2010.04.18 (Sun)
風呂ギライにも歴史アリだぜ
まいったね。
フランス人の風呂ギライには、まいったね。
はっきり言おう。フランス人は不潔だ。
そう言って悪けりゃ、衛生感覚が日本人と違う。
この写真を見てほしい。映画館のシートを撮ったものだ。このときは土曜の午前中にシネコンへ行ったんだが、まあガラッガラでね。

ちとくたびれてるな。まあ、座るところがボロいのはご愛敬としても、だ。
ちょいと後ろ側から回り込んで見てくれねえか。

なんで背もたれの角がすり切れてんだ?
ひょっとして、足を投げ出して乗っけてるからじゃねえか。
その乗っけてる足には靴をはいてるんだよな。
その靴で犬のフンを踏んづけてるわけだよな。
オイオイ、冗談じゃねえぜ!
家に上がっても靴を脱がないのは文化の違い。わかっちゃいるんだが、こういう光景を目にする度に、単に無神経なだけなんじゃねえか、と思わずにいられねえのよ。
ほかにも、これは番長が下宿をしていたころの話。洗濯機は大家のマダムと共用で、自由に使っていいと言われていた。別にマダムがことさら親切だってんじゃねえぜ。そういう契約になってたってだけだ。
でまあ、同じ洗濯機を使って、同じ物干しをシェアしてるんだから、わかるよな。明らかにマダムの洗濯は頻度が低いし、洗濯物の量も少ない。
そりゃフランスは乾燥してるからそう汗をかくこともないが、肌着くらいはやっぱり毎日変えるだろうよ。どう考えてもそういう量じゃねえんだ。
ある日とうとう言われたぜ。「アナタ洗濯しすぎじゃない? 洗濯した肌着って、かえって肌に悪いのよ」って。大まじめな顔でな。
それと、洗濯物が雨で濡れても平気だってのにも驚いたな。どっかへ外出してりゃ別だが、家にいるときに雨が降ってきたら、洗濯物は室内へ取り込むだろうよ。放りっぱなしなのよ。で、明日晴れたら乾くからいいわ、だって。
繰り返そう。フランス人の衛生感覚は、日本より劣ってるぜ。
しかし、だからと言って、あーフランス人ってのは不潔だなあクサイなあというステレオタイプにも、番長には違和感があるのよ。
と言うのもだ。その不潔さが、歴史に根差しているとしたらどうだい。
端的にそれを現してるのが、風呂に対する向き合い方よ。
日本では、湯船にゆったり浸かる時間ってのは、多くの人にとって1日のうちで最もリラックスできる至福の時、だよな。
フランス人にとっちゃ、さっさと終わらせたい、どっちかと言えばムダな時間らしい。
まず、夜帰宅したら風呂に入って汗を流す、って習慣がない。じゃあいつ入るかっていうと、朝。もちろん個人差はあるが、朝シャワーを浴びて会社や学校に出るというのが、どうも一般的なようだ。
で、入る時間が短い! 日本じゃカラスの行水という言い方をするが、まさにそんな感じだ。石鹸をちょいちょいと体にこすりつけて、流して、終わりよ。
決して極端な風呂好きってわけじゃなくても、日本人なら「随分長いことお風呂に入ってるねえ」なんて言われるのが定石だぜ。で、その後に来る言葉も相場が決まってる。「あんまり洗いすぎると体によくないよ」「水道代がモッタイナイだろ」ってね。
どちらもお説ごもっともで、韓国アカスリみたいなのを毎日ゴシゴシとやるのはむしろ肌を痛めるそうだし、フランスとりわけパリってのはもともと水源に恵まれていなかったようだから、そりゃむべなるかなってな話ではあるんだが。
ちなみにフランスにもちゃんと浴槽ってのは存在する。ベニョワールっていうんだが、名は体を表すというか、ベニョっとしたヤワな感じの浴槽が多くてね。とても日本みたいに深々とお湯を貯めて楽しむ気にはなれねえぜ。
温泉も存在するが、浸かるのは医療として湯治に来る客だけでね。フランスでは温泉っていうと飲んで薬にするものなのよ。
日本人は好んで風呂に入るが、フランス人にとって入浴ってのは、入らずにすむならそうしたいけどそれも不衛生だからイヤイヤ入る、くらいの位置づけのようだ。
たとえば歯みがきみたいなもんだ。面倒くさいけど磨かなきゃいけないから磨く、って感じなんだな。あるいは化粧やメイク落としとかな。
風呂にはいるのを面倒くさがる人、日本人にもたまにいるよな。ただ、風呂好きの方が圧倒的に数が多い。フランスの場合、その人数比率がすっぽり入れ替わってると思ってくれりゃあいいだろう。
このフランス人の性質ってのが、どうやら相当根深い話らしいんだな。
パリのメトロにパスツールって名の駅がある。「近代細菌学の開祖」ことパスツール先生から取った駅名なんだが、この駅には1930年に公衆衛生キャンペーンがされたときのポスターが貼ってあってな。
「食事の前には手を洗おう」とか、「つばを吐いてはいけません」とか書いてあるんだが、中に「週1回はお風呂に入りましょう」ってのもあるのよ。
そうよ、当時のフランス人は、週に1回を目標に据えなきゃなんねえほど、風呂に入ってなかったのよ。
アンタ、ルイ14世って知ってるかい。
1638年生まれで1715年没。太陽王の異名を取る、ブルボン王朝で最も権勢を誇った王だ。かのヴェルサイユ宮殿をつくった人として有名だな。
この人、なんと人生に2回こっきりしか風呂に入らなかったと言われている。
なぜか。なんでも当時のフランスでは、体臭がするというのは体の各器官が元気に動いていることの証明、すなわち健康のあかしであると思われてたんだそうだ。垢なんてのも生命力のバロメーターってわけよ。
それをこそぎ落とし、流しちまうような行為、すなわち風呂に入るなんてことは、体に悪いと信じられていたんだな。
どうだい、話が見えてきただろ。
約300年前のこととは言え、当時江戸時代を迎えていた日本では、既に銭湯があまねく普及していたってよ。
そりゃ日仏で風呂に対する考え方に違いもあるわけだよな。
パスツールから80年、さすがに現在では週に1回しか風呂に入らないフランス人ってのはそうザラにはいないようだが、きちんと体全体を丁寧に洗うのは日曜日だけ、ってな手合いは多いぜ。
いや、まいったね。
どうもフランス人には、いまだに体臭をイイものだと思ってるんじゃねえかな、ってフシがある。体臭はセクシーだ、チーズだってクサイ方がウマイ、みたいな。
太陽王の時代の血がいまだ脈々と受け継がれてる、ってことなのかもな。

フランス人の風呂ギライには、まいったね。
はっきり言おう。フランス人は不潔だ。
そう言って悪けりゃ、衛生感覚が日本人と違う。
この写真を見てほしい。映画館のシートを撮ったものだ。このときは土曜の午前中にシネコンへ行ったんだが、まあガラッガラでね。

ちとくたびれてるな。まあ、座るところがボロいのはご愛敬としても、だ。
ちょいと後ろ側から回り込んで見てくれねえか。

なんで背もたれの角がすり切れてんだ?
ひょっとして、足を投げ出して乗っけてるからじゃねえか。
その乗っけてる足には靴をはいてるんだよな。
その靴で犬のフンを踏んづけてるわけだよな。
オイオイ、冗談じゃねえぜ!
家に上がっても靴を脱がないのは文化の違い。わかっちゃいるんだが、こういう光景を目にする度に、単に無神経なだけなんじゃねえか、と思わずにいられねえのよ。
ほかにも、これは番長が下宿をしていたころの話。洗濯機は大家のマダムと共用で、自由に使っていいと言われていた。別にマダムがことさら親切だってんじゃねえぜ。そういう契約になってたってだけだ。
でまあ、同じ洗濯機を使って、同じ物干しをシェアしてるんだから、わかるよな。明らかにマダムの洗濯は頻度が低いし、洗濯物の量も少ない。
そりゃフランスは乾燥してるからそう汗をかくこともないが、肌着くらいはやっぱり毎日変えるだろうよ。どう考えてもそういう量じゃねえんだ。
ある日とうとう言われたぜ。「アナタ洗濯しすぎじゃない? 洗濯した肌着って、かえって肌に悪いのよ」って。大まじめな顔でな。
それと、洗濯物が雨で濡れても平気だってのにも驚いたな。どっかへ外出してりゃ別だが、家にいるときに雨が降ってきたら、洗濯物は室内へ取り込むだろうよ。放りっぱなしなのよ。で、明日晴れたら乾くからいいわ、だって。
繰り返そう。フランス人の衛生感覚は、日本より劣ってるぜ。
しかし、だからと言って、あーフランス人ってのは不潔だなあクサイなあというステレオタイプにも、番長には違和感があるのよ。
と言うのもだ。その不潔さが、歴史に根差しているとしたらどうだい。
端的にそれを現してるのが、風呂に対する向き合い方よ。
日本では、湯船にゆったり浸かる時間ってのは、多くの人にとって1日のうちで最もリラックスできる至福の時、だよな。
フランス人にとっちゃ、さっさと終わらせたい、どっちかと言えばムダな時間らしい。
まず、夜帰宅したら風呂に入って汗を流す、って習慣がない。じゃあいつ入るかっていうと、朝。もちろん個人差はあるが、朝シャワーを浴びて会社や学校に出るというのが、どうも一般的なようだ。
で、入る時間が短い! 日本じゃカラスの行水という言い方をするが、まさにそんな感じだ。石鹸をちょいちょいと体にこすりつけて、流して、終わりよ。
決して極端な風呂好きってわけじゃなくても、日本人なら「随分長いことお風呂に入ってるねえ」なんて言われるのが定石だぜ。で、その後に来る言葉も相場が決まってる。「あんまり洗いすぎると体によくないよ」「水道代がモッタイナイだろ」ってね。
どちらもお説ごもっともで、韓国アカスリみたいなのを毎日ゴシゴシとやるのはむしろ肌を痛めるそうだし、フランスとりわけパリってのはもともと水源に恵まれていなかったようだから、そりゃむべなるかなってな話ではあるんだが。
ちなみにフランスにもちゃんと浴槽ってのは存在する。ベニョワールっていうんだが、名は体を表すというか、ベニョっとしたヤワな感じの浴槽が多くてね。とても日本みたいに深々とお湯を貯めて楽しむ気にはなれねえぜ。
温泉も存在するが、浸かるのは医療として湯治に来る客だけでね。フランスでは温泉っていうと飲んで薬にするものなのよ。
日本人は好んで風呂に入るが、フランス人にとって入浴ってのは、入らずにすむならそうしたいけどそれも不衛生だからイヤイヤ入る、くらいの位置づけのようだ。
たとえば歯みがきみたいなもんだ。面倒くさいけど磨かなきゃいけないから磨く、って感じなんだな。あるいは化粧やメイク落としとかな。
風呂にはいるのを面倒くさがる人、日本人にもたまにいるよな。ただ、風呂好きの方が圧倒的に数が多い。フランスの場合、その人数比率がすっぽり入れ替わってると思ってくれりゃあいいだろう。
このフランス人の性質ってのが、どうやら相当根深い話らしいんだな。
パリのメトロにパスツールって名の駅がある。「近代細菌学の開祖」ことパスツール先生から取った駅名なんだが、この駅には1930年に公衆衛生キャンペーンがされたときのポスターが貼ってあってな。
「食事の前には手を洗おう」とか、「つばを吐いてはいけません」とか書いてあるんだが、中に「週1回はお風呂に入りましょう」ってのもあるのよ。
そうよ、当時のフランス人は、週に1回を目標に据えなきゃなんねえほど、風呂に入ってなかったのよ。
アンタ、ルイ14世って知ってるかい。
1638年生まれで1715年没。太陽王の異名を取る、ブルボン王朝で最も権勢を誇った王だ。かのヴェルサイユ宮殿をつくった人として有名だな。
この人、なんと人生に2回こっきりしか風呂に入らなかったと言われている。
なぜか。なんでも当時のフランスでは、体臭がするというのは体の各器官が元気に動いていることの証明、すなわち健康のあかしであると思われてたんだそうだ。垢なんてのも生命力のバロメーターってわけよ。
それをこそぎ落とし、流しちまうような行為、すなわち風呂に入るなんてことは、体に悪いと信じられていたんだな。
どうだい、話が見えてきただろ。
約300年前のこととは言え、当時江戸時代を迎えていた日本では、既に銭湯があまねく普及していたってよ。
そりゃ日仏で風呂に対する考え方に違いもあるわけだよな。
パスツールから80年、さすがに現在では週に1回しか風呂に入らないフランス人ってのはそうザラにはいないようだが、きちんと体全体を丁寧に洗うのは日曜日だけ、ってな手合いは多いぜ。
いや、まいったね。
どうもフランス人には、いまだに体臭をイイものだと思ってるんじゃねえかな、ってフシがある。体臭はセクシーだ、チーズだってクサイ方がウマイ、みたいな。
太陽王の時代の血がいまだ脈々と受け継がれてる、ってことなのかもな。

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