2010年02月 / 01月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728≫03月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ   にほんブログ村 外国語ブログ フランス語へ  ← クリックしてもらえりゃありがたいぜ。

人気ブログランキングへ   パリ生活情報   blogram投票ボタン

--:--  |  スポンサー広告  |  編集  |  上へ↑

2010.02.25 (Thu)

子育ては人任せ! ヌヌヌのヌヌーさん事情

 まいったね。
 ヌヌーさんを巡る事情には、まいったね。


 おいおい、誰だそのヌヌーさんってのは、というアンタの頭に浮かんだでっかいクエスチョンマークは、ひとまず預からせてもらおうじゃねえか。
 おっと、フランス在住のアンタ。ネタバレ勘弁、おくちチャックで途中まではお付き合い願うぜ。


 これまでにも書いてきたように、フランス人女性は出産後も仕事を続ける。育児休暇ものんびりとは取らず、だいたい産後3~6ヶ月くらいまでには仕事に戻る。
 パリ市内に限って言うと、なんと4分の3が2ヶ月以内に復職。1年以上の育休をとる人は15%に過ぎないそうだ。

 だが、幼稚園(=保育学校、エコール・マテルネル)に入れるのは3歳(一部は2歳)からだ。
 もっとも手のかかる、目の離せない3年ほどの間、誰が赤ん坊の面倒をみるのか。

 父ちゃんは普通働いてるわな。
 爺ちゃんや婆ちゃんをあてにするのも難しい。フランスでは二世帯の同居は極めてまれだ。みんな大学生になるころには独立する。
 それじゃ近所に住んでいればいいかと言えば、そうでもねえ。子育て経験から言っても頼みの綱は爺ちゃんより婆ちゃんだろうが、おっと、バーチャンなんて言ったら怒られるぜ。フランス女性は何歳になってもフランス女性だからな。なんでアタシが育児なんかしなきゃいけないのよ、ようやく自由を手に入れたっていうのに、くらいのことは言われるだろうよ。


 じゃあ保育園に入れるかってことになるが。
 どっこい、そうは問屋が卸さないのよ。考えることはみな同じらしくてな。
 フランスの保育園は3歳までと決まっているんだが、希望者のおよそ1割しか入園できていないと言われているぜ。

 ほかに一時託児所というのがあって、たとえば週に3日間午前中だけとか、限られた時間は面倒をみてくれる。
 ただ、これじゃあフルタイムの勤務は到底無理だよな。


 なんだよ、日本とそう状況は変わらないじゃねえかって?
 待たせたな。
 そこでお鉢が回ってくるのが、ヌヌーさんだぜ。
 ヌリスという言い方もする。乳母という意味だ。行政用語的にはアシスタント・マテルネルと呼ぶ。ま、ひらたく言えばベビーシッターよ。

 ちなみに、フランスではベビーシッターと言えば「夜間や土日に子どもを預かる人」を指し、学生がアルバイト的にこなすことが多い。
 ヌヌーは「平日昼間に子どもを預かる人」だ。



nounou.jpg
女性誌「Femme Actuelle」 のサイトより)



 ヌヌーさんの多くは育児に一区切りの付いた女性で、その人の自宅で赤ん坊を預かってもらう。まだ子どものいない若い女性や、まれには男性の場合もあるがな。ヌヌーさんの家ではなく、自分の家を使ってもらうこともある。
 保育園のように集団生活をするわけではないが、目はより届きやすい。親の都合に柔軟に対応してくれるし、長く付き合えば家族と同じように親身になってくれるのもいいよな。

 保育園を整備するのは大変だ。建物をはじめとする施設も必要だし、ちゃんと資格のある保育士を揃えなきゃならねえ。
 そこでフランス政府はヌヌーさんを増やした。
 ちと古い資料で恐縮だが、日本の内閣府少子化対策推進室が2005年にまとめたところでは、パリに住む3歳未満の子どものうち、保育園に入っているのは20万人。ヌヌーさんに預けられているのは50万人で、その数なんと2.5倍だ。
 日本にもこれに相当する保育ママという制度があるんだが、まだまだ普及していない。2009年6月の時点で、東京都内で保育ママに預けられている子どもはたったの1461人。ケタが2つ違う。
 フランス女性が出産直後から仕事に復帰できるのは、間違いなくヌヌーさんたちのおかげだぜ。


 素晴らしい制度じゃないか、日本にもすぐ導入しようって?
 まあそういきり立ちなさんな。

 ここまでは本を読むだけでも、お役所の報告書を読むだけでもわかる話。
 ここからは、現地のことを知らないとわからない話だ。

 アンタももし機会があったら、パリみたいな大都市の住宅地で、昼間に公園を覗いてみな。
 赤ん坊を遊ばせてるヌヌーさんがたくさんベンチに座ってるぜ。
 のどかな光景だよなあ。

 もっとも、別のことにも気づくかもしれん。
 遊んでる赤ん坊は白人だが、ヌヌーさんたちの多くはアフリカ系、アラブ系だってことだ。
 モロッコ人やアルジェリア人、セネガル人にマリ人、はたまたフィリピン人……つまりは移民なんだな。


 よく考えてみりゃ、当たり前だ。フランス人女性と聞いて我々の頭にパッと思い浮かぶような白人女性は、オフィスで働いてるわけだから。
 そうなのよ。
 移民の女性が、白人女性の育児を下請けしてんのよ。

 さっき書いたとおり、アシスタント・マテルネルは政府公認だ。
 国の認定を受けるってのはさぞかし大変なんだろうな、って思うだろ?
 全然そんなことはないんだとさ。

 日本の保育ママの場合、保育士、幼稚園教諭、看護師、助産師、保健師の資格のうち少なくとも一つを持っていることが要件とされている。
 だが、アシスタント・マテルネルになるためには資格は必要ない。なぜこの仕事をしようと思ったのかを確認する簡単な面接があり、他人の赤ん坊をちゃんと受け入れられるようなところに住んでいるかのチェックがある。それで終わり。まず落ちることはないようだ。
 合格通知を受け取ると、60時間の実習を経て、正式に認定される。


 ゆえに移民系の人が多いわけだ。
 少々のフランス語さえできれば、特別な技能や知識は必要ない、言ってみれば誰にでもできる仕事だからな。
 それでいて、皿洗いよりはよっぽど文化的だ。


 それだけじゃねえ。
 傍目にはわからないが、実はヌヌーさんの大半は、政府非公認なのよ。


 非公認のヌヌーさんにとって、公認といちばん違う点は何か。
 待遇だ。
 保育ママは正規の雇用だから、最低賃金の時給8.86ユーロ(1ユーロ125円換算で約1100円)が適用になるし、社会保険もバッチリだ。医療費なんかはほぼ100%カバーされる。つまりタダ。
 一方で非公認ヌヌーさんの場合、賃金は安く買い叩かれる場合が多い。だいたい時給6ユーロ前後ってのが相場のようだ。雇い主によっぽど恵まれない限りは社会保険もない。病気にかかりでもしたら、民間の保険にでも入ってなきゃ莫大なカネを請求されるぜ。

 ずいぶんと差があるだろ。
 だとすれば、非公認なんて地位に甘んじず、保育ママになった方がいいじゃねえか、なあ。

 なかには幸運な例外もいる。政府公認でなくても、裕福な家庭で合法的に雇われている優秀なヌヌーさんは存在する。
 だが、たいていの非公認ヌヌーさんは、どうにもならない事情を抱えてるのよ。
 正規のフランス滞在許可を持ってなかったり、ビザはあっても労働の許可が下りてなかったりするんだな。
 つまり非合法だ。
 政府の公認なんざ受けられるわけがないってわけだ。


 もっとも、日本で言う不法滞在のイメージとは違い、彼女たちは比較的寛容に見られている雰囲気を感じるぜ。
 なんと言っても、社会で必要とされてるからだ。

 さっき、日本の内閣府少子化対策推進室の資料を引用したよな。2005年のヤツ。パリの3歳未満の子どもの20万人が保育園、50万人がヌヌーさん預かりだと。
 このときのパリに3歳未満の子どもってのは、全部で230万人いるんだ。
 つまり、差し引き160万人の赤ん坊がまだ残ってんのよ。

 一方で、子どもが最も多く生まれる30代の女性の就業率は、既婚と未婚をあわせて80%。どう考えても需要に追いついてないわな。
 実際、保育園に入るのも大変なら公認ヌヌーさんを見つけるのも大変、という状況なのよ。
 そこを下支えしているのが、非公認のヌヌーさんたちなわけだ。
 彼女たちがいなけりゃ、誰が赤ん坊の世話を見るんだ、って話だからな。


 とは言え、違法は違法。滞在や労働の許可がなければ、きちんとした会社には雇ってもらえない。
 そんな人達ができる仕事ってのは限られてくる。それこそ皿洗いとか、単純な肉体労働なんかのキッツイ仕事よ。
 ヌヌーはそんな数少ないうちの一つなんだな。


 そうなのよ。
 ヌヌーさんの仕事ってのは、決して楽じゃねえ。公認であろうとなかろうとな。
 3歳までの赤ん坊と言えば、すぐ泣く、すぐ吐く、すぐ熱を出す。大小便は垂れ放題、火がついたように泣きやまないし、ふと目を離せばいなくなる。たまに静かにしてると思えばイタズラの真っ最中と、とにかく手間の掛かる時期だ。
 日本でも育児疲れや育児ストレス、育児ノイローゼなんて言葉があるくらい、育児ってのは重労働だ。

 誤解を恐れず、あえて言おう。
 移民がする仕事ってのは、移民じゃなきゃしないような仕事なんだ。

 そりゃ、オフィスでパンツスーツかなんか着てシャラッと働いてれば、カッコいいわな。
 子育てときたらウンチとゲロまみれよ。
 だが、子育て経験者はこんな風に言うぜ。だからこそ赤ちゃんが育つことには喜びがある、いちばん大切な時期を共有するから愛情も深まる、ってな。


 あのな、はっきりさせておくが、番長は専業主婦を礼賛するつもりはねえよ。
 とりわけ、子育て原理主義者って言うのかな、なんでもかんでも親が手ずからやんなきゃダメだっていう手合い、いるだろ? ああいうのと同列にはされたくないぜ。
 働いている女性にしたところで、赤ん坊を預けるのはせいぜい10時間くらいのことだろ。あとの14時間は向きあわなきゃならねえんだ、程度の差でしかないさ。むしろ外の空気を吸った方が、育児ノイローゼなんかにならずにすむだろうよ。

 一方で、事実は事実として冷静に受け止めなきゃな。
 ごく客観的に見て、フランス女性は、育児の最もシンドイ部分を一部、下請けに出している。それは間違いないぜ。


 そんな、フランス社会を下支えしていると言っても過言じゃねえヌヌーさんたちだが、子どもを預けている親たちからの評判はどんなもんだと思うよ?
 これが、公認か非公認かに関わらず、おしなべてヒッジョーに悪いんだな。
 子どもをきちんと見ていない。友人とのおしゃべりや長電話に興じている。子どもを公園で遊ばせず、乳母車に縛り付けている。遅刻をする。言い訳をしてサボる。おかしなアクセントのフランス語が子どもにうつってしまって困る。などなど、とにかく悪評プンプンなのよ。
 そんなわけだから、いい人がどこかにいるはずよってんで、ヌヌーさんを取っ替え引っ替えするフランス人も少なくないんだぜ。
 質には期待できないとわかっているのに、どうしたって赤ん坊は預けたいんだなあ。


 いや、まいったね。
 今後、「パリで働くママジェンヌ・キレイの秘密」みたいな記事を目にすることがあったらさ。
 写真に写らないところで頑張っている、浅黒い肌のヌヌーさんにも思いをはせてやってくれよな。




bancho200.gif



(※)ヌヌーという語は政府非公認の場合に限定する使い方もある。
スポンサーサイト

にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ   にほんブログ村 外国語ブログ フランス語へ  ← クリックしてもらえりゃありがたいぜ。

人気ブログランキングへ   パリ生活情報   blogram投票ボタン

テーマ : フランス ジャンル : 海外情報

10:43  |  俺節フランス  |  トラックバック(0)  |  コメント(27)  |  編集  |  上へ↑
 | BLOGTOP | 
ブログパーツ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。