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2010.07.05 (Mon)

日本以上の学歴社会! グランゼコールってなんなのさ

 まいったね。
 学歴社会には、まいったね。


 本日はお待たせ、グランゼコールのお話。

 前に書いたように、フランスでは原則としてどこの大学でも自由に入れる。バカロレアという統一試験があるが、よっぽど高校でサボってたんでもなけりゃ通るシロモノ。フランス大使館のウェブサイトによれば、同年代の3分の2がバカロレアを取得するということだ。
 日本の大学進学率(短大含む)は5割強だから、乱暴な言い方をすると、フランスでバカロレアを取得できるオツムの程度ってのは、日本なら大学と名前の付いてる学校のどこかに入ることができるくらい、ということになる。

 あのさ、言っちゃ悪いが、日本のいわゆる偏差値下位の大学なんざ、名前を書けば受かるってなとこもあるだろ。さすがにバカロレアはそういうわけにはいかねえが、どれくらい勉強すれば合格できるのかの水準は、まあ推して知るべしってこったな。
 だからフランスには、日本のような「受験戦争」は存在しないし、大学の「入試難易度」なんてものも建前上はない。自由・平等・博愛を国是とする国らしいじゃねえか。


 ところがどっこい、フランスの学歴社会ぶりってのは、そりゃもう大変なもので、日本を超えるのよ。その原因となっているのがグランゼコール。どこの大学を出たかはほとんど問題にならないが、「グランゼコールを出たか」「どのグランゼコールを出たのか」は、ほぼ一生を左右するんだな。
 グランゼコールはフランス全土の主要都市に約350校がある。やっぱりバカロレアを取らないと入れないから、広い意味では大学と同じ高等教育機関ってことになるが、難易度はまったく違うのよ。
 まずは2年間の準備学級を終えないと入試すら受けさせてもられねえ。みんなここでバリバリ勉強するんだが、この準備学級自体も結構な難関で、進級できない学生もいる。この時点で脱落する連中もいるということだ。で、なんとかかんとか2年を終えると、ようやく各グランゼコールの入試を受けることができる。

 詳しい倍率についてはつまびらかになっていないが、大変な狭き門だとされている。というのも、そもそも定員が少なくて、1学年が300~400人程度だからな。さらに、各校の人気の有無もはっきりしていて、フランス人なら誰でも知ってるグランゼコールってことになると、おおよそ上位1割程度ってことになる。そこへ入ろうと思ったらそりゃ大変ってわけだ。
 バカロレア取得者のうち、大学に進むのが80%。結局進学しないのが15%いて、グランゼコールへ進むのは残りの5%弱だけ。中でも有名なグランゼコールに進むとなれば、これは日本で東大に入るよりもよっぽど難しいということになるな。


 さてこのグランゼコールとは、いったい何なのか。完全にフランス独自のシステムなんで、なかなか理解しにくいんだが。番長流にざっくりご説明しよう。

 日本にキャリア官僚っているだろ。たとえば警察官で考えようか。フツーに警察官になるんだったら、高卒の資格があればいい。で、各都道府県警察の採用試験を受ける。たとえば神奈川県警の警察官ってのは、神奈川県職員なんだな。首尾良く合格すると、まずは巡査を拝命する。
 警察官の階級は巡査から始まって、巡査部長、警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監……と上がっていく。警察署ならだいたい警部で課長クラス、警視で署長クラスだ。上の階級へ進むには、昇任試験にパスしなきゃならねえ。巡査部長くらいは誰でもなれるんだが、その上は結構な難関。論文試験もあるんだぜ。階級が上がれば基本的に給料も上がるんだが、定年まで巡査部長って人もいる。

 ところが、同じ警察の中にも、まったく違う採用経路の人がいる。国家公務員一種試験に受かり、警察庁に入った人たちだ。こちらは国家公務員。彼らのことをキャリアというわけだな。ほとんどは一流大学の出身だ。入庁するなりいきなり警部補から始まり、試験なんぞ受けなくてもポンポンと上の階級に上がる。
 だから、地方の県警だと、県警本部で政治家の汚職事件なんかを指揮する捜査2課長が30歳そこそこだったりする。警察は完全なタテ社会だから、たたき上げのベテランも課長には敬語を使い、意に添わない命令にも従わなきゃならない。このへんの悲哀は、ドラマや小説でもよく取り上げられるよな。「踊る大捜査線」とかさ。

 フランスの場合、このキャリア制度があまねくすべての職業に存在すると考えてもらえばいい。それも、官庁のみならず私企業でもだ。
 どうやったらキャリアになれるのか? そう、グランゼコールを出ればいいのよ。

 たとえば、日産CEOのカルロス・ゴーン。年8億9千万円の給料をもらっていることで話題になったが、彼はグランゼコールの中でも最上位の一つとされる「エコール・ポリテクニーク」と「パリ国立高等鉱業学校」の出身。卒業後はまずタイヤメーカーのミシュランに就職したんだが、入社3年目の27歳で工場長、31歳でブラジル・ミシュラン社の社長、35歳で北米子会社の社長になっている。もちろん本人の才能もあるんだが、こういう出世コースをたどれるのはグランゼコール出ならではだ。
 これは極端な例だが、大企業で課長以上の管理職になったり、官公庁に勤めたりしたかったら、グランゼコールを出ているというのは必須の条件なのよ。



s-Mines_facade.jpg
(パリ国立高等鉱業学校、ウィキペディアより)



 グランゼコールってのは、職種別にある。たとえば「パリ国立高等鉱業学校」、「国立土木学校」「高等電気学校」なんてのがあって、それぞれ鉱業、土木、電気の分野でトップに立つ人間を育成する。「高等師範学校」ってのは大学などの教員養成。ほかにも、いわゆるMBAの資格を取るビジネススクールや、陸海空軍の士官学校もその範疇だ。
 中でも別格なのが、ENAと書いてエナ。「国立行政学院」の略で、高級官僚を輩出するための学校だ。ここに入るためには、どこかヨソのグランゼコールを卒業してなきゃならねえのよ。ただ、努力をしただけの見返りはある。エナの卒業生のことをエナルクと呼ぶんだが、歴代の大統領・首相・大臣の多くがこのエナルクなのよ。
 といった具合に、フランス社会ってのはグランゼコール出身者によって牛耳られてるんだな。

 フランスの大学ってのは、常に定員よりも多い学生を抱えている。1980年代の後半まで、バカロレアを通ったぞという資格ってのは、同世代の10人中3人くらいしか持っていなかった。それが今では7割に近づきつつある。この20年くらいの間に進学志向がグッと強まったんだな。
 つまり、20年前に比べて大学生の数ってのは倍以上に増えてることになる。おかげで教室はいつもいっぱい。備品は間に合わず、教員の目は行き届かない。だけど施設は更新もされずオンボロのまま。
 それに比べるとグランゼコールは入り口でばっちり入学者の数を絞ってるから、充実した学生生活を送れるってわけだ。
 学生の就職難は既にお伝えしたとおりだが、そんな中でもグランゼコール生だけは別格。日本でいうリクルーターみたいに、企業の側からお迎えがくるんだそうだ。インターンシップのお誘いもふんだん。一般の大学生からしてみりゃ、ただでさえ雇用の枠は少ないのに、おいしいところはグランゼコール生に全部持っていかれちまうってんで、恨み節のようだぜ。


 一般市民からみた、エナルクを筆頭とするグランゼコール出身者に対する視線というのは、定年間近になっても巡査部長でいるようなおまわりさんが、東大出身のキャリアに対するときのソレだと考えてもらえばいい。ま、羨望と嫉妬の入り交じった感じだわな。でもって、そこにはあきらめの感情も入る。ああ、オレとは住む世界が別な連中だよ、ってな。
 フツーに大学を出ただけの人が、立ちはだかる壁を打ち破って出生していくのは至難の業だ。そういう能力のある人は、大学を修めてからグランゼコールに入り直す。それくらい両者の格差ははなはだしいんだな。


 問題なのは、このキャリアになる層が、どうも固定化されているということだ。
 本来、勉強なんてのはやればやっただけ成果が出るもの。これ以上平等なものもねえ。だが、日本でも東大や京大といった一流大学に入る学生は、親の年収が一般の大学生よりも高いという調査があった。フランスでも同様で、グランゼコール生は富裕層に属している割合が高いと言われてるんだな。
 考えてもみてくれ。フランスには受験産業ってものがほとんど存在していない。ということは、学校で教えてくれることを超えた部分の子どもの教育ってのは、親なり家庭に依存しているってことだ。もともと知識階級に属してなけりゃ無理ってわけだな。
 都会と地方とでの差もある。パリには意識の高い家庭が多いから、高校生ともなればグランゼコールを目指す連中はそわそわし始める。ライバルも多いから切磋琢磨するわな。農村だとそうはいかないってわけだ。

 さらに。フランスの学費ってのは非常に安くて、高校までは無料、大学も年にせいぜい数百ユーロなんだが。グランゼコールの学費は高い。ま、これもピンキリで、中にはゼロに近いところもあるんだが、技術系でおおむね年間1000ユーロ程度、ビジネススクールの場合には年7000ユーロを超えるところも珍しくない。
 このへんもキャリア層固定化の一因だ。結局、カネもふんだんに用意できなきゃグランゼコールには入れないってんだな。フランスの学費が安いというのもよく言われる話で、確かにそうなんだが、それは「キャリアになるつもりがなければ」という条件が付く話なのよ。


 よく、フランス人は人生を謳歌しているように見えるって言うだろ。週35時間しか働かないうえにバカンスをたっぷりとって、アートやら日曜大工やらにいそしんで、ってさ。その裏側には、どうやったってある程度以上の出世はできない、しなくていいという諦念があるように、番長には見えるぜ。
 逆に、グランゼコール出のキャリアたちは、まあよく働く。寝食を惜しんで働く。グランゼコールに入るまでだってガリガリ勉強してきたんだろうに、ご苦労なこったよ。そこはそれ、エリートにはエリートとしての矜持があるわけだな。こういう人たちがいるから、フランスがいくらでたらめな国でも、一応は経済大国の位置におさまってるわけだ。


 いや、まいったね。
 フランスの学歴社会ぶりが、おわかりいただけたかな?




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テーマ : フランス ジャンル : 海外情報

11:00  |  俺節フランス  |  トラックバック(0)  |  コメント(38)  |  編集  |  上へ↑

*Comment

■学費は安い

授業料は高いところで7000ユーロx133円=93万円でしょ、安いもんですよ。
日本では国立大学で入学金28万円、授業料55万円ですからね。
<どうやったってある程度以上の出世はできない、しなくていいという諦念>
当たっているかもしれませんね。
豊栄のぼる |  2010.07.05(月) 13:01 |  URL |  【コメント編集】

■興味深いです

番長さん

フランスの学校のお話、とても興味深いです。
グランゼコールの学費が高いと云っても、年7000ユーロってことは今日のレートで$8,773らしいですが、米国では、例えば娘の中学高校(私立でしたが)で、年間$26~27、000でした。それでも3年前に卒業したので、今はもっと高いかもしれません。
これプラス教科書(だいたい年$1,000ちょっと)を始めとしていろいろかかります。
大学に行くと、学費はこの2倍くらいかかります。特にアイビーリーグは高いです(その為、スカラーシップが沢山あります)。シティーカレッジや州立大学は安いですが。

フランスの税金はとても高いと聞きますが、何%くらいなのでしょう。でもそれで良い(悪くはない)公立学校の教育や、ちゃんとした病院で診てもらえる健康保険があるのは、いいかもしれない。

米国では、クオリティの教育を受けさせたかったら、何人もこどもをもつことは経済的に難しいし、シリアスな病気になれません。
低所得者用にはそれなりのシステムがあるし、お金持ちは良いですが、ウチみたいに中途半端はグ、グルジイ、イイイイ、、、です。

そうかといって日本も税金、教育、健康保険は、それぞれ問題があって大変みたいですものね。
ハァ~、とため息と共に失礼します。

*それからフランス人の日曜大工好きは、実は趣味ではなく、頼んでもすぐ来なかったり、ちゃんと直してくれなかったりで、必要にせまられた自衛手段みたいよ、本当は、、、と、「日曜大工が趣味」のご主人を持つ主婦のお友達が云っていました。

ミント |  2010.07.05(月) 13:28 |  URL |  【コメント編集】

グランゼコール入学者の出身高校も、有名私立高が多数を占めてるのかもしれませんね…
競争倍率が高ければ、公教育では対応が難しいでしょうから。

日本でも東京の一流大入学者は、有名私立高が多数を占めたり、附属学校からの進学者が半数近くを占めたりしてますからね。
そういった高校の学費は、かなり高額ですし…。
やっぱ教育とお金の関係は、日本でもかなり密接ですが、フランスでもおそらくそうではないかなと思います。

フランスはファッションや料理で有名な国ですが、そういう業界は発想だけが勝負の世界ですからね…
フランスでなぜ盛んなのか、ちょっと分かった気がします。
あ |  2010.07.05(月) 14:09 |  URL |  【コメント編集】

■Re: 学費は安い

 豊栄のぼるさん、押忍! まあ確かに日本に比べればなお安いんだが、日本の大学生だと、自分で学費を稼いで納めるっていう殊勝なヤツはそうたくさんはいねえよな。フランスの場合、大学生になった瞬間に独立したって扱いになるから、基本的には学費は自分で稼ぐことになる。だが、さすがに90万円も稼ぐのは無理だ。グランゼコール生ってのはただでさえ学問に忙しいんだからな。つまりは、それだけの出費を最初から見込んでいてできる家庭に限られるわけよ。ま、奨学金もあるし、国立のグランゼコールの場合は給料さえ出ることもあるからな。決して貧乏人はグランゼコールに行けないってわけじゃねえが、門戸はそう広くないとは言えそうだぜ。
フランス番長 |  2010.07.05(月) 18:40 |  URL |  【コメント編集】

■Re: 興味深いです

 ミントさん、押忍! アメリカの学校は高いんだねえ。さすがはアメリカ、何よりカネがモノを言う国の面目躍如ってとこかな。もっとも、これも公立の学校ってことになると格段に安いんだろうが。キャンパスでマリファナの売買がされているような大学だったりしてな。フランスの税金については、かつて「フランス税金事情」(http://fban.blog9.fc2.com/blog-entry-50.html)って回である程度まとめたんで、参考にしてくれよな。もしくは、マイケル・ムーアの映画でも見るといいかもしれねえ! ハッハッハ、まあどの国にもそれなりに問題があるわけで、人によってはフランスは学費が無料のパラダイスみたいに言うこともあるようだが、決してそうじゃあねえよってことだ。
フランス番長 |  2010.07.05(月) 18:46 |  URL |  【コメント編集】

■あ さん、押忍!

 フランスの場合、私立校ってのはカトリック系、いわゆるミッション・スクールに限られててね。あんまり一般的じゃないんだが、中には私立に通わせたがる親ってのももちろんいるようだ。そういうとこじゃ確かに、グランゼコール受験ってのはより身近になるんだろうな。結局、こういう枠を打ち破るためには、サッカーでも音楽でも料理でもいい、何らかの「スター」になるか、あるいは人の100倍勉強するしかないんだよな。とは言え、どんだけガリ勉して上り詰めても、育ちの違う成金はコミュニティに入れてもらえなかったりするようだ。いやはや、フランス人も大変だね。
フランス番長 |  2010.07.05(月) 18:49 |  URL |  【コメント編集】

番長、ヤスでヤス。
どうもアタマでっかちで現場を知らない人間が取り仕切るイメージが湧いてしまったでヤス。
実際、そういう弊害は有るんでヤスかねぇ?
その手の話を知ってるせいとは思いヤスが…
それとも現場で恥掻かない様に努力してるんでヤスか?
興味深いでヤス。
それでは番長、これで失礼するでヤス。
ヤス |  2010.07.05(月) 18:51 |  URL |  【コメント編集】

■もっとも…

交換留学生としてですが、とあるパリのグランゼコールで勉強してました。
それはまー正規生はすごかったです…。
海 |  2010.07.05(月) 19:42 |  URL |  【コメント編集】

番長、こんにちは!

グランゼコールについての話、とても分かりやすかったです。ありがとうございます!
日本の偏差値教育が右肩上がり経済社会の労働者や中間管理職を供給するのに貢献したように、グランゼコールは指導者、管理者やエグゼクティブなどを作るためのエリート・コースですね。どちらも知識をそれなりに身につけた、質の高い労働者やエリートを育成する一方で、創造的な仕事をする人材を育成するわけではありませんから、そこからコストカッターで知られるカルロス・ゴーンは生み出しても、スティーブ・ジョブスやリチャード・ブランソンは生まれないでしょう。政治で言ったら、俳優から転身して大きな仕事を成し遂げたレーガンとか学歴の低い田中角栄やメージャー元英首相みたいな人は、フランスではほとんど現れそうにないですね。エリートコース以外のところに、たくさんの偉大な才能はどの国でもあるもので、フランスの場合、そういう人たちが生かされにくい感じがします。そういう点では、やはりアメリカは(もちろんエリートもたくさんいますが)、強みを持っていると思います。日本はその中間かもしれませんが、官僚主導の政治とか各分野における規制などで、国の将来は楽観できないと感じます。
triolet |  2010.07.05(月) 21:14 |  URL |  【コメント編集】

■ヤスさん、押忍!

 うーん、エリートの弊害ってのはいずこも同じ事情だとは思うが、なんだろうねえ、やっぱりフランスってのは階層社会であることがハッキリしてるじゃねえか。両者の溝もまた、日本なんかに比べてハッキリしてる意匠だよな。もっとも、たとえばエコール・ポリテクニークの学生なんてのは軍事教練が義務づけられたりしてるから、日本のキャリアよりも肝は据わってるかもしれねえな。
フランス番長 |  2010.07.05(月) 21:58 |  URL |  【コメント編集】

■Re: もっとも…

 海さん、押忍! そいつはお疲れ様だったねえ。それで、何がどう「すごかった」んだい? まさか夜の営みってわけじゃねえだろうが……また機会があったら教えてくれよな!
フランス番長 |  2010.07.05(月) 21:59 |  URL |  【コメント編集】

■trioletさん、押忍!

 ご指摘の通り、長くなるんではしょっちまったが、テクノクラートをバンバカ育成しようってんでつくられた制度だそうだな、グランゼコールってのは。象牙の塔で学問を極めるってんじゃなく、そのまま職場に突っ込んで即使える人材をつくろうというのは、高等教育機関としてはあんまり他国に例がないよな。日本で相当するのは防衛大学校とか水産大学校とかの「大学校」になるかもしれねえが、それもグランゼコールのエリート感からするとピッタリこねえし。ともかく、フランス人はサルコジがエナルクじゃないってんで騒いでるが、一応はグランゼコール(パリ政治学院)の出身だもんな。卒業できてねえけど。それに比べると、田中角栄なんてのは夜間学校に通ってた、正にたたき上げ。こりゃ確かにフランスじゃあり得ないだろうねえ。もちろん、エリートにはエリートの良さがあるんだろうが。階層として硬直化してるとすれば、そりゃ問題だよな。
フランス番長 |  2010.07.05(月) 22:12 |  URL |  【コメント編集】

番長、初めまして。
いつも楽しくブログを拝読させていただいています。

私の主人は私企業の管理職をしており、残業手当も全くつかないのに・・・それはそれはいつもまじめに日本人並みに働いてくれています。

番長もご指摘のように、多くの日本人の方々が 「フランス人=人生を謳歌」というイメージをもっていらしゃるので、主人の名誉挽回のためにも色々説明をしてみても・・・私では全くもって説得力がありませんでした。

今回、番長に大変わかりやすく、ざっくり説明していただき、最後に一節 「まあよく働く。・・・・・・」と、ビシッっと決めてくださいましたので大変すっきりいたしました。 

ありがとうございました!
主婦 |  2010.07.05(月) 22:20 |  URL |  【コメント編集】

■こんにちは!

フランスのエリート教育はそれはそれですごいですよね。

以前グランゼコールへの合格率が高いというリセ・ルイ=ル=グラン高校の授業風景をテレビのドキュメンタリーで見たことがあるのですが、これからは中国語がビジネスで重要度が増すからということで、中国語で数学の授業が行われていました。

グランゼコールの受験のために「進学校」として名を馳せているわけではなく、もうすでにグランゼコールに入る前から、将来「管理職」に就くことことを意図しているような授業に私は呆然としました。
ロブ |  2010.07.05(月) 22:54 |  URL |  【コメント編集】

番長、押忍!
今日の内容もほんとに判りやすくてよかったです。勉強になりましたっす!いまいちフランスの教育制度についてあいまいな部分があったので、よく理解できました。
私(東京在住ですが)の上司は、グランゼコールHEC出身のエリート。胃が痛い首が痛いのなんのと薬をのみつつ、日夜経営にいそしんでます。(特に数字を追う)
でも、下積み時代がないので、客に頭を下げるとかそういうのは大の苦手。時々「工場いってこーい!」「客にあやまりにいけー!」と叫びたくなります。
もちろん大多数の日本のお客からは、何様のつもりだと、日本人受けも部下の受けもあまりよくないです。収入は、ゴーンさんほどではないですが、日本人が聞くと驚く年収!
かたや、我が家の仏夫は、ボザールとイナルコで学んだ売れないアーティスト。新しいものを買うのを嫌い、こつこつ手作りで必要なものを作る。ヘタしたら、粗大ごみの中から、再生可能なものを探してくる。合気道で体も鍛える。フランス料理も和食も作る。同じ東京在住仏人でも大きな差。 これがフランスの格差なのかと、目の当たりに感じてます。

でも、はたから見てどちらが人生を謳歌してるか(どちらが長生きできるかも)と考えると。。やはり、日本人が思うところのフランス人らしい生き方は、わが仏夫のほうかなあと。

いろいろ価値観は人によって異なりますがねー
bichon |  2010.07.06(火) 11:37 |  URL |  【コメント編集】

番長さん
オッスでございます。
私の友人もグランゼコール出身なんですが、彼はあまりグランゼコールという言葉を使いたがりません。
"Engineering school"といいます。
私からしたら、「立派な経歴を持っているのに、なんでグランゼコールって言わないのかなぁ」ってとても疑問です。
フランスではエンジニアの地位が高いと聞きましたが、自分がエンジニアであるということをアピールするための"Engineering school"なんでしょうか?
さらに彼のエコールでは日本の大学のゼミのように先生が小まめに生徒の面倒は見てくれず、有名な先生は「僕が授業をするのは、君たちの履歴書にそのことを書けるようにだから」とまで言うといってました。
学校のカリキュラムを聞いてもほとんどが企業でのインターンに費やされているような印象を受けました。
学校はどんな風に学生を育てているんでしょうか?
Sonia |  2010.07.06(火) 12:09 |  URL |  【コメント編集】

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
 |  2010.07.06(火) 12:10 |   |  【コメント編集】

■主婦さん、押忍!

 ずいぶんシンプルかつストレートなお名前だねえ。さて、ご主人が私企業の管理職とのこと。そいつは主婦さんもお寂しいかもしれないねえ。良くも悪くも日本人のフランス観ってのは一面的だからなあ。ま、日本に限ったことじゃなく、アングロサクソンなんかもフランス人と言えばヴァカンス狂い、てなイメージのようだがな。旦那さんにサンク・ヌフ・シス・トロワと伝えといてくれよな。
フランス番長 |  2010.07.07(水) 05:18 |  URL |  【コメント編集】

■Re: こんにちは!

 ロブさん、押忍! 中国語で数学の授業たあ凄いねえ。文字の多さや発音の複雑さから言って、中国語ってのは欧米人にとって最も難しい言語の一つだと思うが、それをまあ高校生の時分から、しかも数学でやろうってかい。なんだか日本が牧歌的に見えてきちまうな。日本にも中高一貫校なんてのはあるが、おおむね一流大学へ行くための進学校で、真の意味でのエリート校ってのは本当に乏しいもんなあ。いや、まいったね。
フランス番長 |  2010.07.07(水) 05:18 |  URL |  【コメント編集】

■bichonさん、押忍!

 なるほど、上司さんは優秀な方なんだろうが、やはりドブ板型の営業なんてのは苦手ってことかい。ま、キャリアってのはそういうものなのかもしれねえな。そういう鬱陶しい部分は下のものが負担しますんで、優秀な頭脳を経営の方にお使いください、という。もっとも、もともとフランス人には義理や仁義って考え方が薄いってこともありそうだが。この手合いの人は一緒に家庭を築くってことになっても大変だろうぜ。旦那さんを大事にしてくれよな!
フランス番長 |  2010.07.07(水) 05:23 |  URL |  【コメント編集】

■Soniaさん、押忍!

 そうねえ。パッと番長の頭に思い浮かんだのは、グランゼコールってのがフランス以外ではあんまり知られてないんで、そういう言い方をしてるってことかなあ。ちなみに、ある知り合いの日本人で、東大卒の女性なんだが、学生時代にガソリンスタンドでアルバイトをしてたってんだな。バイト仲間には同年代が多くて、休憩時間なんかはお互いの話で盛り上がる。そこで彼女は包み隠さず自分の経歴を明かしたところ、無名私大や短大生がほとんどだった同僚にドン引きされちまって、以来自分の大学名を偽るようになったってんだが。お知り合いの方の場合、そういうことじゃあなさそうだよな。グランゼコールの場合、企業でのインターンにいそしむのは珍しくないみたいだぜ。
フランス番長 |  2010.07.07(水) 05:30 |  URL |  【コメント編集】

■鼻持ちならない

番長!たびたび押忍です。
ほんとに番長のおっしゃるとおり、家庭向きでないらしく、(訴えるのが得意で)ものすごい裁判で離婚してますよ。彼を見る限り義理人情のかけらもない、下々を見下すエリート(もちろんまっとうな方もいるかと思いますが)を排出する学校、それがグランゼコールというイメージですね。極端かもしれませんが。。。格差社会フランスの格下出身夫、大切にします。ハイ。
bichon |  2010.07.07(水) 11:08 |  URL |  【コメント編集】

思うんですが、フランス人って合理的な面もあると思いますよ。

日本のように建て前だけ横一線採用だと、みんな滅私奉公で出世に必死になるじゃないですか…
だから日本では、労働法とか労働環境に対する意識が全般的に希薄なんだと思います。

エリートはいるけど、エリートでなくても最低限の生活や休暇等のゆとりは保証するとした方が、合理的で良い面が多い気がしますけどね…
日本は、やっぱ競争社会という面が協調されすぎだと思います。
あ |  2010.07.07(水) 16:33 |  URL |  【コメント編集】

■Re: 鼻持ちならない

 bichonさん、押忍! ま、一口に高学歴と言っても色々な人がいるんだろうが、優秀だけど周囲の人を不幸にしちゃうタイプっているよな。優秀だからこそ、ってことなのかな。いずれにしても、人生は人それぞれ。学歴がどうだろうが給料をいくらもらっていようが、人のことを羨んだり嫉んだりしてもしょうがねえってもんだぜ。メシがうまく食えりゃそれでいいじゃねえかよ、なあ。
フランス番長 |  2010.07.08(木) 17:08 |  URL |  【コメント編集】

■あ さん、押忍!

 確かに、身を粉にして働くのは一部エリートに任せて、彼らにはたっぷりと給料をやり、後の人は割り切って人生を楽しむってのは、すこぶる合理的な考え方なのかもしれねえな。おっしゃるとおり、そうすりゃ労働基準法も守られるのかもしれねえ。ただ、日本人がひとたびそういう環境に置かれたときに、割り切ってそれを受け入れられるのか。問題はそこだよなあ。フランス人って、良くも悪くも世間体を気にしないというか、「人は人、自分は自分」ってのが徹底してるからな。なんだか日本人には無理そうな気がしてならねえぜ。
フランス番長 |  2010.07.08(木) 17:11 |  URL |  【コメント編集】

はじめまして、
豊栄のぼるさんへのレスに
>フランスの場合、大学生になった瞬間に独立したって扱いになるから、基本的には学費は自分で稼ぐことになる。

と、ありますが、知人はこのブログにたびたびあがる典型的な仏人で上級管理職をやっています。大学生の息子がいますが、両親と一緒に暮らしていて、学費を自分で稼ぐどころか、長い夏休みにお小遣い稼ぎのアルバイトすらしません。理由はファストフードショップみたいなところでアルバイトすると経歴に傷がつくのだそうです。この一家はパリ郊外の閑静な地域に住んでいますが、周りもみんな同じだそうです。彼らがフランス社会では例外なのかもしれませんが・・・
知人が勤めている会社の役員食堂では、さっきまで議会で喧々諤々やりあっていた与野党の議員や高級官僚が和気藹々ワインを空けている姿が見られるそうです。みんなエナルクやグランゼコール出身でプライベートは仲良し。会社幹部も同じ。こんな話を聞くと、日本より馴れ合い、利益誘導、天下り社会のような気がします。
東雲 |  2010.07.08(木) 20:38 |  URL |  【コメント編集】

■東雲さん、押忍!

 ビヤーンブニュだぜ。ご指摘の通り、もちろん十人十色ではあろうが、フランス人が大学生になったら独立する、自分でバイトをするというのは、親の教育方針というよりも、単純に言って親にそれだけの余裕が無いって事情もあるようなのよ。たとえば共働きにしても、女性が仕事を続けることには自己実現って意味合いもそりゃああるだろうが、そうしないと家計が成り立たないというのもまた事実。フランスの給料ってのは一人で一家を支えられるほど多くはねえし、税金も高いしな。ところが、上級管理職ともなれば稼ぎもいいから、子どもに働かせる必要もないってわけだ。しかし、ファストフードショップでバイトをすると経歴に傷がつくってのは妙な理屈だねえ。別にCV(履歴書)にバイト歴まで書くわけじゃあるまいに。そもそもフランスのCVなんて様式ねえから、何を書こうと自由じゃねえかよ、なあ。ま、いずれにしてもご指摘の通り、フランスってのは日本以上の馴れ合い、それもエリートだけが馴れ合ってる社会ってことのようだな。
フランス番長 |  2010.07.08(木) 21:20 |  URL |  【コメント編集】

いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
履歴書の添え状 |  2010.09.03(金) 10:58 |  URL |  【コメント編集】

■履歴書の添え状さん、押忍!

 いやいや、こちらこそありがとうございますってなもんよ。こんな場末に訪ねてきてくれてさ。こうやってコメントすることで生存報告に代えさせてもらうぜ!
フランス番長 |  2010.09.04(土) 22:30 |  URL |  【コメント編集】

グランゼコールはその道のスペシャリストに特化しているようですね。
グランゼコールには日本の教養課程のようなものはやはり無いのでしょうか?
感覚的には日本の高等専門学校と防衛大学校みたいなところと
感覚が近いのでしょうね。

ただ・・・医師や法律家がその専門だけに徹するのは大変恐いので
広義の教養が必要な大学であって欲しいと思います。
日本では医学部が6年間、フランスでは卒後教育を含めて8年間というのは、
よく考えられていると思います。

やはり仁の部分はグランゼコールでは育たないと思います。
むしろフランス人のほうがその重要性を理解しているのでしょうか。
通りすがりですみません |  2010.12.08(水) 06:19 |  URL |  【コメント編集】

■Re: はじめまして

 amourさん、押忍! ビヤーンブニュだぜ。すっかり返信が遅くなっちまって申し訳ないねえ。最近どうもネットから縁遠くなっちまって。これに懲りずに今後ともキャトル・シス・キャトル・ヌフだぜ。それにしても番長のこの記事が amourさんの人生に影響を与えちまったとは、責任重大だねえ。番長には荷が勝ちすぎるかもしれねえな。しかしおっしゃるとおり! 有名グランゼコール卒なら将来の心配はないだろう。
 あらかじめ言っておくが、フランスでの生活は大変だろう。パートナーとしてディナーやらなんやらといった会には彼と一緒にフランス語の洪水の中へ飛び込んでいかなきゃならねえだろうし、まず間違いなくフランスでは働くことを(彼か、さもなければ社会に)求められるだろうが、フランス語の得意でない日本人にとっては容易ならざることだ。
 だが、これから新生活を始めようとする御仁が、そんなことに悩んでいてはいけない。番長が独自に集計した統計によると、世の中の苦労とされているものの6割が「取り越し苦労」だ。先のことは考えず、とにかくフランスに飛び込んでいきなよ。やらずに後悔するよりやって後悔したほうがいい、くらいの気持ちでさ。向こうで辛いことがあったら、番長の記事でも読んでウサを晴らしてくれ。そして、アンタが次代のフランス番長となって、フランスのおもしろいことを伝えてくれよな。期待してるぜ。
フランス番長 |  2010.12.08(水) 09:22 |  URL |  【コメント編集】

■通りがかりさん、押忍!

 番長はグランゼコール出ってわけじゃないので詳細は知らねえが、高校を出てからグランゼコールに入る前には2年間ほど「予備学校」みたいなところでみっちり勉強をするんだそうだ。日本でいうところの教養課程みたいなのは、そこで全部やっちまうってことなんだろう。確かに学校の位置づけとしては「大学校」に近いんだが、はるかにステージが高いってところかな。もっとも、グランゼコールにも色々あって、日本ではENAみたいなとこばっかりがグランゼコールだと思われがちで、それもまた違うんだけどな。ところでご指摘の「仁」の部分。グランゼコール生に限らず、フランス人には縁のない感覚かもしれねえな! むしろ、幼いころから自他ともに認めるエリートとして勉学を重ねてきた連中のほうが、それに近いものは持ち合わせてるかもよ。やや「帝王学」寄りではあったとしても、な。
フランス番長 |  2010.12.08(水) 09:28 |  URL |  【コメント編集】

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 |  2011.10.29(土) 11:10 |   |  【コメント編集】

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