんなきゃダメだっていう手合い、いるだろ? ああいうのと同列にはされたくないぜ。
働いている女性にしたところで、赤ん坊を預けるのはせいぜい10時間くらいのことだろ。あとの14時間は向きあわなきゃならねえんだ、程度の差でしかないさ。むしろ外の空気を吸った方が、育児ノイローゼなんかにならずにすむだろうよ。
一方で、事実は事実として冷静に受け止めなきゃな。
ごく客観的に見て、フランス女性は、育児の最もシンドイ部分を一部、下請けに出している。それは間違いないぜ。
そんな、フランス社会を下支えしていると言っても過言じゃねえヌヌーさんたちだが、子どもを預けている親たちからの評判はどんなもんだと思うよ?
これが、公認か非公認かに関わらず、おしなべてヒッジョーに悪いんだな。
子どもをきちんと見ていない。友人とのおしゃべりや長電話に興じている。子どもを公園で遊ばせず、乳母車に縛り付けている。遅刻をする。言い訳をしてサボる。おかしなアクセントのフランス語が子どもにうつってしまって困る。などなど、とにかく悪評プンプンなのよ。
そんなわけだから、いい人がどこかにいるはずよってんで、ヌヌーさんを取っ替え引っ替えするフランス人も少なくないんだぜ。
質には期待できないとわかっているのに、どうしたって赤ん坊は預けたいんだなあ。
いや、まいったね。
今後、「パリで働くママジェンヌ・キレイの秘密」みたいな記事を目にすることがあったらさ。
写真に写らないところで頑張っている、浅黒い肌のヌヌーさんにも思いをはせてやってくれよな。

(※)ヌヌーという語は政府非公認の場合に限定する使い方もある。
ヌヌーさんを巡る事情には、まいったね。
おいおい、誰だそのヌヌーさんってのは、というアンタの頭に浮かんだでっかいクエスチョンマークは、ひとまず預からせてもらおうじゃねえか。
おっと、フランス在住のアンタ。ネタバレ勘弁、おくちチャックで途中まではお付き合い願うぜ。
これまでにも書いてきたように、フランス人女性は出産後も仕事を続ける。育児休暇ものんびりとは取らず、だいたい産後3~6ヶ月くらいまでには仕事に戻る。
パリ市内に限って言うと、なんと4分の3が2ヶ月以内に復職。1年以上の育休をとる人は15%に過ぎないそうだ。
だが、幼稚園(=保育学校、エコール・マテルネル)に入れるのは3歳(一部は2歳)からだ。
もっとも手のかかる、目の離せない3年ほどの間、誰が赤ん坊の面倒をみるのか。
父ちゃんは普通働いてるわな。
爺ちゃんや婆ちゃんをあてにするのも難しい。フランスでは二世帯の同居は極めてまれだ。みんな大学生になるころには独立する。
それじゃ近所に住んでいればいいかと言えば、そうでもねえ。子育て経験から言っても頼みの綱は爺ちゃんより婆ちゃんだろうが、おっと、バーチャンなんて言ったら怒られるぜ。フランス女性は何歳になってもフランス女性だからな。なんでアタシが育児なんかしなきゃいけないのよ、ようやく自由を手に入れたっていうのに、くらいのことは言われるだろうよ。
じゃあ保育園に入れるかってことになるが。
どっこい、そうは問屋が卸さないのよ。考えることはみな同じらしくてな。
フランスの保育園は3歳までと決まっているんだが、希望者のおよそ1割しか入園できていないと言われているぜ。
ほかに一時託児所というのがあって、たとえば週に3日間午前中だけとか、限られた時間は面倒をみてくれる。
ただ、これじゃあフルタイムの勤務は到底無理だよな。
なんだよ、日本とそう状況は変わらないじゃねえかって?
待たせたな。
そこでお鉢が回ってくるのが、ヌヌーさんだぜ。
ヌリスという言い方もする。乳母という意味だ。行政用語的にはアシスタント・マテルネルと呼ぶ。ま、ひらたく言えばベビーシッターよ。
ちなみに、フランスではベビーシッターと言えば「夜間や土日に子どもを預かる人」を指し、学生がアルバイト的にこなすことが多い。
ヌヌーは「平日昼間に子どもを預かる人」だ。

(女性誌「Femme Actuelle」 のサイトより)
ヌヌーさんの多くは育児に一区切りの付いた女性で、その人の自宅で赤ん坊を預かってもらう。まだ子どものいない若い女性や、まれには男性の場合もあるがな。ヌヌーさんの家ではなく、自分の家を使ってもらうこともある。
保育園のように集団生活をするわけではないが、目はより届きやすい。親の都合に柔軟に対応してくれるし、長く付き合えば家族と同じように親身になってくれるのもいいよな。
保育園を整備するのは大変だ。建物をはじめとする施設も必要だし、ちゃんと資格のある保育士を揃えなきゃならねえ。
そこでフランス政府はヌヌーさんを増やした。
ちと古い資料で恐縮だが、日本の内閣府少子化対策推進室が2005年にまとめたところでは、パリに住む3歳未満の子どものうち、保育園に入っているのは20万人。ヌヌーさんに預けられているのは50万人で、その数なんと2.5倍だ。
日本にもこれに相当する保育ママという制度があるんだが、まだまだ普及していない。2009年6月の時点で、東京都内で保育ママに預けられている子どもはたったの1461人。ケタが2つ違う。
フランス女性が出産直後から仕事に復帰できるのは、間違いなくヌヌーさんたちのおかげだぜ。
素晴らしい制度じゃないか、日本にもすぐ導入しようって?
まあそういきり立ちなさんな。
ここまでは本を読むだけでも、お役所の報告書を読むだけでもわかる話。
ここからは、現地のことを知らないとわからない話だ。
アンタももし機会があったら、パリみたいな大都市の住宅地で、昼間に公園を覗いてみな。
赤ん坊を遊ばせてるヌヌーさんがたくさんベンチに座ってるぜ。
のどかな光景だよなあ。
もっとも、別のことにも気づくかもしれん。
遊んでる赤ん坊は白人だが、ヌヌーさんたちの多くはアフリカ系、アラブ系だってことだ。
モロッコ人やアルジェリア人、セネガル人にマリ人、はたまたフィリピン人……つまりは移民なんだな。
よく考えてみりゃ、当たり前だ。フランス人女性と聞いて我々の頭にパッと思い浮かぶような白人女性は、オフィスで働いてるわけだから。
そうなのよ。
移民の女性が、白人女性の育児を下請けしてんのよ。
さっき書いたとおり、アシスタント・マテルネルは政府公認だ。
国の認定を受けるってのはさぞかし大変なんだろうな、って思うだろ?
全然そんなことはないんだとさ。
日本の保育ママの場合、保育士、幼稚園教諭、看護師、助産師、保健師の資格のうち少なくとも一つを持っていることが要件とされている。
だが、アシスタント・マテルネルになるためには資格は必要ない。なぜこの仕事をしようと思ったのかを確認する簡単な面接があり、他人の赤ん坊をちゃんと受け入れられるようなところに住んでいるかのチェックがある。それで終わり。まず落ちることはないようだ。
合格通知を受け取ると、60時間の実習を経て、正式に認定される。
ゆえに移民系の人が多いわけだ。
少々のフランス語さえできれば、特別な技能や知識は必要ない、言ってみれば誰にでもできる仕事だからな。
それでいて、皿洗いよりはよっぽど文化的だ。
それだけじゃねえ。
傍目にはわからないが、実はヌヌーさんの大半は、政府非公認なのよ。
非公認のヌヌーさんにとって、公認といちばん違う点は何か。
待遇だ。
保育ママは正規の雇用だから、最低賃金の時給8.86ユーロ(1ユーロ125円換算で約1100円)が適用になるし、社会保険もバッチリだ。医療費なんかはほぼ100%カバーされる。つまりタダ。
一方で非公認ヌヌーさんの場合、賃金は安く買い叩かれる場合が多い。だいたい時給6ユーロ前後ってのが相場のようだ。雇い主によっぽど恵まれない限りは社会保険もない。病気にかかりでもしたら、民間の保険にでも入ってなきゃ莫大なカネを請求されるぜ。
ずいぶんと差があるだろ。
だとすれば、非公認なんて地位に甘んじず、保育ママになった方がいいじゃねえか、なあ。
なかには幸運な例外もいる。政府公認でなくても、裕福な家庭で合法的に雇われている優秀なヌヌーさんは存在する。
だが、たいていの非公認ヌヌーさんは、どうにもならない事情を抱えてるのよ。
正規のフランス滞在許可を持ってなかったり、ビザはあっても労働の許可が下りてなかったりするんだな。
つまり非合法だ。
政府の公認なんざ受けられるわけがないってわけだ。
もっとも、日本で言う不法滞在のイメージとは違い、彼女たちは比較的寛容に見られている雰囲気を感じるぜ。
なんと言っても、社会で必要とされてるからだ。
さっき、日本の内閣府少子化対策推進室の資料を引用したよな。2005年のヤツ。パリの3歳未満の子どもの20万人が保育園、50万人がヌヌーさん預かりだと。
このときのパリに3歳未満の子どもってのは、全部で230万人いるんだ。
つまり、差し引き160万人の赤ん坊がまだ残ってんのよ。
一方で、子どもが最も多く生まれる30代の女性の就業率は、既婚と未婚をあわせて80%。どう考えても需要に追いついてないわな。
実際、保育園に入るのも大変なら公認ヌヌーさんを見つけるのも大変、という状況なのよ。
そこを下支えしているのが、非公認のヌヌーさんたちなわけだ。
彼女たちがいなけりゃ、誰が赤ん坊の世話を見るんだ、って話だからな。
とは言え、違法は違法。滞在や労働の許可がなければ、きちんとした会社には雇ってもらえない。
そんな人達ができる仕事ってのは限られてくる。それこそ皿洗いとか、単純な肉体労働なんかのキッツイ仕事よ。
ヌヌーはそんな数少ないうちの一つなんだな。
そうなのよ。
ヌヌーさんの仕事ってのは、決して楽じゃねえ。公認であろうとなかろうとな。
3歳までの赤ん坊と言えば、すぐ泣く、すぐ吐く、すぐ熱を出す。大小便は垂れ放題、火がついたように泣きやまないし、ふと目を離せばいなくなる。たまに静かにしてると思えばイタズラの真っ最中と、とにかく手間の掛かる時期だ。
日本でも育児疲れや育児ストレス、育児ノイローゼなんて言葉があるくらい、育児ってのは重労働だ。
誤解を恐れず、あえて言おう。
移民がする仕事ってのは、移民じゃなきゃしないような仕事なんだ。
そりゃ、オフィスでパンツスーツかなんか着てシャラッと働いてれば、カッコいいわな。
子育てときたらウンチとゲロまみれよ。
だが、子育て経験者はこんな風に言うぜ。だからこそ赤ちゃんが育つことには喜びがある、いちばん大切な時期を共有するから愛情も深まる、ってな。
あのな、はっきりさせておくが、番長は専業主婦を礼賛するつもりはねえよ。
とりわけ、子育て原理主義者って言うのかな、なんでもかんでも親が手ずからやんなきゃダメだっていう手合い、いるだろ? ああいうのと同列にはされたくないぜ。
働いている女性にしたところで、赤ん坊を預けるのはせいぜい10時間くらいのことだろ。あとの14時間は向きあわなきゃならねえんだ、程度の差でしかないさ。むしろ外の空気を吸った方が、育児ノイローゼなんかにならずにすむだろうよ。
一方で、事実は事実として冷静に受け止めなきゃな。
ごく客観的に見て、フランス女性は、育児の最もシンドイ部分を一部、下請けに出している。それは間違いないぜ。
そんな、フランス社会を下支えしていると言っても過言じゃねえヌヌーさんたちだが、子どもを預けている親たちからの評判はどんなもんだと思うよ?
これが、公認か非公認かに関わらず、おしなべてヒッジョーに悪いんだな。
子どもをきちんと見ていない。友人とのおしゃべりや長電話に興じている。子どもを公園で遊ばせず、乳母車に縛り付けている。遅刻をする。言い訳をしてサボる。おかしなアクセントのフランス語が子どもにうつってしまって困る。などなど、とにかく悪評プンプンなのよ。
そんなわけだから、いい人がどこかにいるはずよってんで、ヌヌーさんを取っ替え引っ替えするフランス人も少なくないんだぜ。
質には期待できないとわかっているのに、どうしたって赤ん坊は預けたいんだなあ。
いや、まいったね。
今後、「パリで働くママジェンヌ・キレイの秘密」みたいな記事を目にすることがあったらさ。
写真に写らないところで頑張っている、浅黒い肌のヌヌーさんにも思いをはせてやってくれよな。

(※)ヌヌーという語は政府非公認の場合に限定する使い方もある。
2010.02.23 (Tue)
台所洗剤のラベルが……
まいったね。
フランスの台所洗剤には、まいったね。

家庭では料理をあんまりしないんじゃないか疑惑が浮上しているフランス人だが、
このとおり、スーパーには各種の台所洗剤が売っている。

おもしろいことに、そのラベルがほとんど必ずと言っていいほど、ピッカピカになったワイングラスなのよ。
こんなところにもお国柄ってのは反映されるんだな。

ほれ、こっちも。
ひょっとしてワイングラス以外は洗わないってんじゃねえだろうな。

ピッカピカなのはいいが。
写真左側のにいたっては、ついに後光を放ち出しちまったぜ。
ちょっとやりすぎじゃないかい?
