2010.06.30 (Wed)
「ソルボンヌ出身」さんが多すぎる!? ソルボンヌ大学とはなんぞや
まいったね。
有名?大学には、まいったね。
ようアンタ、フランスの大学と聞いて、どこが思い浮かぶかい。
少なからぬ人が、ソルボンヌ大学と答えたんじゃねえかな。
最近あんまりお目に掛からないが、いつもワイングラスを片手に持ってる髭男爵って芸人がいるだろ。あの二人組の男爵の方、山田ルイ53世は自称ソルボンヌ大学の出身を名乗っている、もちろんウソンコなんだが、そうやって使われるくらい代名詞的な存在ってこった。アメリカでいうハーバードやマサチューセッツ工科大みたいなもんだな。他にも漫画家にソルボンヌK子って名前の人がいる。由来は知らねえが、これも同じような理由で使ってるんだろう。
確かにソルボンヌは有名だ。起源を12世紀に持つヨーロッパでも最古の大学の一つで、著名人も多く学んでいる。ラジウム発見でおなじみのキュリー夫妻とか、サルトルやレヴィ・ストロースといったフランスを代表する知識人、さらにはヌーベルバーグの旗手として知られる映画監督のジャン・リュック・ゴダール、果ては日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルもそうだ。
だが、日本人の間ではこのソルボンヌに関して、いくつかの誤解があるようだな。
まず第一に。
ソルボンヌを比喩で表現するときに、フランスの頂点に位置する最高学府という意味で、「フランスの東大」みたいな言い方をすることがある。たとえばこのサイト。
が、これは間違い。前回の記事でも書いたとおり、フランスの大学ってのはバカロレアさえ通ればどの大学にでも自由に入れる。で、そのバカロレアには8割くらいの生徒が受かる。
つまり、ソルボンヌに通っているのはフツーの学生だ、ということだ。カッキンカキンの秀才が集まってるというのは思い違いなんで、気をつけてくれよな。
つぎ。ソルボンヌ大学という名前の大学は、実は存在しない。
今あるのはパリ大学で、ソルボンヌってのはこの旧称みたいなもんだ。創始者がソルボンさんって名前の人だったんだな。しかし、1969年にパリにあった大学は改組されて、第1から第13までのパリ大学として新たなスタートを切った。
じゃあソルボンヌとはいま何を指すのかというと、これはカルチェ・ラタンにある昔ながらの大学校舎、

(ウィキペディアより)
この建物自体を示すことが多い。壁に「ソルボンヌ」って名前も刻まれてるしな。
現在、中にはパリ大学のうち第1、第3、第4、第5の一部が入っている。さらには国立古文書学校、高等研究実習院なんていう高等教育機関も含む。
ちなみにパリ大学にはそれぞれに別称があって、この古いソルボンヌの建物に入っているうちの3つはそれぞれ、パリ第1大学「パンテオン・ソルボンヌ」、第3大学「ソルボンヌ・ヌーベル」、第4大学「パリ・ソルボンヌ」と、ソルボンヌの名を冠している。だが、第5大学は「ルネ・デカルト」。超有名哲学者の名前が取られていて、ソルボンヌは影も形もない。どうだい、だいぶ混乱をきたしてきただろ。
パリ大学の中身ってのは複雑怪奇だ。これが第1大学は哲学部のみ、第2大学は文学部のみ、みたいにスパッと分けてくれればわかりやすいんだが、実際にはいくつかの大学に同じ学部が存在している。医学部は第5、6、7、11、12、13大に、文学部は第3、4、10大にあるんだな。
このソルボンヌの建物に入っているのは、おおむね人文科学系統なんだそうだ。ところが、同じ学部にいる限りは同じ建物で学び続けられるかといえばさにあらず、学年によって別の校舎へ行かなきゃならなかったりする。
2001年のアメリカ同時多発テロ以降、所属する学生以外、このソルボンヌの古い建物の中にも自由に入ることはできなくなった。いよいよ外部からはよくわからねえ大学になっちまったぜ。
とりあえず、「ソルボンヌ大学という名前の大学は、現在は存在しない」「ソルボンヌとは建物の名前」ということだけ、今日は覚えて帰ってくれよな。
経歴で「パリ大学卒」と書かずに「ソルボンヌ大卒」としている人は、何かをごまかしている可能性がある。
番長、今回の記事を書くにあたってたまたま見つけたんだが。芸能プロダクション「太田プロ」のサイトに、高木美也子さんとおっしゃる方のプロフィールがあった。なんでもニュースキャスターなんかも務めた才女だそうだが、プロフィールに「パリ第7大学(通称ソルボンヌ大学)理学部博士課程終了」(ママ)とある。まず「終了」じゃねえだろとツッコミたくなるが、何よりも、パリ7大はどう転んでもソルボンヌじゃあねえ。
ま、ひょっとしたら事務所が勝手につくったものかもしれねえけどな。パリ大学の博士課程を修めているとすれば、こりゃもう十二分に凄いキャリア。だが、日本じゃソルボンヌ大学ってしとかないとイマイチ響かねえと思ったのかねえ。
さらに。
日本には「ソルボンヌで勉強しました」という元留学生がたくさんいる。中にはパリ大学をちゃんと卒業したという人ももちろんいるだろう。
だが、ほとんどは「ソルボンヌの建物の中に事務所がある『フランス文明講座』という名の語学学校に通いました」という手合いだ。語学学校だからまったくフランス語がわからなくっても、カネさえあれば入れる。
この手の人が「ソルボンヌ大学で……」と言っているとすれば、それは詐称。文明講座は大学ではないからだ。でも、ソルボンヌで勉強したとか、ソルボンヌを出たとか言う分にはウソじゃあねえのよ。うーん、まぎらわしいねえ。
ただし、同じ語学学校の中でも、フランス文明講座は宿題の量が多かったりと授業が厳しめなことで知られている。文明講座をちゃんと修了したってんなら、それはそれとして認めてやってもいいんじゃねえかとは思うぜ。
いや、まいったね。
自称ソルボンヌさんに会ったら、本当はどこで何を勉強したのか、きちんと確認したほうがいいかもしれねえぜ。

有名?大学には、まいったね。
ようアンタ、フランスの大学と聞いて、どこが思い浮かぶかい。
少なからぬ人が、ソルボンヌ大学と答えたんじゃねえかな。
最近あんまりお目に掛からないが、いつもワイングラスを片手に持ってる髭男爵って芸人がいるだろ。あの二人組の男爵の方、山田ルイ53世は自称ソルボンヌ大学の出身を名乗っている、もちろんウソンコなんだが、そうやって使われるくらい代名詞的な存在ってこった。アメリカでいうハーバードやマサチューセッツ工科大みたいなもんだな。他にも漫画家にソルボンヌK子って名前の人がいる。由来は知らねえが、これも同じような理由で使ってるんだろう。
確かにソルボンヌは有名だ。起源を12世紀に持つヨーロッパでも最古の大学の一つで、著名人も多く学んでいる。ラジウム発見でおなじみのキュリー夫妻とか、サルトルやレヴィ・ストロースといったフランスを代表する知識人、さらにはヌーベルバーグの旗手として知られる映画監督のジャン・リュック・ゴダール、果ては日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルもそうだ。
だが、日本人の間ではこのソルボンヌに関して、いくつかの誤解があるようだな。
まず第一に。
ソルボンヌを比喩で表現するときに、フランスの頂点に位置する最高学府という意味で、「フランスの東大」みたいな言い方をすることがある。たとえばこのサイト。
が、これは間違い。前回の記事でも書いたとおり、フランスの大学ってのはバカロレアさえ通ればどの大学にでも自由に入れる。で、そのバカロレアには8割くらいの生徒が受かる。
つまり、ソルボンヌに通っているのはフツーの学生だ、ということだ。カッキンカキンの秀才が集まってるというのは思い違いなんで、気をつけてくれよな。
つぎ。ソルボンヌ大学という名前の大学は、実は存在しない。
今あるのはパリ大学で、ソルボンヌってのはこの旧称みたいなもんだ。創始者がソルボンさんって名前の人だったんだな。しかし、1969年にパリにあった大学は改組されて、第1から第13までのパリ大学として新たなスタートを切った。
じゃあソルボンヌとはいま何を指すのかというと、これはカルチェ・ラタンにある昔ながらの大学校舎、

(ウィキペディアより)
この建物自体を示すことが多い。壁に「ソルボンヌ」って名前も刻まれてるしな。
現在、中にはパリ大学のうち第1、第3、第4、第5の一部が入っている。さらには国立古文書学校、高等研究実習院なんていう高等教育機関も含む。
ちなみにパリ大学にはそれぞれに別称があって、この古いソルボンヌの建物に入っているうちの3つはそれぞれ、パリ第1大学「パンテオン・ソルボンヌ」、第3大学「ソルボンヌ・ヌーベル」、第4大学「パリ・ソルボンヌ」と、ソルボンヌの名を冠している。だが、第5大学は「ルネ・デカルト」。超有名哲学者の名前が取られていて、ソルボンヌは影も形もない。どうだい、だいぶ混乱をきたしてきただろ。
パリ大学の中身ってのは複雑怪奇だ。これが第1大学は哲学部のみ、第2大学は文学部のみ、みたいにスパッと分けてくれればわかりやすいんだが、実際にはいくつかの大学に同じ学部が存在している。医学部は第5、6、7、11、12、13大に、文学部は第3、4、10大にあるんだな。
このソルボンヌの建物に入っているのは、おおむね人文科学系統なんだそうだ。ところが、同じ学部にいる限りは同じ建物で学び続けられるかといえばさにあらず、学年によって別の校舎へ行かなきゃならなかったりする。
2001年のアメリカ同時多発テロ以降、所属する学生以外、このソルボンヌの古い建物の中にも自由に入ることはできなくなった。いよいよ外部からはよくわからねえ大学になっちまったぜ。
とりあえず、「ソルボンヌ大学という名前の大学は、現在は存在しない」「ソルボンヌとは建物の名前」ということだけ、今日は覚えて帰ってくれよな。
経歴で「パリ大学卒」と書かずに「ソルボンヌ大卒」としている人は、何かをごまかしている可能性がある。
番長、今回の記事を書くにあたってたまたま見つけたんだが。芸能プロダクション「太田プロ」のサイトに、高木美也子さんとおっしゃる方のプロフィールがあった。なんでもニュースキャスターなんかも務めた才女だそうだが、プロフィールに「パリ第7大学(通称ソルボンヌ大学)理学部博士課程終了」(ママ)とある。まず「終了」じゃねえだろとツッコミたくなるが、何よりも、パリ7大はどう転んでもソルボンヌじゃあねえ。
ま、ひょっとしたら事務所が勝手につくったものかもしれねえけどな。パリ大学の博士課程を修めているとすれば、こりゃもう十二分に凄いキャリア。だが、日本じゃソルボンヌ大学ってしとかないとイマイチ響かねえと思ったのかねえ。
さらに。
日本には「ソルボンヌで勉強しました」という元留学生がたくさんいる。中にはパリ大学をちゃんと卒業したという人ももちろんいるだろう。
だが、ほとんどは「ソルボンヌの建物の中に事務所がある『フランス文明講座』という名の語学学校に通いました」という手合いだ。語学学校だからまったくフランス語がわからなくっても、カネさえあれば入れる。
この手の人が「ソルボンヌ大学で……」と言っているとすれば、それは詐称。文明講座は大学ではないからだ。でも、ソルボンヌで勉強したとか、ソルボンヌを出たとか言う分にはウソじゃあねえのよ。うーん、まぎらわしいねえ。
ただし、同じ語学学校の中でも、フランス文明講座は宿題の量が多かったりと授業が厳しめなことで知られている。文明講座をちゃんと修了したってんなら、それはそれとして認めてやってもいいんじゃねえかとは思うぜ。
いや、まいったね。
自称ソルボンヌさんに会ったら、本当はどこで何を勉強したのか、きちんと確認したほうがいいかもしれねえぜ。

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2010.06.28 (Mon)
覚えてはいけないフランス語!
まいったね。
口の悪い連中には、まいったね。
よう、盛り上がってるねえ、サッカーのワールドカップ。日本では。
フランス代表は別の意味で盛り上がってる、ってのは御存知の通り。日本も含めて世界中で広く報道されてるな。何ともお恥ずかしい話よ。
そもそも今回のW杯、出場権をつかんだのは欧州予選対アイルランド戦でアンリが手を使ってボールをゴールに押し込んだから。ハンドだ反則だと物議を醸し、当のアンリがボクやっちゃったよと認めちまった。その後もフランス代表の顔役と言えるリベリらに未成年の買春問題が持ち上がったりと、ゴタゴタ続きだったんだな。
でもって現地ではフランスサッカー協会、監督、選手らの間で内紛が表面化。前代未聞の練習ボイコットの末に1勝もできず予選敗退と、まあ惨めな結果に終わったのはご承知のとおりよ。
とまあ、そのへんのことはスポーツに詳しいサイトで山ほど書いてるだろうから、番長は別の視点から。
内紛の引き金を引いたのは、フォワードのアネルカ選手がドメネク監督に暴言を吐いたとして、代表から追放されたことだった。
フランスサッカー協会は「アネルカの発言は一切容認できず、今回の決定は妥当」と説明した。
しかし、追放って超重い処分だよな。単に試合に出れないってだけじゃない、オマエはもう代表選手じゃないんだと烙印を押すってことだからな。アネルカのプライドもそりゃあ傷付いただろうよ。プロスポーツ選手ってのはメンツを大事にするもんなあ。
いったいぜんたい、野郎は監督に何と言ったのか。バカ、アホと言っただけじゃねえだろってのは想像付くが、どんなことを言うと追放なんぞという重い処分を食らっちまうのか。スポーツ紙「レキップ」が報道しているところによると、
と言ったらしい。
これを聞いた番長、アッチャー、と思ったね。こりゃイカンわと。
これ、直訳すると「ケツの穴を掘られろ、売春婦から生まれた汚らわしい野郎が」ってな意味になる。なるんだが、なんて言うのかねえ、そうやって日本語の字面で見る以上のインパクトがある言葉なんだよな。
言葉のやりとりの中でこの言葉が出ちまったら、もう後は手が出るしかないのよ。殴り合いのケンカが始まるときに号砲の代わりになる言葉というかな。あまたあるフランス語表現の中でも最も粗野な部類、ツバを顔に吐きかけたり中指をおっ立てたりって行為に限りなく近い言葉なんだな。これを口に出しちまったら、言った方も拳が飛んでくることは覚悟しなきゃならねえという。
これが事実なら、まあ監督が怒るのも無理はねえかな、少なくとも同じチームのベンチに並んで座ってはいられないわなあ、と同情できる程度の言葉ではある。
このアネルカの発言を巡り、与党の保守政党UMPの議員有志は、またぞろ「移民社会出身の選手が悪い」として、再教育を求める要望書を政府に出した。ラッパーたちをつるし上げたときと同じやり口だな。どうもこの人達は、なんでもバンリューのせいにすればいいと決め込んでるらしい。国歌斉唱や祖国への忠誠など代表選手の義務を定めた憲章をつくり、選手全員に守らせるよう求めた。
日刊紙リベラシオンによると、このUMP議員の中には、アネルカたち移民社会出身者を「社会のクズ」とさげすむ野郎もいたんだとか。どっちがクズなんだか。
ちなみに、フランス語の有名な罵り言葉といえば、そのUMPの党首たるサルコジ閣下のご発言。2008年2月23日、パリであった国際農業見本市へとお出ましになった大統領が、すれ違った男性に握手を求めようとして断られたときに言った、
ってのがある。
これは直訳すると、っていうか直訳はできねえが、まあ「ここから消え失せろ、このクソ野郎」となるかな。使われてる単語の一つ一つに品の無さがにじみ出ている、簡潔にしてこれ以上ない罵り言葉だね。
この国家元首にして、このサッカー代表選手あり、ってことなんだろう。
いや、まいったね。
子猫ちゃんたちはこんな言葉、絶対に使っちゃダメだぞ!

口の悪い連中には、まいったね。
よう、盛り上がってるねえ、サッカーのワールドカップ。日本では。
フランス代表は別の意味で盛り上がってる、ってのは御存知の通り。日本も含めて世界中で広く報道されてるな。何ともお恥ずかしい話よ。
そもそも今回のW杯、出場権をつかんだのは欧州予選対アイルランド戦でアンリが手を使ってボールをゴールに押し込んだから。ハンドだ反則だと物議を醸し、当のアンリがボクやっちゃったよと認めちまった。その後もフランス代表の顔役と言えるリベリらに未成年の買春問題が持ち上がったりと、ゴタゴタ続きだったんだな。
でもって現地ではフランスサッカー協会、監督、選手らの間で内紛が表面化。前代未聞の練習ボイコットの末に1勝もできず予選敗退と、まあ惨めな結果に終わったのはご承知のとおりよ。
とまあ、そのへんのことはスポーツに詳しいサイトで山ほど書いてるだろうから、番長は別の視点から。
内紛の引き金を引いたのは、フォワードのアネルカ選手がドメネク監督に暴言を吐いたとして、代表から追放されたことだった。
フランスサッカー協会は「アネルカの発言は一切容認できず、今回の決定は妥当」と説明した。
しかし、追放って超重い処分だよな。単に試合に出れないってだけじゃない、オマエはもう代表選手じゃないんだと烙印を押すってことだからな。アネルカのプライドもそりゃあ傷付いただろうよ。プロスポーツ選手ってのはメンツを大事にするもんなあ。
いったいぜんたい、野郎は監督に何と言ったのか。バカ、アホと言っただけじゃねえだろってのは想像付くが、どんなことを言うと追放なんぞという重い処分を食らっちまうのか。スポーツ紙「レキップ」が報道しているところによると、
Va te faire enculer, sale fils de pute!
と言ったらしい。
これを聞いた番長、アッチャー、と思ったね。こりゃイカンわと。
これ、直訳すると「ケツの穴を掘られろ、売春婦から生まれた汚らわしい野郎が」ってな意味になる。なるんだが、なんて言うのかねえ、そうやって日本語の字面で見る以上のインパクトがある言葉なんだよな。
言葉のやりとりの中でこの言葉が出ちまったら、もう後は手が出るしかないのよ。殴り合いのケンカが始まるときに号砲の代わりになる言葉というかな。あまたあるフランス語表現の中でも最も粗野な部類、ツバを顔に吐きかけたり中指をおっ立てたりって行為に限りなく近い言葉なんだな。これを口に出しちまったら、言った方も拳が飛んでくることは覚悟しなきゃならねえという。
これが事実なら、まあ監督が怒るのも無理はねえかな、少なくとも同じチームのベンチに並んで座ってはいられないわなあ、と同情できる程度の言葉ではある。
このアネルカの発言を巡り、与党の保守政党UMPの議員有志は、またぞろ「移民社会出身の選手が悪い」として、再教育を求める要望書を政府に出した。ラッパーたちをつるし上げたときと同じやり口だな。どうもこの人達は、なんでもバンリューのせいにすればいいと決め込んでるらしい。国歌斉唱や祖国への忠誠など代表選手の義務を定めた憲章をつくり、選手全員に守らせるよう求めた。
日刊紙リベラシオンによると、このUMP議員の中には、アネルカたち移民社会出身者を「社会のクズ」とさげすむ野郎もいたんだとか。どっちがクズなんだか。
ちなみに、フランス語の有名な罵り言葉といえば、そのUMPの党首たるサルコジ閣下のご発言。2008年2月23日、パリであった国際農業見本市へとお出ましになった大統領が、すれ違った男性に握手を求めようとして断られたときに言った、
Casse-toi, pauvre con!
ってのがある。
これは直訳すると、っていうか直訳はできねえが、まあ「ここから消え失せろ、このクソ野郎」となるかな。使われてる単語の一つ一つに品の無さがにじみ出ている、簡潔にしてこれ以上ない罵り言葉だね。
この国家元首にして、このサッカー代表選手あり、ってことなんだろう。
いや、まいったね。
子猫ちゃんたちはこんな言葉、絶対に使っちゃダメだぞ!

2010.06.25 (Fri)
バカにしないでバカロレア フランスお受験事情
まいったね。
フランス式の入試には、まいったね。
久々登場、「番長に聞け!」のコーナー。
悩める子猫ちゃんたちのお悩みを、番長が快刀乱麻、ズバッと解決しちまうぜ。
今回はコメントに寄せられた、ミントさんのこんな質問だ。
内容は番長の方で要約させてもらったぜ。
なるほどなるほど。そういや番長、パリ第14大、略してパリキャト大に在学中だったな。今日も元気に学ラン背負い、腰から提げた純白の手ぬぐいがマブしいと評判の番長が、ご質問にお答えしよう。
フランスの大学入試の場合、バカロレアという試験がある。かのナポレオン1世が始めた統一試験で、高校生はほぼ全員がこれを受ける。出される問題はフランス全土で同じ。フランス語、数学、歴史・地理、物理・化学、外国語などの教科別になっていて、自分の進路ごとにどれを受けるかは違ってくる。そういう点では日本のセンター試験、ちょいと前なら共通一次試験と同じってことになるな。
ただ、出題の傾向は全然違う。センター試験と言えばマークシート、塗りつぶすための2Bえんぴつを忘れないでねってヤツだが、バカロレアにはまず選択式の問題ってのがない。というか、知識の詰め込みで対応できるような出題はされない。ドカーンと大きなお題が出され、それに関してひたすら論述を続けるというスタイルだ。しかも1科目あたりの持ち時間は3~4時間。うーん、アゴが上がるぜ。
他にも特色としては、科目の中に哲学ってのがあり、文系・理系・社会科学系を問わず必修だ。いかにもフランスらしいじゃねえか。提示された3つのお題のうち1つを選んで自由に記述するって形式なんだが、このお題ってのがふるってるんだな。2010年の文系向け出題だと、
といった具合。これを4時間かけてやる。18歳にゃ荷が重くねえかと心配になっちまうが、こういうのをスラスラできねえと一人前のフランス人にはなれねえんだろう。
このバカロレア、国家資格の試験という位置付けだ。バカロレアに合格するということは、大学に入ることができる資格を得るということに他ならねえ。同時に、高校での学業をちゃんと修めましたよという証明でもある。
バカロレアは難関と言われていて、問題を見る限りは確かに大変そうだが、そうは言っても8割くらいの受験生が合格する。ま、フツーに勉強してりゃちゃんと受かるってことだな。
で、フランスにある大学ってのは、バカロレアさえ取ってれば、どこでも自由に入れることになっている。
と聞くと日本人は驚くことが多い。そりゃ、誰でもトーダイ・キョーダイ・キューテーダイに入れるってことじゃねえか。んなことしたら一部の大学だけに人が集中しちまう、駅弁大学や東淀川大学雑学部みたいなとこは干上がっちまうだろと。
心配ご無用ゴム長靴よ。こんな仕組みになってるから、フランスの大学には日本で言う偏差値の差みたいなもんがない。どの大学に行ったかで就職活動が有利になることもないんだな。
たとえばパリ大学ってのは、ヨーロッパでも最も古い時代からある由緒正しい学校で、過去に多数の著名人を排出している名門だ。そこらの大学に比べて知名度は高い。だからと言って、パリ大学にいたと言ってもフランスでは別に何とも思われない。中で何をしたかが問題になってくるのよ。
そのへんは、東大卒や京大卒なんてのが、一生を通じて保険になるようなピッカピカの金看板として通用する日本とは全然違う。
どこの大学へ通ったところで基本的には同じだから、志望者はバラける道理ってわけだな。
と、そうは言ってもやっぱりそれぞれの大学に集まる学生の数には差がある。歴史のある大学や医学部は人気が高い。田舎の辺鄙な場所にある大学はその逆だ。しかし、それぞれに定員ってものがある。定員以上の学生が集まっちまったらどうするのか。
ご指摘の通り、先着順で区切っちまうんだな。応募の仕方は大学によって違うようだが、徹夜の列ができたり、ネットの募集枠が2分でいっぱいになったりすることもあるそうだ。チケットぴあ並だな。それと、バカロレアには追試もあるんだが、一発合格したヤツが有利ってことになるな。
他にも、その大学がある地域の出身者を優先するとか、バカロレアの点数が高い順にするとか、高校時代の成績をみるとか、別に面接や試験を科すとか、それぞれの大学で独自にやっているようだ。
いずれにしても日本に比べりゃ、大学に入るのは簡単。大変なのはそれからだ。フランスの大学ってのは試験だレポートだってのが山ほど課されることでおなじみなのよ。で、学年末には毎回バカロレアのようなシビアな試験が待ち受けている。きちんと学位をとって卒業できるのは、おおよそ入学者の4分の1くらいじゃないかと言われているぜ。
フランスの大学ってのは日本のように入ったら4年は安泰っていうんじゃなく、1年ずつ積み上げていくって感じなんだな。で、大学の中でできるすべてのことを習得するには4~5年かかるが、たとえば3年修めた時点で大学を出るという学生も珍しくねえ。履歴書なんかでは「bac+3」なんて書き方をする。bac(バック)ってのはバカロレアの略称。バカロレアに加えて大学で3年間分の学位を取得しましたよ、という意味だ。
さて、ご質問の中に特典のお話があったな。学割のサービスは各所である。学食では2ユーロ程度と格安でメシが食える。ただ、このへんの話もすべての学生に共通した話で、ドコソコ大学の学生だから特別に……って話は番長は知らねえ。いや、あるのかもしれねえよ。この点ではちょっと、番長お役に立てないようだ。
それと、予備校ってのはフランスではあまりお目にかからねえ。一応存在はしていて、最大手はアカドミアって名前で108校があるそうだが、まあ日本の大手に比べりゃこぢんまりとしたもんよ。英会話教室のポスターならそこかしこで見るけどな。そうそう、家庭教師ってのもあるが、こっちも細々とやってる感じだな。日本みたいな受験産業ってのは、フランスにはないと言っても言い過ぎじゃねえだろう。
このへんはやっぱり、どの大学に入っても差がないってのが影響してるんだろうな。なんせバカロレアの合格率ってのは、まあ年によって違うんだが、おおむね80%程度。つまり、5人に4人は受かるわけだ。だとすれば、塾だ家庭教師だに高い金をつぎ込む必要はないよな。加えて言えば、あんな出題をされちまっては、小手先の受験テクニックを詰め込んでも通用しねえって部分もあるだろう。
それから、後段の「職業訓練系か学業系かを決めなきゃいけない」という話。これもその通りで、そもそもバカロレアには、大学に進学する連中が受ける「普通バカロレア」のほかに、「技術バカロレア」「職業バカロレア」がある。それぞれ職種別に細かく分かれていて、試験には実技もプラスされる。パン屋だろうが事務員だろうが大工だろうが、バカロレアは受けなきゃならねえ。こちらは高校卒業証明、職業資格としての性格が強い。
ただまあ、高校の時点で意思決定をすると言っても、日本とそう違いはしねえんじゃねえかな。たとえば日本の高校だって、工業高校や商業高校なんかに入れば、おのずと進路は狭まる。そういうもんなんだろうよ。逆にフランスでも、普通バカロレアを受ける大多数の生徒は、己の行く末を大学にいる間にゆっくり考えるわけだ。
というわけでミントさん、おおよそのところはわかっていただけたかな?
いや、まいったね。
受験と言っても日本とフランスじゃ、ずいぶん違いがあるってこったな。
ところで、今回は書かなかったが、フランスには大学とはまったく体系の異なる最高学府として、グランゼコールってのが存在する。それについてはまた別の機会ってことで!

フランス式の入試には、まいったね。
久々登場、「番長に聞け!」のコーナー。
悩める子猫ちゃんたちのお悩みを、番長が快刀乱麻、ズバッと解決しちまうぜ。
今回はコメントに寄せられた、ミントさんのこんな質問だ。
内容は番長の方で要約させてもらったぜ。
パリ14大学に在籍中の番長さん、フランスの学校について教えていただけますか?
パリの大学への入学は、先着順に決まると聞きました。学生には数々の特典が与えられているため(メトロとか?)、中には本当にその大学に行きたいわけでなくても、その特典の為に申し込む人達もいるとか。知人の娘さんは真剣に行きたくて頑張っていたけど入れなかったそうです。今は予備校みたいなところに行って、来年またトライするとか。
もちろん、特典のために入った人達は入ってからどんどん落とされて行くのでしょうが、最初の門戸は誰にでも平等に開けられているということなのでしょうか。パリの大学は皆公立とか?
また、中3のお子さんをお持ちの方が、高校に入る時には職業訓練系か学業系か(適切な言葉かはわかりませんが)決めていなくてはいけないと伺いました。16才で決めなくてはいけない? 私なんて(私だけかもしれないけれど)高3でも大学でも将来何になりたいかなど、はっきりとはわかっていませんでした。
なるほどなるほど。そういや番長、パリ第14大、略してパリキャト大に在学中だったな。今日も元気に学ラン背負い、腰から提げた純白の手ぬぐいがマブしいと評判の番長が、ご質問にお答えしよう。
フランスの大学入試の場合、バカロレアという試験がある。かのナポレオン1世が始めた統一試験で、高校生はほぼ全員がこれを受ける。出される問題はフランス全土で同じ。フランス語、数学、歴史・地理、物理・化学、外国語などの教科別になっていて、自分の進路ごとにどれを受けるかは違ってくる。そういう点では日本のセンター試験、ちょいと前なら共通一次試験と同じってことになるな。
ただ、出題の傾向は全然違う。センター試験と言えばマークシート、塗りつぶすための2Bえんぴつを忘れないでねってヤツだが、バカロレアにはまず選択式の問題ってのがない。というか、知識の詰め込みで対応できるような出題はされない。ドカーンと大きなお題が出され、それに関してひたすら論述を続けるというスタイルだ。しかも1科目あたりの持ち時間は3~4時間。うーん、アゴが上がるぜ。
他にも特色としては、科目の中に哲学ってのがあり、文系・理系・社会科学系を問わず必修だ。いかにもフランスらしいじゃねえか。提示された3つのお題のうち1つを選んで自由に記述するって形式なんだが、このお題ってのがふるってるんだな。2010年の文系向け出題だと、
1.真理の探究は私心なく行えるのか。
2.未来のためには過去を忘れなければならないのか。
3.トマス・アクィナスの「神学大全」について解説せよ。
といった具合。これを4時間かけてやる。18歳にゃ荷が重くねえかと心配になっちまうが、こういうのをスラスラできねえと一人前のフランス人にはなれねえんだろう。
このバカロレア、国家資格の試験という位置付けだ。バカロレアに合格するということは、大学に入ることができる資格を得るということに他ならねえ。同時に、高校での学業をちゃんと修めましたよという証明でもある。
バカロレアは難関と言われていて、問題を見る限りは確かに大変そうだが、そうは言っても8割くらいの受験生が合格する。ま、フツーに勉強してりゃちゃんと受かるってことだな。
で、フランスにある大学ってのは、バカロレアさえ取ってれば、どこでも自由に入れることになっている。
と聞くと日本人は驚くことが多い。そりゃ、誰でもトーダイ・キョーダイ・キューテーダイに入れるってことじゃねえか。んなことしたら一部の大学だけに人が集中しちまう、駅弁大学や東淀川大学雑学部みたいなとこは干上がっちまうだろと。
心配ご無用ゴム長靴よ。こんな仕組みになってるから、フランスの大学には日本で言う偏差値の差みたいなもんがない。どの大学に行ったかで就職活動が有利になることもないんだな。
たとえばパリ大学ってのは、ヨーロッパでも最も古い時代からある由緒正しい学校で、過去に多数の著名人を排出している名門だ。そこらの大学に比べて知名度は高い。だからと言って、パリ大学にいたと言ってもフランスでは別に何とも思われない。中で何をしたかが問題になってくるのよ。
そのへんは、東大卒や京大卒なんてのが、一生を通じて保険になるようなピッカピカの金看板として通用する日本とは全然違う。
どこの大学へ通ったところで基本的には同じだから、志望者はバラける道理ってわけだな。
と、そうは言ってもやっぱりそれぞれの大学に集まる学生の数には差がある。歴史のある大学や医学部は人気が高い。田舎の辺鄙な場所にある大学はその逆だ。しかし、それぞれに定員ってものがある。定員以上の学生が集まっちまったらどうするのか。
ご指摘の通り、先着順で区切っちまうんだな。応募の仕方は大学によって違うようだが、徹夜の列ができたり、ネットの募集枠が2分でいっぱいになったりすることもあるそうだ。チケットぴあ並だな。それと、バカロレアには追試もあるんだが、一発合格したヤツが有利ってことになるな。
他にも、その大学がある地域の出身者を優先するとか、バカロレアの点数が高い順にするとか、高校時代の成績をみるとか、別に面接や試験を科すとか、それぞれの大学で独自にやっているようだ。
いずれにしても日本に比べりゃ、大学に入るのは簡単。大変なのはそれからだ。フランスの大学ってのは試験だレポートだってのが山ほど課されることでおなじみなのよ。で、学年末には毎回バカロレアのようなシビアな試験が待ち受けている。きちんと学位をとって卒業できるのは、おおよそ入学者の4分の1くらいじゃないかと言われているぜ。
フランスの大学ってのは日本のように入ったら4年は安泰っていうんじゃなく、1年ずつ積み上げていくって感じなんだな。で、大学の中でできるすべてのことを習得するには4~5年かかるが、たとえば3年修めた時点で大学を出るという学生も珍しくねえ。履歴書なんかでは「bac+3」なんて書き方をする。bac(バック)ってのはバカロレアの略称。バカロレアに加えて大学で3年間分の学位を取得しましたよ、という意味だ。
さて、ご質問の中に特典のお話があったな。学割のサービスは各所である。学食では2ユーロ程度と格安でメシが食える。ただ、このへんの話もすべての学生に共通した話で、ドコソコ大学の学生だから特別に……って話は番長は知らねえ。いや、あるのかもしれねえよ。この点ではちょっと、番長お役に立てないようだ。
それと、予備校ってのはフランスではあまりお目にかからねえ。一応存在はしていて、最大手はアカドミアって名前で108校があるそうだが、まあ日本の大手に比べりゃこぢんまりとしたもんよ。英会話教室のポスターならそこかしこで見るけどな。そうそう、家庭教師ってのもあるが、こっちも細々とやってる感じだな。日本みたいな受験産業ってのは、フランスにはないと言っても言い過ぎじゃねえだろう。
このへんはやっぱり、どの大学に入っても差がないってのが影響してるんだろうな。なんせバカロレアの合格率ってのは、まあ年によって違うんだが、おおむね80%程度。つまり、5人に4人は受かるわけだ。だとすれば、塾だ家庭教師だに高い金をつぎ込む必要はないよな。加えて言えば、あんな出題をされちまっては、小手先の受験テクニックを詰め込んでも通用しねえって部分もあるだろう。
それから、後段の「職業訓練系か学業系かを決めなきゃいけない」という話。これもその通りで、そもそもバカロレアには、大学に進学する連中が受ける「普通バカロレア」のほかに、「技術バカロレア」「職業バカロレア」がある。それぞれ職種別に細かく分かれていて、試験には実技もプラスされる。パン屋だろうが事務員だろうが大工だろうが、バカロレアは受けなきゃならねえ。こちらは高校卒業証明、職業資格としての性格が強い。
ただまあ、高校の時点で意思決定をすると言っても、日本とそう違いはしねえんじゃねえかな。たとえば日本の高校だって、工業高校や商業高校なんかに入れば、おのずと進路は狭まる。そういうもんなんだろうよ。逆にフランスでも、普通バカロレアを受ける大多数の生徒は、己の行く末を大学にいる間にゆっくり考えるわけだ。
というわけでミントさん、おおよそのところはわかっていただけたかな?
いや、まいったね。
受験と言っても日本とフランスじゃ、ずいぶん違いがあるってこったな。
ところで、今回は書かなかったが、フランスには大学とはまったく体系の異なる最高学府として、グランゼコールってのが存在する。それについてはまた別の機会ってことで!
