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2010.03.29 (Mon)

なんか違うぜ、日仏のミシュラン・ガイド

 まいったね。
 ミシュラン・ガイドの違いには、まいったね。


 フランスに対して、グルメの国だという印象を持ってる人は多いんじゃないかな。
 なんたってフランス料理と言えば、世界三大料理にも数えられるほどだ。ソースを駆使した料理法は、ただ味がいいというばかりじゃねえ。難度が高いことでも知られている。
 日本からも修行に来るシェフが絶えねえよな。いや、日本に限らねえ。料理専門学校のル・コルドン・ブルーなんかは世界中から学生を集めてるぜ。

 ヨーロッパではそれぞれの国に固有の食文化があるが、ごく客観的に言って、フランスほどの高みに達しているところとなると他にはないだろう。イギリスは問題外として、ドイツの料理はブルスト(ソーセージ)だシュニッツェル(カツ)だとうまいはうまいんだが、もひとつ洗練されてはいねえ印象。オランダでいちばんイケるのは旧植民地インドネシアの料理だし、スイスと言っても毎日チーズフォンデュを食うわけにゃいくまい。
 となれば残すは南欧諸国。番長は正直言って、イタリアやスペイン料理の方が好きだ。
 ところが、気位の高いフランス人シェフに言わせると「イタリア料理なんてのは家庭料理に過ぎないよ」ってなことになる。ずいぶんお高くとまっちゃいるが、確かにフランス料理の方が手は込んでるよな。で、スペインは連中にとっちゃヨーロッパじゃねえ。ピレネーの向こうはアフリカと言ってな。

 ま、それはそれとして、同じヨーロッパの連中から見ても、フランス料理ってのは一目置かれる存在ではあるようだ。
 フランスは世界で最も多くの観光客を集める国なんだそうだが、エッフェル塔や凱旋門、あるいはルーブル美術館といったスポットばかりでなく、食を目当てに来る人も相当数に上るようだ。


 そんなフランスのグルメ大国としての名声を確かなものにしているのが、ミシュラン・ガイドだってことに、異論はねえんじゃないかな。



ミシュランガイド東京 2010 日本語版 (MICHELIN GUIDE TOKYO 2010 Japanese)ミシュランガイド東京 2010 日本語版 (MICHELIN GUIDE TOKYO 2010 Japanese)
(2009/11/20)
不明

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 説明するまでもねえだろう、価値あるレストランを三つまでの星で格付けする例の冊子だ。
 2007年に欧米以外では初めてとなる東京版、09年には京都・大阪版も出版された。特に東京はパリよりも星付きレストランの数が最初から多く、2010年版ではついに3つ星レストランの数でもパリを上回り、大きな話題を集めたよな。日本の外食レベルはやはり世界最高だったと溜飲を下げた関係者も多かったようだが、フランス人なんぞに和食がわかるのかという批判もあった。

 そのミシュランガイドだが、フランス版と日本版では内容が違うことを、アンタはご存じかな?
 日本版のミシュランは1店あたり2ページを使い、全編カラーページ。お店の内装写真がばっちりキレイに掲載されていて、雰囲気がわかりやすい。どんな料理を出すのかを紹介する文章も丁寧だ。

 そこへ行くとフランスのミシュランガイドは、辞書のような風情だ。写真はまったく載っていない。店名と開店時間や時期(フランスはレストランもたっぷりバカンスを取るからな)、平均的な料金など必要最低限のデータしか書かれておらず、紹介する文章もほとんどは2、3行だ。
 ただし、かなり網羅的になっている。レストランごとにページ構成がされている東京版と違い、フランス版は町(都市)が一つのくくりになっている。Aで始まる町名からアルファベット順。で、各町ごとに主立ったレストランがズラっとまとめて書かれているという寸法だ。店の場所を記した地図も町ごとにつくられている。
 そんなつくりだから、片手じゃ持てないほど分厚い。


 なに、番長そいつは比較対象が違うんじゃねえかと。その辞書みたいなヤツは「フランス版」なんだから、比べるとしたらまだ存在しないけど「日本版」じゃなきゃおかしい。「東京版」と比べるなら「パリ版」じゃねえのかと。
 アンタ詳しいな。まったくその通りだ。

 説明しよう。ミシュランの赤いガイドには、国版と都市版がある。前者は「イタリア」「ドイツ」「オランダ」など、後者は「ニューヨーク」「ロンドン」「パリ」といった具合だな。
 もし今後「ミシュランガイド・ジャポン」ができたら、それは辞書風のレイアウトになってるのかもしれねえ。

 とは言え、都市版でもやっぱり、日本のは異色だぜ。
 他の都市版は、1ページにつき2つの店を載せる場合がほとんど。星をとったレストランなど、1ページぶち抜きで掲載している場合もあるが、数は少ない。東京版が一つの店にたっぷり2ページを必ず割いているのに比べると、ずいぶんとせせこましい印象だ。


 ここで、2010年版の星付きレストランの数を比較してみようか。


パリ版: 3つ星…10軒 2つ星…13軒 1つ星…41軒 計64軒

東京版: 3つ星…11軒 2つ星…42軒 1つ星…144軒 計197軒



 ごらんの通り、3つ星レストランの数こそ大して違わないが、2つ星と1つ星はそれぞれ東京の方が3倍近く多くなっている。

 ますます疑問だよな。パリ版って30~40ページ程度のぺらっぺらな本なのか?
 いいや。本の厚みは東京版と比べても遜色ねえぜ。

 なにが違うのか。
 パリ版には、というか東京と京都・大阪版以外のミシュランガイドには、星の付けられていないレストランがたくさん載ってるのよ。
 星付きレストランのみで本をつくっているのは、日本だけだ。


 良い言い方をすれば、東京版は星付きのレストランだけで冊子を成立させるだけの数があるということだ。
 それにしても、なんでそんなに数が違うのか?

 理由の一つは明確だ。東京の方が圧倒的にレストランの総数が多いのよ。
 アメリカの日刊紙ニューヨーク・タイムズがミシュラン社の話として報じたところによると、ミシュランの評価対象になるようなレストランが東京に16万軒あるのに対し、パリには1万3000軒しかないそうだ。なんと12倍超の差よ。
 そりゃ都市圏人口で比べても東京はパリの3倍くらいあるが、それでも多いよなあ。星付きだって多いわけだ。


 ただ、もう一つ別の理由があるような気がするんだよな。
 さっき書いたように、ミシュランのパリ版には基本的に1ページ2店の割合で店が紹介されている。対して、東京版は2ページで1店。ということは、ざっくり言って、パリ版は東京版に比べて4倍の密度の情報が掲載されているということだ。

 ミシュランの東京版がはじめて出たときの報道によると、東京版のための調査は出版に先立つこと1年半前から始められた。調査員は全5人で、ヨーロッパ人3人、日本人2人の混成チームだった。
 で、東京はあまりにレストランの数が多いんで、あらかじめ名の知れたレストランを抽出してリスト化したっていうんだな。その数約1300店。そこから計150店のレストランに星を付け、掲載したんだそうだ。
 これ、もし星なしも含めて4倍の情報を載せようと思えば、600店を載せなきゃならねえことになる。となれば最初の1300店のうち、2つに1つは掲載されるってことだよなあ。そいつはミシュランのプライドが許さなかったんだろう。

 意地悪な見方をすれば、だ。4倍の数の店を調べるには4倍の費用がかかる。少ないコストでたくさん本を売るのが、経営者としてはいちばん儲けが出るやり方だ。だったら知名度の高いレストランをそれなりに取り上げて体裁を取り繕っておくのが一番楽だよな。
 だってだぜ。初めての東京版は「2008年版」だ。現時点で既に「2010年版」が出ている。ってことは最初の出版から丸2年が過ぎたわけだろ。ハナっから完璧なものを求めるのはちと酷だろうが、しかし2年もあればだいぶ調査店を増やすことができそうだよな。
 実際、1つ星以上のレストランの数は年々増えている。08年版で150店だったのが09年版では173店、10年版では197店になった。
 ところが編集方針は変わらず、無印店は相変わらず影も形もない。東京版には相変わらず密度の薄い情報しか載ってねえんだ。つまり、東京版はもう星付きしか載せないと決めてかかってるんだな。
 どうも妙じゃねえか。ミシュランは評価の基準は世界共通ってのを売りにしてるんだから、さっさとレイアウトを1ページあたり2店に変更して、無印店も載せて、欧米と同じスタイルにしろってのよ。
 余計なカネがかかるからやってないだけなんじゃねえのかい?

 もっとも、ミシュランは公的機関じゃあない。単なる一企業、タイヤ会社だ。利益を追求するのは、当たり前田のセサミハイチってヤツだがな。
 日本だけ特別ってのが、どうも番長は気に入らないぜ。


 ところでよ。
 東京にはパリの12倍の数のレストランがあるんだよな。
 だとしたら、3つ星レストランの数がパリより1つしか多くないってのは問題なんじゃねえか?
 2つ星と1つ星も、3倍程度じゃまずいんじゃねえか?
 そんなことで、世界に冠たるグルメシティとか言ってたら、フランス人にせせら笑われちまうのがオチだぜ。 


 いや、まいったね。
 フランス人は、食えねえな!




bancho200.gif



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