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2010.06.18 (Fri)

なんデモかんデモ……意味わかんなーい

 まいったね。
 ストやデモの意味不明さには、まいったね。


 ストをうつのもデモをするのも、これは労働者の権利。やりたいようにバンバンやればいいと思うぜ。
 ただ、これも日本人の感覚なのかな。どうにもよくわからねえことがいくつかあるんで、ちょいと羅列させてもらうとするぜ。


■ なぜ無関係の場所でデモ?


 SNCF(フランス国鉄)の職員が鉄道の運行をやめる。学生が教室にバリケードを張る。店員のストで店が営業しない。工場労働者が工場をロックアウトする。と、こういうのはわかる。だが、デモが行われている場所とその当事者ってのが、フランスじゃ必ずしも一致しないんだな。

 あるときSNCFの駅でその駅始発の列車に乗り込み、発車時刻が来るのを待っていた番長。遠くの方からブンガブンガドンドンと楽しげな音がする。ああ、サーカスでも来るのかなあ。ピエロってどうして怖いのかなあ。なんてぼんやり考えているうちに音がどんどん大きくなる、近づいてくる。
 窓の外に目をやると、一団の楽隊、にしては楽器を持っていない人の数が多い。番長の近くに座っていたマダムがやれやれといった表情で携帯電話を手に取る。「ちょっと今日は何時に着けるかわからないわよ。いま駅にいるんだけど、マニフェスタシオン(デモ)の一隊が入ってきたから」
 そう、遠目なんで何だかよくわからなかったが、なにがしかのデモ集団で、ホームやら線路やらを練り歩いてるんだな。駅と言えば人の集まるところだから、そこでアピールしようって意図もあるんだろうが。彼らがいる間は、当然ながら危険だから列車は発車できない。そういう示威行動でもあるんだな。

 こういうときは、車内の空気がすーっとあきらめモードに変わるのが感じられる。嵐が過ぎるのを待つしかないってな。フランス人はおおむね他人のデモやストに対して寛容だが、いつかは自分が行使することもあるだろう権利を他人が使うのを見届けているとか、ましてや同じ労働者として連帯しているなんて感じじゃないように、番長には思えるぜ。むしろ、やれやれしょうがねえな、という諦念だな。
 このときは30分くらいの遅れで無事に発車できたんだから、運が良かったんだろう。
 他にも、街一番のショッピングモールの正面入り口が閉鎖されていて、こりゃ店員のストかと思ったら脇の入り口から中に入れて、モール内の各ショップは平常通り営業してたりとか。トラムが走る線路の上に、職員でもないのに居座る連中がいたりとか。嫌がらせかっての。
 番長の私感だが、こういうの、学生のデモってことが多いような気がするぜ。


■ デモ自体が目的化してないか?


 詳しいことを書き出すと長くなるんで省略するが、フランスでは2006年にでっかいデモがあった。警察発表で100万人、主催者発表で300万人が参加したとされている。悪名高い「CPE」という法案に反対するもので、これは「25歳以下の労働者に限り、いったん雇っても2年以内は自由に解雇できることにする」という内容。失業率、特に若者の失業率が高いのは、一度雇用してしまうとクビを切れないフランスの法制度が企業側を臆病にさせているからだってんで提案された。

 これに若者が猛反発した。それはわかる。俺たちばかりに負担を押し付けてんじゃねえ、となるわな。ところが、実際にデモに参加したのはほとんどが公務員だった。SNCF、公立学校、郵便局、などなど。労働組合が動員したんだな。
 長い目で見たときに、CPEの導入を許せばいずれ日本のようなリストラに道を開くという危機感は理解できる。この法案について事前に労組への根回しがなかったという事情もあったようだ。
 しかし、どうもしっくりこねえ。以前の記事でも書いたが、極端な言い方をすればだぜ。このときデモの主体になった労働組合に加入しているような、まず定年までクビになることなく雇用され続けていく人たちの権利が守られているがために、若者の失業率が高くて、それで政府はこんな法案を出してきたわけだからな。言ってみりゃ、彼らと若者とは利害が相反しているはずなのよ。それが手を結ぶのはおかしくねえかい。
 結局のところ、うまいことプロに利用されちまったんじゃねえか、若い衆は。

 もう一つこのときには、カスール(「壊し屋」の意)と呼ばれる連中が建物を壊したり火を付けたりして警官隊と衝突する騒ぎになった。彼らはゲットーに住む移民系だったとされている。パリ郊外で大規模な暴動があったのは前年2005年のことだったが、いい機会だってんで混ざっちまったんだな。
 結果、このデモってのは何がなんだかわからなくなっちまう中で規模だけがどんどん肥大化し、最終的には当時大統領だったシラクが出てきて法案を撤回した。

 番長のうがった見方だってのはわかってるが、この動きでの労働組合やカスールには、どうも後のせサクサク感が否めないんだよな。ビッグウェーブがきたからここはノっていこう、っていうさ。これを「世代や立場を超えた連帯」みたいに言う人もいるが、そんなイイ話だとは番長にはとても思えねえんだが。


■ 民主主義はどこへ行った?


 上に書いたCPEの話もそうなんだが。参加者が100万人だろうと300万人だろうと、そりゃフランス国民6千万人中の一部でしかない。
 民主主義の基本は代議制だ。有権者が選挙で選んだ政治家によって、議論の場として議会が設けられている。CPEに反対するのはいいが、その議論は議会でできなかったのかねえ。議会で否決されたり、国民投票にかけられたりしたわけでもねえのに、一部の人の意見だけで政策を変えちまって、本当にいいもんなんだろうか。
 実際、いまだにフランスの若年失業率は高いままだもんな。

 同じ頃にこんな話もあった。日本軽金属の子会社に東洋アルミニウムってとこがあってね。フランスのスペイン国境に近い田舎町に工場を持っていた。で、60キロ離れた別の町に新しい工場を建てることにしたんだな。
 これに地元選出の国会議員が反発した。今ある工場は閉鎖されるに違いない、ここでは147人が雇用されているのに、そんなことになれば産業のないこの町はおしまいだ。議員はハンガーストライキにうって出た。ハンストだ。刑事物語の武田鉄矢よろしくハンガーをぶん回して闘うわけでもなきゃ、パンティーストッキングでもないぜ。工場新設の計画を撤回するまで断食するってんだな。
 体重は21キロも落ち、体長も悪化。支援の輪が広がる中で、しまいにゃ首相や大統領が介入して、新設計画は撤回された。ハンストから39日目のことだった。この議員は即、入院したそうだぜ。
 これ、アンタどう思うよ。フランスでは美談扱いなんだが。国会議員だったらもうちょっと別の解決方法はなかったのかねえ。それこそ政治的に介入する手だてはさ。マハトマ・ガンジーが非暴力・不服従運動をしたのは、イギリスから独立するために、それしか手段がなかったから。この人には他に何なりとやれることがあっただろうよ。
 ちなみに、東洋アルミニウムは今ある工場を潰すつもりはさらさらなかった、としている。つまりはこの議員の完全な思いこみなのよ。再三そう説明したんだが、聞く耳を持ってもらえなかったんだとさ。
 はー、意味がわからねえ。あんまりわからねえんで頭がクラクラするぜ。


 いや、まいったね。
 そいつはこういうことだぞ番長!と、どなたか解説してくれねえかい?




bancho200.gif



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テーマ : フランス ジャンル : 海外情報

11:00  |  俺節フランス  |  トラックバック(0)  |  コメント(12)  |  編集  |  上へ↑

*Comment

やはりこれは小さい時からの教育にあるような気がしますね。
私なぞ母から「他人さまに迷惑をかけてはいけねえ」と教え込まれてきましたからね。
日本人の感覚で理解しようとしても限界があるのでは?
ストがあった時のフランス人の2チャンネルの書き込みを見ないとわからないのでしょうかね。
豊栄のぼる |  2010.06.18(金) 11:53 |  URL |  【コメント編集】

あんしゃんて 番長!

うんうん、ピエロって怖いですよね。子供のころは、似たようなメーキャップのM社のD君の看板も怖かったですもの。
ポテトは食いたし、あの人怖し…。

えっそこ?

カカ百万石 |  2010.06.18(金) 20:37 |  URL |  【コメント編集】

フランスのスト・デモは、有名ですね…

もしかしたら政治体制が硬直化し過ぎて、民意を政策に反映させるシステムが不完全なせいもあるかもしれませんね。
フランスは、中央集権型政府で有名な国ですからね…

デモやストで出される主張は、本来は国会や政府の中で議論されるべきだと思いますよ。
あ |  2010.06.19(土) 00:35 |  URL |  【コメント編集】

いつも楽しく読ませていただいています♪ フランスも田舎にいるので、パリに行くと外国に来た気分になります。私のパリに住む友人たちは社会のグラタン部分にいるフランス人たちばかりなので、彼らの生活から垣間見るパリよりは、番町ドノのご報告の方がパリの姿を描写しているのだろうな… と思います。

デモも、フランスの田舎にいると、雲の上の世界です。パリに行ったとき、リーズナブルプライスで美味しいレストランに行ったら、「予約でいっぱいだけれど」と言いながら何とか席を作ってくれたことがありました。少しすると、ドヤドヤと人が入ってきて、やたらにうるさい。興奮状態でしゃべりまくっている。聞こえてくる話しを聞いたら、どうやらデモから引きあげたときに食事するために予約していた団体らしいことが分かりました。レストランはバスティーユ広場に近かったので納得。彼らは熱狂的におしゃべりをしていて、楽しそう。主張を同じくする人たちと一緒にデモをするのは、趣味というか、楽しみになるのだな… と感心したのでありました。

CPEに関しては、なんでビルパンがあんなにこだわって頑張ったのかが大きな謎として残りました。成功すると本気で思っていたのだろうか?… サルコジは学生リーダーに電話して励ましたりしていたので、罠にはまっただけだったのか?… 公務員が学生運動に加わって行動したのは、フランスの伝統だと思って、全く違和感は覚えませんでした。五月革命のときも同じでしたから。デモにを思う存分やれるのは、学生、次に、クビになる心配はしなくて良い公務員です。

東洋アルミニウムのハンストがおきたときは、日本人として興味を持って追ったのですが、どんな裏話があったかは忘れてしまいました。ともかく、私のまわりのフランス人たちは、美談どころか、「バカ!」の一言で片づけていたのは覚えています。日本企業が安値で買った工場は景観保護地域にあって、色々な規制がありすぎる(日本では想像できない規制だったはず)。そんなところで工場運営なんかしていられないと気付いた日本企業が、近くの土地に工場を移転しようとしたのは当然で、それをこの議員がハンストなんかに訴えて食い止めようとしたのは子どもじみた行動だという反応でした。なによりも、ハンスト事件が日本に伝わったら、フランス各地で歓迎したがっている日本企業がフランスに入るのを躊躇させることになるから、フランスにとっては大きな損害だ! という捉え方でした。これはフランス人が好きなデモ文化とは切り離して考えるべきだと思うのですが、どうなのでしょう?

楽しく読ませていただきながら、勝手にクイズをつくっています。いつか解答が出てくるのを待っているのですが、番町ドノがフランスに入られたのはサルコジ政権以降ではないですか? デモに関しても、フランスはどうのと言えないくらい、サルコジ政権になってから変わったと感じるのです。だって、この大統領、何か無理なことを法律にしようと言ったときに反対運動が出ると、あっさり引っ込める。そうなったら、デモをしないと損するだけではないですか! サルコジは、政権をとったすぐあとのデモで、警官に通行止めをくらって家に帰れなかった男の子が仕方ないのでデモ見物に行って、ワールドカップと間違えたのか道の石を拾ったらからと刑務所に入れるとか、この間書かれたコルシカ島の事件のように治安の責任者を首にしたり左遷したりとかの制裁をしたり、と努力していますが、そのくらいでデモを食い止められるかな?...
Franc-alleu |  2010.06.19(土) 04:22 |  URL |  【コメント編集】

■管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 |  2010.06.20(日) 01:11 |   |  【コメント編集】

■豊栄のぼるさん、押忍!

 うーむ、やはりそのへんになるのかねえ。日本人には理解できない感覚イコール悪いってわけじゃねえんだが、どうしたって戸惑わされる場面は多いよな。おっと、それがこのサイトのメインテーマだったぜ! しかしフランスにも2ちゃんねるがありゃあ面白かったろうなあ。
フランス番長 |  2010.06.20(日) 19:51 |  URL |  【コメント編集】

■力力百万石さん、押忍!

 ツッコミはいつどの角度からでも大歓迎よ。ドナルド・マクドナルドって怖いよなあ。あ、実名だしちまった。あれはしかし、世界で相当な数の子どもに恐怖心を植え付けちまってる、と番長も思うぜえ。
フランス番長 |  2010.06.20(日) 19:52 |  URL |  【コメント編集】

■あ さん、押忍!

 うーん、中央集権とはいえスターリン体制下のソ連ってわけでもねえんだろうから、本来は代議制の中で市民の声を吸い上げる仕組みを持っておくべきなんじゃねえのかねえ。ま、デモはフランスの伝統芸能みたいなもんだから、なくなったら寂しいけどな!
フランス番長 |  2010.06.20(日) 19:52 |  URL |  【コメント編集】

■Franc-alleu さん、押忍!

 アンシャンテのビヤーンブニュだぜ。お察しの通り、番長がフランスに入ったのはサルコジになってから。とんだ若輩者ってわけなんで、先輩のお言葉はありがたいぜ。なるほど、ストで政策を転がすようになったのはサルコジになってからなのかい。CPEん時はシラクだからこりゃ伝統なのかと思いきや、他の政策ではそうじゃなかったってことなのかねえ。しかしご指摘の通り、そりゃデモをやらなきゃ損ってことになってくるよなあ。ゴネ得ってことになるよな。うーむ。
 ところで東洋アルミの件。そうかい、Franc-alleu さんの周りには常識的な方が集まってらっしゃるようだし、ことによるとフランス人の大半は同じように感じていたのかもしれねえな。だが、やはりシラクが中に入ってるってことは、フランス政府は日本企業よりもハンスト議員の方を取った、そちらに理があるとしたってことだよなあ。おっしゃるとおり、この問題は日本というか諸外国の企業から見たら、フランスの「カントリーリスク」なんだよな。インドでタタが工場を作ろうとしたら農民が反乱を起こして車の製造が立ち行かない、みたいな。そういう視点がフランスでどれほど理解されてんのかに、番長としちゃあちと疑問があったのよ。
 デモやストに楽しみというか、お祭り的な盛り上がりがあるなあというのは番長も同感。ただ、実感ベースの話で恐縮だが、ぜんっぜんストに関わってない人ってのも相当多いような気はするんだな。結局フランスに行っても、デモやらストやらってのは限られた人たちが手がけるものなのかな、っていうさ。
フランス番長 |  2010.06.20(日) 19:55 |  URL |  【コメント編集】

■鍵コメントさん、押忍!

 リンクはいつでも大歓迎! 遠慮なくどかどかバンバンやってくれよな!
フランス番長 |  2010.06.20(日) 19:57 |  URL |  【コメント編集】

マニフェスタシオンっていうのは、自分たちの主張や不利益を強く示すためのものだから
公衆に迷惑をかけるくらいのインパクトがあって当然!

国益なんてしったことか!
まずは個人の生活の問題だろ!
ソリダリテはどうなったんだ!!

ということをおっしゃる方々も多いですね。

たとえば左寄りの方々にとっては「国益」=「ナショナリスト的」になるように、
日本人の多くがふつうにイメージし考える「国の利益」というキーワードを
くそったれだと忌み嫌う人も多いですよね。

文化や習慣の差異って、知識と分析で頭で考えるのも必要だけれども、
同時に、経験や雰囲気でそのうちなんとなくこういうもんだと、
体で分かって、頭を切り替えられることも大事でしょうね。


では私からも・・・

■仏国民の税金で出場しているワールドカップのフランス代表選手たちがアネルカ追放に反発、練習をグレーブ中なのは何故?

スポーツにもグレーブありです。

C'est comme ça!






花畑牧場 |  2010.06.21(月) 02:24 |  URL |  【コメント編集】

■花畑牧場さん、押忍!

 そうだねえ。世の中リクツじゃあねえんだよな。ただ、こりゃもちろん番長の私感なんだが、このフランスの「労働者の権利」、あるいはもっと広く取って「人権」に妙なアコガレを持っちまってる日本人てのがどうも少なくねえような気がしてね。フランスの男女関係や事実婚、PACSに対する崇拝同様に、オイオイそんないいもんじゃねえぜって思っちまうんだよなあ。ま、いずれにしても郷に入っては郷に従え。フランスに生きる者はストにも慣れなきゃなんめえな。ところでサッカーフランス代表の一件。なんなんだろうねえ。実際の試合の方じゃすっかり精彩を欠いちまってるが、こうやって話題を振りまいてくれるところはマスコミ思いなのかもしれねえな。ネタに事欠かねえもんな!
フランス番長 |  2010.06.21(月) 19:25 |  URL |  【コメント編集】

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