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2010.06.14 (Mon)

セデデとセデイの間には、深くてくらーい川が…… 新卒に厳しいフランス社会

 まいったね。
 若者の失業率の高さには、まいったね。


 フランスの失業率はおおむね10%くらいだ。もちろん年によって変わるんだが、過去20年で見ても8~12%の間を動いている。日本がだいたい5%だから、失業率は倍ってことになるな。
 で、若者に限って言うと、これが25%にまで跳ね上がる。この場合の若者ってのは25歳以下を指すんだが、やたらに多いよなあ。
 とは言え、実はこれ、フランスに限った話じゃない。日本でも25歳以下の失業率は10%を超えている。アメリカやイギリスといった他の先進国でも、若者の失業率ってのは平均のだいたい2倍と相場が決まってるんだな。
 理由については「景気が定期的に低迷していて新卒採用が減っているから」とか、「社会が豊かになって労働が生きるために絶対必要な条件ではなくなったから」とか言われている。なんか、わかったようなわからないような説明だな。


 だが、フランスに限った事情ってのも、もちろんある。
 まず一つに、日本のように就職活動がシステマチックには進んでいかない。日本の場合、どこで調べたのかは知らねえが、大学3年になっていよいよ適齢期ってことになると、どこからともなく就職活動用の資料が送られてきたり、リクルーターが現れたりする。
 そうでなくても大学の中に就職支援室的なものが必ずあって、適齢期の学生に向けて絶えず情報を発信している。就職説明会なんてのもしょっちゅうよ。よっぽどボーっとしてない限り、情報を逃すってことはない仕組みになってるんだな。

 フランスの大学には、こういう世話焼きシステムってのがない。そもそも、きちんと決まった就職活動期なんてものが存在しない。学生の間は学生としての本分、すなわち勉強をしっかりやることになってる。シューカツってのは卒業してから始まるんだな。日本みたいに、在学中に就職活動を終わらせて、卒業から就職までの間にムダな時間をつくらない効率の良い就職システムってのはない。それがいいのかどうかはともかくな。
 学生は自分で企業の採用情報を探してきて、履歴書を送る。最近ではインターネットのおかげで情報収集もしやすくなったようだが、ちょいと前までは新聞広告を読んだり、町の職業安定所に行ったりしてたんだぜ。日本じゃコレ、失業者のやり方ってイメージだがな。新卒者のアドバンテージってもんが全然ないのよ。

 そう、フランスでは、新卒が全然優遇されない。
 日本だと、新卒じゃないって方がむしろ具合が悪いよな。就職が決まらなかった学生は、あえて単位を取らないで卒業を先延ばしにして、丸1年分の学費を納め、それでも大学に在籍した状態ってのを続ける。いわゆる就職浪人ってヤツだ。これは、企業によっては既卒の学生をとらないからだ。条件の中に「○○年卒業見込みの方」なんて書かれてる。
 ところがフランスでは、「少なくとも2年の実務経験がある方」なんていう募集の仕方をする。フランス雇用研究センターってとこの調査では、なんと52%もの企業が、採用条件として「3年以上の職務経験」を挙げたそうだ。過半数の企業で新卒を門前払いしてるんだな。
 つまり、新卒の段階では就職できないのがフツーなのよ。
 多くの学生は卒業した段階で無職となり、収入がねえんで生活保護を受ける。うん、このへんの仕組みも若いフランス人の労働意欲を萎えさせてるような気がするぜ。税金のムダだしな。


 手をこまねいているだけじゃ、いつまでも職務経験は増えねえ。そこで、日本で言うところのインターン、フランスではスタージュと呼ぶが、つまりは実習生として働く。例外もあるが、基本的には無給だ。企業からしてみりゃ、社員の貴重な時間を割いて実習生に仕事のイロハを教えてやってるんだから、むしろカネをもらいたいくらいだってことらしい。もちろん交通費なんかも出ない。
 どうだい、まるで新卒は厄介者だといわんばかりじゃねえか。厳しいねえ。飲食店なんかの中には、スタージュを入れ替わり雇うことでアルバイト代わりにしてるところもあるって聞くぜ。

 もっとも、スタージュってのはあくまで実習生。2年も3年も続けてできるわけじゃあもちろんねえ。そのまま雇ってもらえることもなくはないが、そう多くはない。そこで新卒生たちは必死こいて職を探すわけだ。
 ところが、首尾良く就職できたとしても、新人ちゃんたちへの試練はまだまだ続く。いきなり正社員として採用をしてもらえるってことはまずない。「セデデ」になることがほとんどだ。
 出たねえ、意味不明の言葉。♪痛くなったらすぐ×××、のCMソングでおなじみの頭痛生理痛薬じゃねえぜ。それはセデスだ。
 これ、「CDD」と書く。「コントラ・ア・デュレ・デテルミネ」の略称で、直訳すると「期限付き契約」ってことになるぜ。とりあえず1~3年間働いてみて、もしデキがいいようだったら正式に採用するという方式だ。
 これに対して、定年までちゃんと雇うことが決まっている正社員のことは「セデイ」と呼ぶ。「CDI」で無期限契約ってことだ。


 なんだってここまで採用のハードルが高いのか。
 フランスでは、労働者の権利が法で手厚く保護されている。いったんセデイを結んだ労働者ってのは、犯罪でも犯さない限り、まずクビにすることができない。だから企業の側はハズレくじを引かされちゃたまらんってんでビクビクなのよ。
 リストラもできねえもんだから、業績の悪化した会社が社員の数を減らしたいと思っても、新規の雇用を減らすことでしか調整ができないんだな。フランスも日本同様、右肩上がりの時代はとうの昔に終わってる。若者が割を食わされてるってわけだ。


 いや、まいったね。
 将来ある「金の卵」は、もうちっとやさしく接してやってほしいぜ。




bancho200.gif



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テーマ : フランス ジャンル : 海外情報

11:00  |  俺節フランス  |  トラックバック(0)  |  コメント(23)  |  編集  |  上へ↑

*Comment

本当にフランスの学生さんは大変だ。日本の学生さんと比べるとよく勉強しているのにね。「3年以上の職務経験」といったって、雇ってくれなけりゃ経験できるわけもない。それにしても、セデデとセデイなんて、15年ぶりに懐かしい単語を聞きました。事情はまったく変わっていませんね。
豊栄のぼる |  2010.06.14(月) 15:56 |  URL |  【コメント編集】

フランスの大学入試って哲学など科目の論文形式が主流と以前ネットで見たことが、本当ですか?
何となくフランスの大学って、教育内容が日本の旧制大学みたいな純粋な研究者養成の場になってるのではという気がしますね…

新卒採用が少ないのは色んな要因があると思いますが、大学と社会との接点が少なかったり、大学教育が社会の求める内容とかけ離れてる点があるんじゃないかなあ…と思います。
あ |  2010.06.14(月) 18:10 |  URL |  【コメント編集】

文が途中で抜けました

最初の文)
見たことが、→見たことがありますが、
です。すいません。
あ |  2010.06.14(月) 18:15 |  URL |  【コメント編集】

発表されてる失業率ってフランスも日本も本当の実態を
表しているんですかね?もっと多い気がする。
あと、気になったのは金融会社のディーラーとかって高収入じゃないですか。
アメリカの企業だとパフォーマンスが悪ければ首にされますけど
フランスの金融証券マンたちってCDIだと、成績悪くても首にされないんですか?
Y子 |  2010.06.14(月) 21:43 |  URL |  【コメント編集】

ご無沙汰しました。いつも楽しいお話を有難うございます。今回の件も面白いですね。若い人の間では、開き直ってえんえんと生活保護を受け続ける人も居そうですね。仕事が見つからないのは私のせいじゃない(仏人お得意の セ パ マ フォート)って言う人、居るのではないですか?そして、そういう人を責めるべきでしょうか。日本の何が何でも新卒新卒っていうのも相当、耳ざわりですがね。
くらら |  2010.06.15(火) 09:11 |  URL |  【コメント編集】

■豊栄のぼるさん、押忍!

 確かにフランスの学生はよく勉強してるねえ。ま、日本が世界の例外なのかもしれねえが。ほとんど、就職前の長い夏休みって感じだもんなあ。楽しかったけどな。フランスでの若者を巡る雇用事情ってのは、どうも全然改善がみられない様子。気の毒だな。
フランス番長 |  2010.06.15(火) 09:13 |  URL |  【コメント編集】

■あ さん、押忍!

 大学入試ってのはバカロレアのことかな。こいつは日本で言うセンター試験だが、おっしゃるとおり、論文よ。マーク式の出題なんてのはまったくなし。「現実は欲望を満たしうるか」みたいな難解なお題がぽーんと出て、3時間ほどの試験時間をずっとその問題への回答にあてる。こりゃ大変だぜ。確かに、実学意識ってのは低いのかもしれねえな。
フランス番長 |  2010.06.15(火) 09:23 |  URL |  【コメント編集】

■Y子さん、押忍!

 失業率の数字の出し方にはマジックが多いというのはよく指摘されるところだよなあ。たとえば分母の部分、これは「就職する意思がある人間」の数のはずだが、さてどうやって定義しているのか、とかな。まあ一つの目安ということだろう。ところで金融会社のディーラー、フランスじゃ成績が悪くてもクビになるということはまずないだろうな。着服横領でもしない限り。するヤツもいるようだが!
フランス番長 |  2010.06.15(火) 09:27 |  URL |  【コメント編集】

■くららさん、押忍!

 ご指摘の通り、生活保護受給者が多すぎるってのはフランスでもよーく取り上げられる問題だな。ただまあ、日本のようにシステマチックに若者を社会の荒波に放り込むってのは、フランスでは受け入れられねえだろうなあ。なんていうか、肌合いが違うっていうのかねえ。そもそもフランス人って、大企業に入りたいみたいな意識も日本に比べると低いしなあ。日本もフランスも一長一短だねえ。
フランス番長 |  2010.06.15(火) 09:32 |  URL |  【コメント編集】

番長!おっす!日本在住です。
うちにも大学3年の息子がおります。おととし頑張って現役で国立大はいったのにもうこの秋にシューカツ突入です。勉強そっちのけで、早すぎる就職活動にも批判の声が多い中、フランスと比べたら日本の大学はキャリアセンターから就職説明会、エントリーシートの書き方まで、いたれりつくせり。よく面倒見てくれます。就活コンサルタントまでいて成功本もありひとつのビジネスと化してます。内定を取り付けるための正しい大学生活の送り方みたいな。

この春の日本の新卒者の就職率は、91%でバブル崩壊後ワースト2とかって言われてます。これで不況、就職難!ということを外国人(特に新卒就職制度などないフランス人)に説明するのは至難の業です。

bichon |  2010.06.15(火) 09:49 |  URL |  【コメント編集】

■bichonさん、押忍!

 うーむ、まるで就職のための大学生活、みたいなのも問題ではあるよなあ。やっぱ大学ってのは最高学府だからよ。勉学に打ち込むのが本来の姿だよな。そういう日本式シューカツシステムも悪くはないと思うが、その効率をうまい具合に活かして、たとえば大学4年の夏休みの3ヶ月間だけに限ってガッとやっちまう、なんてなことはできねえのかね。もっとも、就職協定なんてのも昔はあったが、結局青田買いなんかが横行して有名無実化してたもんな。しかし、確かに9割が就職しといて就職難ってのは、世界の常識に照らすとハア?って話にはなるよなあ。やっぱニッポンは良い国らしいぜ。
フランス番長 |  2010.06.15(火) 10:17 |  URL |  【コメント編集】

ただ、その後が、サービス残業地獄・有給取れない・仕事に生きろ
頼むからその精神はやめて・・・・
もっと効率良く人動かせ~
へろ |  2010.06.15(火) 17:05 |  URL |  【コメント編集】

番長、こんにちは!
就職難の苦しみは非常に多くの人が経験し、あるいは身近なものであって、他人事の感じがしません。フランスの若者の失業率の高さは、他国もそうですが、現代の歪んだ一面という気がします。高い教育を受けた才能のある人たちが、就職できないでいたりするわけですからね。サルコジ大統領も当初から教育改革を政策として掲げているようですが、内容を見ると新卒者失業問題の状況はあまり変わらないでしょう。日本でもヨーロッパでも大学は、技術者や医者、弁護士などの専門職志望者や公務員志望者などは別として、それ以外の最も多い一般会社員志望の人にとっては、きちんと役に立っていないんですよね。若い人たちが早くから学び方を覚え、いろいろな将来のビジョンを描くことができ、望む方向の力をつけていけるように、カリキュラムの自由度を徹底的に高め、教養と共にプラクティカルな知識や技術を学際的に身につけられる、そういう環境づくりをしてもらいたいものです。また失業者のための教育、技術習得の体制や、助け合い、教え合いの文化を育んでいくことも必要だと思います。番長から見てどうですか?ただヨーロッパの場合、EUで教育内容の整合をしていますから、自由化の方向へは行きにくいかもしれません。長くなってしまいました、すみません。
triolet |  2010.06.15(火) 23:59 |  URL |  【コメント編集】

■フランスのほうがいいなあ

日本はリストラの嵐ですから、問題になってます。フランスでは、学生の間に資格を沢山取っておいたら、どうなんだろう?
涼一 |  2010.06.16(水) 07:53 |  URL |  【コメント編集】

■管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 |  2010.06.17(木) 08:06 |   |  【コメント編集】

そうそう。そのバカロレアです。
センター試験はバカロレアをモデルにしたらしですけど、試験の内容がまったく異なってますね…

あ |  2010.06.17(木) 14:52 |  URL |  【コメント編集】

■へろさん、押忍!

 日本ってのは、鉄道のダイヤやら街のコンビニやら生活はすこぶる効率的にできてんのに、労働となるとどうしてこう非効率的なのかねえ。番長にとっちゃ永遠の謎だぜ。
フランス番長 |  2010.06.17(木) 18:10 |  URL |  【コメント編集】

■trioletさん、押忍!

 そうなんだ、まさにおっしゃるとおりでね。フランスでは、エリートが集まるグランゼコールはともかくとして、フツーにいい大学を出て5年くらいかけて学位を取得した、そういう高学歴な連中が軒並み仕事が見つからねえってんで苦しんでるんだな。もっとも番長、大学ってもんがあまり実学傾向に偏りすぎるのにも実は違和感があってね。文学部なんていらない的なさ、そういう余裕のねえのは嫌なのよ。ただ、フランスの若者の4人に1人が就職できねえって状況はやっぱり異常としか言いようがねえ。数字として明らかに不自然だからな。フランスは平等の国で、生まれた年代によって差があるなんてのは本来、いちばん認めちゃいけないことのはずなんだ。ここはやっぱり、既にセデイにおさまってる30代以上がちょっとずつ不利益不平等を我慢して、若者のために枠を空けるしかやりようねえと思うぜ。大学で何を学ぶかというよりは、新卒を上手にすくいとるシステムの整備が先なんじゃねえかなあ。
フランス番長 |  2010.06.17(木) 18:10 |  URL |  【コメント編集】

■Re: フランスのほうがいいなあ

 涼一さん、押忍! そのとおり。日本ではオッサンがリストラされ、おネエさん達が派遣にまわされることで若者の雇用が維持されてる。これも問題だよな。フランスと日本のいいとこどりってわけにはいかないもんかねえ。
フランス番長 |  2010.06.17(木) 18:11 |  URL |  【コメント編集】

■Re:

 鍵コメントさん、押忍! 実は番長、そのご本は読んだことあるのよ。なかなか面白いよなあ。ちょうど手元にもあることだし、もう一回読み返してみるとするぜ。いずれネタにするかもしれねえな。コメントどうもありがとうよ!
フランス番長 |  2010.06.17(木) 18:14 |  URL |  【コメント編集】

■あ さん、押忍!

 へえ、センターのモデルがバカロレアってかい。そりゃ、もなかのモデルがマカロンっていうのと同じくらい違うと思うぜえ。
フランス番長 |  2010.06.17(木) 18:16 |  URL |  【コメント編集】

興味深く拝見しました。
フランスで学生をする身としては、就職活動にかんしては間逆の印象をもっていましたが・・・つまり、フランスでは大学に在学時から実習などで将来の就職希望分野での社会人経験をつむのに反して、日本では学生は学生、社会人になるのは卒業後、だと。もちろん、日本での就職活動は在学中から活発ですが、就職活動は実習のような社会人経験とは全く別物ですから。
ちなみに、文中にスタージュは例外を除いて基本的に無給とありますが、2ヶ月以上のスタージュは、分野、学年を問わず、法により報酬が義務つけられています。
フランスで学生 |  2010.06.19(土) 06:11 |  URL |  【コメント編集】

■フランスで学生さん、押忍! 

 アンシャンテだぜ。なるほど、そういう見方もあるかねえ。就職に関して言えば、番長は明らかに日本の学生のほうが保護されてると思うぜ。ところで、2ヶ月以上のスタージュは有給とのことだが、番長の身近ではその2ヶ月以上スタージュをし続けてるってのを見たことがなかったもんでね。ちと偏った話だったかもしれねえが、受け入れる側にしても学生の側にしても、そんなに長くスタージュをすることにはあまり意味がねえような気もするけどな。蛇の生殺しっていうかさ。だったらCDDなり何なりで入れてやりゃいいんじゃねえかい?
フランス番長 |  2010.06.20(日) 19:56 |  URL |  【コメント編集】

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