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2010.05.30 (Sun)

ネットリ密着、サルコとメディア

 まいったね。
 サルコジとマスコミの癒着っぷりには、まいったね。


 前回の記事で、あるサルコジ出演番組への驚きを書いた。



・地上波主要3局とラジオ1局を完全ジャック
・4日前に突然放映が決まった特番
・番組中はひたすらサルコジがしゃべるだけ
・全然突っ込まないジャーナリスト←大統領府の要望だった
・熱心な聴衆かと思いきやエキストラ
・コマーシャルまったくなし
・サルコジのしゃべりが止まらず、なし崩しに15分ほど延長




 どれもこれも日本じゃ考えられねえよな。
 フランスのテレビは、もともと現体制の初代大統領ド・ゴールが中央政府の方針を国民に伝え、教育する手段としてつくられた。だから未だに、大統領サマがご出演なさるとなると、みんなビビりあがっちまうのか。

 それもあるのかもしれねえ。だが、ことサルコジに限って言えば、他にも思い浮かぶこともある。
 マスコミ各社のトップとねんごろなんだ。癒着してると言っても過言じゃねえぜ。


 この番組で、ジャーナリストを名乗るキャスター2人がまったく役に立たなかったというのは、前回書いたとおりだ。サルコジの喋りをただ聞くだけで、鋭いツッコミもなけりゃ、サルコジを困らせるような質問もしねえ。お飾りみたいなもんだった。
 うち1人は国営放送フランス2のキャスター。サルコジが怒れば予算を減らされてもおかしくないし、実際サルコジは国営放送局からCM収入を奪っちまった。だから大統領に対して強いことが言えないというのは、まあわからなくもねえ。日本の選挙特番なんかでも、NHKのキャスターはおおむね民放に比べておとなしいもんな。
 しかし、もう一人は民放TF1のキャスター。そういうしがらみはなさそうなもんじゃねえか。この人、夜8時ニュースのキャスターで、名前をローランス・フェラーリという。美人ちゃんだ。



laurence_ferrari.jpg
(ローランス・フェラーリ、フェイスブック公式ページより)



 今のポジションに就いたのは2008年の8月25日から。それまではずーっと同じおじさんが21年間にわたってニュースを読んでたのよ。パトリック・ポワーブル・ダルヴォールという名で、縮めて「PPDA」と呼ばれて親しまれていた。



s-800px-Patrick_Poivre_dArvor_20100330_Salon_du_livre_de_Paris_2.jpg
(PPDA、ウィキペディアより)



 TF1と言えばフランスで一番歴史が古く視聴率も高いチャンネルで、8時のニュースは看板番組。まさに国民的キャスターとして人気が高かったんだが、いいかげん年もとってきた(1947年9月生まれ)ってんで、2007年に引退を表明したのよ。
 ところが、そのときには自分で「65歳になる2012年に番組を降りる」って宣言してたんだな。65歳ってのはいまのフランスでは一般的な定年の年齢だし、2012年は次の大統領選挙が行われる節目の年だ。実際、PPDAは選挙が終わったら辞めると言っていたんだな。
 ところが2008年8月、突如として番組から消えた。
 当初はTF1が世代交代を早めたんだろうと思われていたんだが。後になってPPDA自身が、「あれは政治的な決断だった」と漏らしたんだな。

 実はこのTF1、サルコジとの関係が非常に深い。
 ここの大株主は「ブイグ」という大手建設会社で、87年に経営権を取得している。このブイグの社長、マルタン・ブイグって人は、サルコジと前妻セシリアの結婚式で証人を務めたくらいで、サルコジのポン友としておなじみなんだな。
 なぜPPDAは降ろされたのか。2007年の6月にドイツのハイリゲンダムって町でG8サミットが開かれたんだが、このときにPPDAはサルコジへのインタビューで、「大男の集まりに乗り込んだ少年のような気分じゃないか」と質問した。それをサルコジが根に持っていたんじゃないか、って言うんだな。
 ほかにも、サルコジと親しい日刊紙フィガロの元編集局長がTF1の報道部長に就く人事にPPDAが反対したからだ、という話もある。
 まあなんにせよ、このままPPDAをキャスターにはしておけないとマルタン・ブイグが判断したことは間違いねえ。

 その代役として選ばれたのがローランスちゃん。
 下馬評では、2012年の後継キャスターは、PPDAのバカンス中にキャスター代役を務めたイケメン黒人のハリー・ロゼルマックになるんじゃないかと噂されていたんだがな。まさかの抜擢だったわけだ。
 そりゃ、サルコジに楯突くようなことを言うわけがないわなあ。
 ちなみにTF1には、サルコジの元側近だったロラン・ソリってのが大統領就任と同時に入社している。蜜月ってわけだ。



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(おまけ。ハリー・ロゼルマック、TF1のウェブサイトより)



 ところで、さっき日刊紙フィガロのことを書いたよな。
 この新聞、実はミラージュ戦闘機をつくっているダッソーという会社の傘下なんだな。軍需産業が政府にケンカを売るわけがねえってわけだ。
 ま、もともとフィガロは右翼系の新聞で、読者はサルコジの支持者と重なるから、仲が良いのも当たり前と思われるかもしれねえ。

 ところがどっこい。
 リベラルな紙面でフランスを代表する新聞とされているル・モンドも、株式の17%をラガルデールという企業グループに所有されている。その中核は航空機・兵器産業。おいおい、リベラルな紙面には似つかわしくないじゃねえか。
 総帥のアルノー・ラガルデールはやっぱりサルコジと親密で、互いに「兄弟」と呼び合ってるらしいんだな。キモイぜ。
 このラガルデール・グループ、ほかにも日曜日に出る新聞のジュルナル・ドゥ・ディマンシュや、ラジオ局や出版社、日本版も出ている女性誌の「ELLE」、さらには写真週刊誌のパリマッチもグループにおさめている。
 聞いたことがある話だな、とピンと来たアンタは鋭い。実はパリマッチ、サルコジのたるんだ腹のゼイ肉を修正したことがあるってのを、過去にも紹介させてもらったことがあるぜ。
 この場合も、サルコジが修正しろと命令したわけでもないのに、パリマッチの方で勝手にハラのたるみを削ってたんだった。つまりは、メディアの側が萎縮しちまってるんだな。このときパリマッチ編集長の脳裏に浮かんだのは、さてサルコジなのか、それともアルノー・ラガルデール総裁なのかね。

 話はこれだけじゃ終わらねえ。
 穏健なル・モンドと違ってビンビンの左翼系である日刊紙リベラシオンも、経営を支配しているのはロスチャイルド家。そうよ、世界の金融業を動かすユダヤ系財閥のロスチャイルド家よ。ここのトップもまた、サルコジと仲良しちゃんなんだとさ。

 さらに、日本で言うところの日経新聞にあたる経済紙レゼコー、ここのパトロンはルイヴィトンなのよ。
 日本じゃヴィトンと言えばモノグラムくらいに思われてるかもしれねえが、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)という企業グループを形成していて、ディオールやジバンシーやダナキャラン、果てはケンゾーまでもを傘下におさめ、高級ブランドだけで50近くを束ねてんだぜ。さらにはドンペリやヘネシーといった酒や、15カ国150店の免税店を展開するDFSもここのグループってんだから、そのデカさがわかるだろ。
 このLVMHトップのベルナール・アルノーってのも、ブイグと一緒に、サルコジと前妻の結婚式で証人を務めている。マブダチってわけだ。

 こうして見ると、全国紙でサルコジと関係がねえのは、パリジャンだけってことになるな。日本で喩えるなら、読売と朝日と毎日と日経がすべて鳩山のシンパで、産経だけが孤軍奮闘してるような状況というかな。


 さらにさらに。
 サルコジは政権を執った後、ジャーナリスト2人を引き抜き、メディア対策の大統領顧問に置いた。1人は週刊誌ル・ポワンの編集長で、もう一人は地方紙プロバンスなどで論説委員を務めていた人物だとさ。さらに、首相府もフィガロの記者1人を広報顧問に雇い入れている。
 記者の側からしたらさぞかしやりにくいだろうなあ。手の内を知り尽くされてるわけだもんな。


 いや、まいったね。
 サルコジもサルコジだが、権力者が報道機関を牛耳りたがるのは世の常。簡単に買収されちまうマスコミ企業や、権力になびいちまうジャーナリストが少なくないってのも、実際どうかと思うぜ。




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