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2010.05.08 (Sat)

フランスのラップはよくキレる? 移民国家フランス(5)

 まいったね。
 フランスのラップには、まいったね。


 と言っても、箱がへにょんへにょんで切りにくい、台所用のラップじゃねえぜ。
 ライムを踏んでリズムを刻む、音楽の方のラップよ。
 うーん、最初に台所って言っちまったせいで、ライムを踏むって言うと柑橘類の方のライムを豪快に踏んづけちまっておたけびをあげる、サザエさん的な光景が浮かんできちまうな。

 もとい。
 アメリカの黒人音楽にルーツを持つラップが、フランスで広がったのは1980年代のこと。1984年に、その名も「ヒップホップ」というテレビ番組が放送され、一大ムーブメントになったそうだ。
 黒人の音楽だからなのか、ゲットーに住む若者達の間でとりわけ熱狂的に支持された。

 そんなラップがフランスでヒットチャートをにぎわすようになったのは90年代になってからだ。特にシュプレームNTM、MCソラール、IAMの3組の活躍がめざましかった。フランスのラップにおける御三家と言われているぜ。
 3組とも、移民をルーツに持つゲットー育ち。シュプレームNTMはパリ郊外のセーヌ・サン・ドニ県出身、MCソラールは同じくパリ郊外のヴァル・ド・マルヌ県出身。IAMはマルセイユ出身者の集まりだ。



s-iam.jpg
(IAM、女性向けサイト「Teemix au Feminin」より)



 フランスのラップの特徴と言えば、そのメッセージ性の強さに尽きる。
 御三家の中でも、MCソラールなんかはごく一般的な曲を作っているんだが。IAMとNTMはそれぞれ、自分たちのアイデンティティをゲットー育ちだというところに置き、フランスの政治や社会の体制を批判する詩を数多く作り出した。


 たとえばNTMが93年に発表したアルバムの中には、その名も「ポリス」という曲がある。警察の職権濫用を批判し、警察官を「階級のある組織されたギャングだ」と歌ったことで、当の警察から侮辱だとみなされ、数回にわたって訴追されたそうだ。
 そのうち1件では、執行猶予付きながら懲役2ヵ月、罰金5万フラン(おおよそ100万円)の有罪判決を受けているってのよ。
 こういう話を聞くたびに番長としちゃ驚かざるを得ないんだが、フランスじゃ普通らしいんだな。日本でもかつては放送禁止歌なんてのがあったが、ありゃ放送局側の自主規制だ。単なる歌が罪に問われるって、北朝鮮も真っ青の反動国家ぶりじゃねえかよ。
 もっとも、当のNTMはそれで悪びれるわけでもねえ。95年に発表した3枚目のアルバムは、タイトルからして「爆弾の下のパリ」だった。
 そもそもNTMってグループ名自体、「Nique Ta Mere」の略で、英訳するとファック・ユア・マザーという意味だからな。中指を押っ立ててる姿が目に浮かぶようじゃねえか。それじゃあんまりひどいってんで、レコード会社が頭に「シュープレム」って言葉を付けさせたんだそうだ。いい話だな。



s-ntm.jpg
(シュープレムNTM、音楽サイト「jukebo」より)



 この手のラップはラップ・ハードコアとかラップ・ポリティックと呼ばれる。ゲットーでの生活にあえぐ移民2世や3世の若者たちにとって、ラップは自分たちの思想信条を表現する格好の手段だったわけだ。
 そんな音楽は、肌の色の違いを超えて、フランスの若者たちにウケた。
 IAMは95年に、フランス版グラミー賞と言われることもある「ビクトワール・ド・ラ・ミュージック」のグループ部門賞を獲得している。同じ年に発売されたNTMのアルバムは50万枚売れたそうだ。
 彼らの後を追って、たくさんのフォロワーが生まれた。

 知名度の高まりに比例して、こうしたメッセージ性の強いラップに対する風当たりもまた強まる。
 95年、IAMに近いB.Viceというグループの一員、イブラヒム・アリという青年が、極右政党の国民戦線(FN)のビラ配りに重傷を負わされるという事件が起きた。FNは移民排斥を唯一のウリにして勢力を伸ばしていた政党で、IAMは曲の中でFNを激しく批判。さらにFNがそれに応酬してちょっとした騒ぎになった。
 とは言え、ラップはまだ、若者たちの間ではやっているだけのものだった。IAMも、名前は知ってるけど曲を聴いたことはないよ、というくらいの存在でしかなかった。FNが極端な右翼だってことも周知の事実。この時点では、コップの中の嵐だったと言っても言い過ぎじゃあねえだろう。


 雲行きが怪しくなってくるのは、あの男が現れてからだ。
 2001年に「スナイパー」というグループが発表した曲「フランス」に対して、現大統領のサルコジは内相だったころ、「フランスを侮辱するチンピラども」と名指しで批判している。
 歌詞はこんな感じだ。


「フランスはあばずれだ 俺たちは裏切られてきた
 体制が俺たちを憎ませる
 憎しみが俺たちの言葉を下品にする
 俺たちの曲でフランスを姦ってやるぜ
 抑圧なんてどうでもいい
 共和国、表現の自由、それがどうした
 法律を変えるんだ
 アラブ人と黒人で政権の座を取る日は近いぜ」



 フランス語では、すべての単語を男性名詞と女性名詞とに分ける。フランスという単語は女性名詞だ。そんなこともあって、ラップ・ハードコアの中では「フランス」がたびたび陵辱された。
 はっきり言って、この手の詞ってのは番長の好みじゃねえ。なんたって番長のフェイバリット歌手と言えば松田聖子ちゃんだからな。
 だが、実際に暴力に訴えるよりは、歌を通して伝える方が、表現の仕方としてはずっといい。もしも暴力が表現の一手段だと言えるなら、の話だけどな。


 サルコジはFNとは違う。当時、既に押しも押されもせぬ有力政治家だった。ラップに対する反感が、フランス社会で保守派を中心にだんだんと広がってきていたってことだ。
 2005年、そのうねりは頂点に達する。
 パリ郊外にあるゲットーの一つで大規模な暴動が起き、フランス全土に広がったのを覚えてるかな。
 発端はパリ北東にあるクリシー・ス・ボワ市。2005年10月27日夜、警察官に追われた北アフリカ出身の若者3人が逃げ込んだ変電所で感電し、2人が死亡、1人が重傷を負った。
 ゲットーにひしめく若者たちの間にくすぶっていた社会への不満に、この事件は火を付けた。警察への投石から車両や公的施設、商店への放火へと拡大。約3週間にわたって続いたぜ。サルコジはこのとき、暴徒を「社会のクズ」呼ばわりし、火に油を注いでいる。

 暴動直後の11月、フランス政界で驚くような犯人捜し、つるし上げが始まった。
 なんと、暴動の原因はラップにあるとして、7つのグループの訴追を求める署名が国会議員の間で集められ、法務大臣に提出されたのよ。その数、国民議会(下院)153人、上院49人。下院の定数は577、上院は343だから、これが結構な人数だってことはわかるだろう。
 その主張によれば、ラップの人種差別や憎しみを煽るような歌詞が暴力を助長した、こんなものを聞いているから警察官に暴力をふるうんだ、って言うんだな。
 国会議員だけに限らない。当時、メディアもこぞってラップの中の暴力的な詩を取り上げて批判した。

 そりゃ確かに、問題になったようなラップはお世辞にも品が良いとは言えねえ。
 対象になったのは「113(サントレーズ)」「ミニステール・AMER」「スマル」「リュナティック」「ファブ」「サリフ」「ムッシューR」で、「フランスは股を開いて、俺はオイルもなしで突っ込んだ」だの、「フランスは売女だ」だのと歌っている。

 だからって、ラップを聞いたから暴力を振るうなだなんて、そんなわけあるかよ。
 いや、ひょっとしたら音楽と暴力衝動の間には関係があるのかもしれねえ。番長は預かり知らねえところだ。しかし、だったら科学的に証明してからにしてくれよ、って話じゃねえか。

 日本でもこういう批判はよく起きる。
 ホラービデオの見過ぎで事件を起こした、ゲームのやりすぎで現実と虚構の区別が付かなくなった、ってなご意見よ。粗雑さ、短絡ぶりでは同じようなもんだろうな。

 だが、国会議員が訴追を求めて法相に署名を出すとなると、これは話の次元が違ってくるじゃねえか。
 表現の自由はどこへ消えたんだい、え?
 フランスの同化主義が、こんなところにも顔を出したってことなのかね。


 結局この騒ぎは、時の首相ドミニク・ドビルパンが「ラップに責任はない。なすりつけはやめよう」と断言したことなどによって沈静化した。ちゃんとマトモな人もいたってこった。
 もっとも、この時期のドビルパンは、次期大統領選の最有力候補者の一人。ライバルのサルコジは反移民の姿勢を徹底してアピールすることで人気を高めていたから、それに対抗するための策だったのかもしれねえけどな。

 さらに言えば、ラッパーの方にも、政治問題や移民系の若者の社会に対する不満を利用しようとする姿勢が全くなかった、とは言えねえだろう。
 それでもなお、どんな意見でも自由に表現できる社会ってのが理想だと、番長は信じてやまないがな。


 いや、まいったね。
 こういう的はずれな議論が起きるのも、移民問題を正視していないことの一つの現れなんじゃねえかな。




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